しげよし、補助金申請24年秋までか IT支援登録事業、過年度取り消しの謎
仕出し弁当のフランチャイズ(FC)「仕出し割烹しげよし」を展開する㈱寿美家和久(三重県津市、小清水丈久社長)が、IT導入補助金を巡り、IT導入支援事業者としての登録を取り消されていた問題で、同社が少なくとも2024年秋までFC加盟店の補助金申請に関与していたとする新たな証言と資料を、ウェルネスデイリーニュース編集部が確認した。
(一社)サービスデザイン推進協議会から2025年6月20日、寿美家和久の支援を受けた補助事業者に送られたメールでは、同社について、「交付規程第8条5項に基づき、2023年度(後期)・2024年度における登録を取消し。」と説明している(下図参照)。
「過年度」とは、現在の年度より前の年度を指す。ただし、2025年に過去の年度の登録をさかのぼって取り消したのか、それ以前にすでに取消しの効力が生じていたのかは明らかになっていない。

しかし、編集部が取材した関西のFC加盟店では、2024年10月にも寿美家和久側の担当者を通じてIT導入補助金の申請手続きが行われ、同年11月22日に不採択通知を受けていた。
「過年度における登録取消し」とは、いつ行われ、どの時点から効力を生じたのか。編集部は現在、同協議会に追加取材を行っている。
24年10月にも申請
編集部が19日、滋賀県内の加盟店オーナー・M氏を取材したところ、同店は加盟時、寿美家和久側からIT導入補助金について説明を受けていた。
M氏によると、システム導入費348万円について、補助金が採択されれば3分の2が補助されるとの説明を受け、それを前提として加盟を判断したという。
最初の申請は2022年。同年中に3回申請したものの採択されず、寿美家和久側から「採択されるまで申請する」と説明されたという。その後、23年と24年に1回ずつ申請を行った。M氏が保存している記録では、最後の申請日は同年10月22日。不採択通知は11月22日に届いた。(※記事公開後、取材先からIT導入補助金の申請時期について訂正の連絡があったため、該当箇所を修正しました。)
申請時にはIT導入補助金事務局から元オーナー本人のメールアドレスに連絡が届き、寿美家和久側の担当者から連絡を受けながらログインなどの手続きを行ったという。
M氏によれば、2024年夏から秋にかけてIT導入補助金について寿美家和久のF氏とやり取りしていた。
この証言が意味するのは、少なくとも2024年10月まで、寿美家和久側がFC加盟店のIT導入補助金申請に関与していたということである。
関東でも補助金巡りやり取り
別のFC加盟店(オーナー・T氏)でも、2024年に入ってから寿美家和久側とIT導入補助金を巡るやり取りが続いていた。
編集部が入手したT氏と寿美家和久関係者とのLINEでは、2024年1月4日、寿美家和久側からIT導入補助金採択後の資金の流れについて具体的な説明が行われていた。
そこでは、300万円の預り金を返還した後、IT導入補助金の登録金額568万3,700円をいったん寿美家和久側に振り込み、同社から228万5,000円を返金。さらにIT導入補助金事務局から350万円が振り込まれるとの計算が記載されていた。
同年5月31日のLINEでも、加盟店側が「辞めちゃう前に300万の事だけはよろしくお願いしますね!」と求め、寿美家和久側が「承知致しました」と回答している。

こうしてみると、M氏とT氏という別々の加盟店で、2024年に入ってからもIT導入補助金を巡る具体的なやり取りが続いていたことになる。
「過年度取消し」の意味は
サービスデザイン推進協議会は2025年6月2日、寿美家和久についてIT導入補助金のホームページで公表した。編集部が、公表時点ですでに制度ルールに適合しない行為が判明していたとの理解でよいか確認したところ、「ご指摘の通り」と回答。「本補助事業に関する申請手続きや実績報告等において、制度ルールに適合しない行為が確認されていました」と説明した。
さらに同協議会は、「制度ルールに適合しない行為を確認したため、IT導入支援事業者の登録取消しを行いました」と回答した。

