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しげよし加盟契約の実像(前) 契約書・覚書の違いとIT補助金条件を検証

 ウェルネスデイリーニュース編集部はこれまで、「しげよし」を巡り、加盟店オーナー、元スーパーバイザー(SV)、元従業員、取引先事業者などへの取材を重ねてきた。その過程で浮かび上がってきたのは、加盟店ごとに異なる契約書や覚書の存在。
 IT導入補助金を前提とした加盟契約、売上金の支払遅延など、複数の関係者の証言や資料に共通して見られる問題だ。連載では、関東地方で「しげよし」の加盟店を営んでいたT氏への長時間の取材と、契約書、覚書、LINE、通知書など編集部が確認した資料をもとに、加盟勧誘から売上金未払い、契約解除に至る経過を検証する。契約条件や補助金制度、加盟店運営の実像に迫る。

加盟店ごとに異なる契約条件

 「契約書は、毎回に近いほど違っていました」

 編集部の取材に対し、かつて仕出し割烹「しげよし」でスーパーバイザー(SV)を務めたY氏は、そう証言した。これまで取材を重ねてきた加盟店からも、契約内容が一律ではなかったようだとの証言が寄せられている。

 関東地方の加盟店オーナー・T氏が保管していた契約書一式と、6月19日付の記事「しげよし加盟店オーナーが証言 売上金未払いと補助金トラブル、加盟店が抱える苦悩とは」で紹介したM氏の契約書を比較すると、提携店契約書本文は大部分が共通していた。しかし、IT導入補助金に関する「覚書」や「付帯契約書」にはその内容に違いが確認できた。

 第17条において、「顧客創生対策費」、「WEB定額費」、「送客手数料」などについてそれぞれ削除するとされているものの、IT導入補助金に関する規定に違いが認められた。
 T氏の覚書には、IT導入補助金が「3年以上採択されなかった場合」、預かり金を返還する旨が明記されている。これに対し、M氏の付帯契約書にも不採択時の返金規定はあるものの、返金期限は定められていなかった。

 第18条(HANDSシステム導入・設定費用)では、「乙は甲に対し、本契約の締結時にHANDSシステム導入・設定費用(HANDSシステム使用許諾料を含む)として金348万円(消費税10%込)を現金で支払う。この費用は、いかなる場合も返還しないものとする」と規定されている。
 これに対し、覚書では、同条の内容を変更し、システム費用を412万3,104円とした上で、T氏は加盟店預り金として300万円を支払うこと、寿美家和久は加盟金や研修費、顧客創生対策費、WEB定額費、送客手数料を契約期間中免除することなどが定められている。さらに、IT導入補助金が採択された場合には、預り金を返還した上で、改めてシステム導入費568万3,700円を支払う仕組みとなっていた。

 編集部の取材に対してT氏は、この覚書は加盟店側、つまりT氏が求めたものではなく、寿美家和久側から提示されたものだったと説明している。
 T氏によると、IT導入補助金は最終的に採択されなかった。覚書には「3年以上採択されなかった場合は預り金を返還する」と規定されており、T氏は現在、その返還期限の到来を待っているとしている。

 このような「覚書」は他にも存在する。コロナ禍以前に締結した契約書を保管する別の加盟店オーナーは、契約を大きく書き換える「覚書」を所持していた。
 本人の特定に至る恐れがあるため、詳述は控えるが、少なくとも複数の条文について寿美家和久側に譲歩させている。
 これまで編集部が確認したところ、少なくとも複数の契約パターンが存在していたことは、契約書類とY氏をはじめとする関係者の証言から明らかになった。
そしておそらく、契約書に盛り込まれている①「顧客創生対策費」、②「WEB定額費」、③「送客手数料」の3項目については、寿美家和久側は最初から、覚書などを通じて適用外とする勧誘活動を行っていた可能性がある。

 ちなみに、①は2021年12月10日改訂版以前はEC集客戦略手数料とされ、メニュー開発やラミネート代金などを指す。②は月額1万5,000円のWEB使用料、③は1日当たり320円のしげよし側からの受注代金とされている。

IT支援事業者の登録取消し判明

 さらに取材を進める中で、加盟契約と深く結び付いていたIT導入補助金を巡り、新たな事実が判明した。

 ㈱寿美家和久は、IT2020、IT2021、IT2022、IT2023前期事務局のIT導入支援事業者として登録されていたが、2025年6月2日付の公表資料に登録取消対象として掲載されていた。

 公表資料によると、事務局は、補助事業の実施状況を確認する過程で生じた「虚偽や不正その他不適切な行為が行われているとの疑義」に基づいて審議し、IT導入支援事業者として不適当と判断した事業者の登録を取り消したとしている。ただし、寿美家和久について具体的にどの行為が問題とされたのかは、公表資料からは分からない。

 編集部は7月31日、IT導入補助金事務局に対し、寿美家和久の登録取消しが公表された時期の意味や取消理由、「2023年7月31日以前に申請された方向け」とする自主返還手続の対象範囲、2023年10月採択案件が対象となり得るのか、自主返還が任意なのか、返還しない場合にどのような取扱いとなるのかなどについて質問した。担当者はその場での回答を控え、確認後に折り返すとしており、現在回答を待っているところだ。

 編集部が確認した契約書、覚書、LINEのやり取り、支払いに関する通知書、さらに元SVや複数の加盟店の証言を重ね合わせると、加盟店ごとに異なる契約条件や覚書が存在し、その後の運営や費用負担、売上金の支払いにも少なからず影響を及ぼしていた可能性が浮かび上がる。

 本稿では、関東で飲食店を営むT氏への長時間にわたる取材と提供資料を軸に、加盟契約から売上金の支払遅延に至る経過をたどり、「しげよし」の加盟店で何が起きていたのかを検証する。

「電話一本で料理を届ける」事業への期待

 T氏は長年、有名ホテルの和食部門で経験を積んできた料理人である。
 2023年、別事業を整理して新たな事業を模索していたところ、「しげよし」の営業担当者から加盟の勧誘を受けた。
 高齢化が進む地域で、電話1本で料理を届ける宅配事業は今後需要が伸びる――。営業担当者の説明を聞き、T氏はその仕事に将来性を感じた。
 「ホテルで料理を作ってきた経験を生かせる仕事だと思いました」
 病院や高齢者施設、法要や会合など、仕出し需要は今後も続くとの説明を受けた。事業モデルそのものに魅力を感じ、「地域にも必要な仕事だ」と考えたという。

 加盟に当たり、T氏は約300万円を支払った。
 編集部が確認した契約書類によると、提携店契約書とは別に「覚書」が交わされ、IT導入補助金の申請を前提に、HANDSシステムというAIシステム導入に関する条件が定められていた。

 覚書には、IT導入補助金が採択されるまで双方が補助金申請に協力すること、その間はHANDSシステムの貸与を継続することなどが記載されている。さらに、3年以上採択されなかった場合には、預かり金を返還する旨が明記されていた。

 これに対し、前述したM氏の付帯契約書には、IT導入補助金が採択に至らなかった場合、「本来補助を受けることができる予定の金額」を、双方が協議した日程と方法で返金すると定められている。ただし、具体的な返金期限は記載されていない。

 契約書本体がほぼ共通しているにもかかわらず、覚書と付帯契約書では、返金時期に関する条件が異なっていたことになる。

(つづく)
【田代 宏】

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