登録取消し後はIT導入支援事業者としての業務を行うことはできない。IT導入補助金の各種手続きには登録されたIT導入支援事業者のサポートが必要で、補助事業者が単独で行うことはできないとの説明だった。
ただ、同協議会は寿美家和久の登録を実際に取り消した時期について、個別事業者の情報であり、事業運営に関する事務上の情報でもあるとして回答していない。
さらに、同協議会が2025年6月20日に補助事業者(加盟店)へ送ったメールでは、寿美家和久について「2023年度(後期)・2024年度における登録を取消し」としていた。
ここで問題となるのが、「過年度における登録取消し」の意味である。
2025年に行った措置によって2023年度後期と2024年度の登録をさかのぼって取り消したのか。それとも、両年度の登録について別の時期にすでに取消しの効力が生じていたのか。
この点が明らかにならなければ、2023年から2024年にかけて寿美家和久が行っていた申請支援と登録取消しとの関係を正確に評価することはできない。
300万円返還の仕組みも確認へ
もう1つの焦点が、加盟店との間で取り決められていた金銭の流れである。
編集部が確認した2023年9月5日付の覚書では、加盟店が寿美家和久に300万円を「加盟預り金」として支払い、「IT補助金採択され次第」、加盟店側の指定口座へ返還するとしていた。
さらに補助金採択後、「システム導入費(ECサイト制作 しげよしサイトソフトウェア)2台分」として568万3,700円を寿美家和久の指定口座に入金するとしていた。
サービスデザイン推進協議会が2025年6月20日にある補助事業者へ送った通知では、「不正/虚偽とみなされる行為」の例として、補助事業者の自己負担額を減額・無償とする販売方法や、「形式・時期の如何を問わず、補助事業者に実質的に還元を行うもの」、「キャッシュバック」などを挙げている。
ただ、300万円の「加盟預り金」の返還がこれらに該当するかは現時点では確認できていない。
編集部は同協議会に、補助金採択を条件として事前に支払った金銭を返還する契約が制度上認められていたのか、「実質的な還元」や「キャッシュバック」に該当する可能性があるのかを質問している。
併せて、こうした取扱いが2023年度にも適用されていたのか、その根拠となる交付規程や各種要領について回答を求めた。
交付決定前の300万円は
編集部が確認した資料では、FC加盟契約と覚書が2023年9月5日に締結され、翌6日付で寿美家和久から加盟店に合計300万円の見積書が発行されていた。
見積書には、飲食専用「HANS」システム基本費279万円、システム基本データ(サーバー)20万円、初期導入設定費、システム専用パソコン、「HANS」システムマニュアル一式などが記載されている。

覚書では同じ300万円を「加盟預り金」としている。
編集部は、IT導入補助金の交付決定前に補助対象となり得るITツールについて契約したり、金銭を支払ったりした場合の制度上の取扱いについても同協議会に確認を求めた。
また、「加盟預り金」など別の名目であっても、実態としてITツールの導入・購入に関係する金銭だった場合、補助事業への着手や補助対象経費との関係で審査対象になるのかを尋ねている。
協議会の回答待ち
寿美家和久の登録取消しを巡っては、これまでの取材で、遅くとも2025年6月2日までに制度ルールに適合しない行為が確認され、その後、同社が再びIT導入支援事業者として登録された事実がないことまで確認できている。
新たに確認した資料と証言からは、2024年に入ってからも複数のFC加盟店と寿美家和久側との間でIT導入補助金を巡るやり取りが続き、瀬田駅前店では同年10月にも申請手続きが行われていた。
ただし、これだけをもって当時の寿美家和久の登録が有効だったと断定することはできない。
編集部は現在、サービスデザイン推進協議会に対し、「2023年度(後期)・2024年度における登録を取消し」とする措置の効力、2023年9月時点の登録状態、300万円の返還を定めた契約と「実質的な還元」との関係、交付決定前の契約・支払いの取扱いなど7項目について追加取材している(下記参照)。
回答が得られ次第、改めて報じる。
①「2023年度(後期)・2024年度」の過年度登録取消しが、取消し時点から効力を持つのか、過去にさかのぼるのか
②寿美家和久が加盟店と契約・覚書を締結した2023年9月5日時点で、IT導入支援事業者として有効な登録状態にあったのか
③補助金採択後に、それ以前に受け取った「加盟預り金」300万円を加盟店へ返還する契約が制度上認められていたのか
④この300万円の返還が、禁止される「実質的な還元」や「キャッシュバック」に該当する可能性があるのか
⑤「実質的な還元」や「キャッシュバック」を禁止する取扱いが2023年度にも適用されていたのか、その根拠規定は何か
⑥交付決定前にITツールに関係する契約や支払いを行った場合の取扱いと、「加盟預り金」など別名目の金銭も実態に応じて審査対象となるのか
⑦制度ルールへの適合性を判断する際、契約書だけでなく、入出金記録、ITツールの導入・利用時期、申請内容、実績報告などを総合的に確認するのか
【田代 宏】
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