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しげよし加盟契約の実像(中) 支援事業者登録取消しと売上金遅延を追う

 T氏の契約で重要な位置を占めていたIT導入補助金。その申請を支援する立場にあった㈱寿美家和久(三重県津市、小清水丈久社長)は、その後、IT導入支援事業者としての登録を取り消されていた。T氏がIT導入補助金に関する覚書を締結したのは2023年9月5日のことだった。

「寿美家和久」IT導入支援事業者として不適当

 IT導入補助金事務局が公表している「IT導入支援事業者の登録取消について」には、2025年6月2日掲載分として寿美家和久の名称、小清水丈久氏の氏名、所在地の三重県津市が記載されている。対象となった登録年度はIT2020、IT2021、IT2022、IT2023前期事務局である。

 公表資料は、登録取消しの一般的な理由について、補助事業の実施状況を確認する中で生じた「虚偽や不正その他不適切な行為が行われているとの疑義」を審議した結果、IT導入支援事業者として不適当と判断したためとしている。

 事務局のウェブサイトでは、登録取消しとなったIT導入支援事業者から支援を受けた補助事業者に対し、受領した補助金を自主的に返還する手続が案内されている。
 掲載ページには「2023年7月31日以前に申請された方向け 重要なお知らせ」とあり、不正行為への注意喚起が行われている。事務局は、不正行為は「犯罪」だとしてその事例を挙げている。

 具体的には、補助事業者の自己負担額を実質的に減額・無料化する販売方法、また、申請手続を補助事業者以外が行う「なりすまし申請」など。ただし、これらはあくまで資料に記載された事務局の一般的な不正行為の考え方で、個別案件への該当性は、この資料だけから判断できない。
 また、その対象範囲や、登録取消しとなった支援事業者を利用した補助事業者が一律に返還を求められるのかは明確ではない。

 このため編集部は事務局に対し、主に次の点を質問している。

① 掲載時期と不正認定について
・2025年6月2日に寿美家和久がホームページへ掲載された時点で、不正が判明していたとの理解でよいか。
② 対象となる採択事業者について
・「2023年7月31日以前に申請された方向け」とあるが、2023年10月に採択された事業者は、この対象に含まれるのか。
③ 補助金返還の義務について
・対象事業者の補助金返還は自主的なものか、それとも義務(強制)なのか。
・返還しない場合、どのような措置や罰則があるのか。
④ 対象期間(採択時期)について
・寿美家和久が支援した事業者のうち、返還対象となるのはいつ採択された事業者なのか。
2023年7月31日以前に申請した事業者は、最短でいつ頃採択されたのか。
⑤ 寿美家和久の支援を受けた事業者の扱いについて
・寿美家和久の支援を受けて申請・採択された事業者は、補助金を自主返還すればよいのか、それとも返還義務が課されるのか。

回答が得られ次第、改めて報じる予定である。

順調だったスタート

 加盟後しばらくは、T氏の事業は順調に継続したという。注文は次々と入り、2時間もかけて遠方に配送することも珍しくなかった。冷蔵車を購入し、容器類も大量に仕入れた。年末の繁忙期には、深夜2時、3時まで仕込みを続け、翌朝には再び厨房に立った。

 「忙しかったけれど、軌道に乗ってきたと思っていました」

 自ら料理を作り、顧客に届け、売上を積み重ねていた。それだけに、その売上金の支払いが徐々に滞るようになるとは、この時点では想像できなかった。

約束どおり進まなかった加盟後の支援

 業務に支障を感じ始めたのは1年近く経った頃のことだ。
T氏によると、加盟時にはパソコン2台の提供やチラシの配布などについても説明を受けていた。
 ところが、パソコンは当初1台しか届かず、残る1台は何度も催促した後、ようやく送られてきた。チラシの無料配布期間も、説明された期間より短く終了した。容器代についても約束どおりに支払われず、繰り返し連絡した後に入金された。
 IT導入補助金については採択に至らなかった。T氏は、覚書に基づく返金条件が成立する時期を待ちながら、今も対応を求め続けている。

売上金の支払いが遅れ始める

 さらに深刻だったのが、売上金の支払遅延だ。
 編集部が確認したLINEには、本部側が支払いの遅れについて謝罪し、新たな支払予定日を繰り返し伝えるやり取りが残されていた。

 「26日までには必ず対応します」
 「お盆明けには対応します」
 「来月中旬頃まで見ていただければ」
 「最短で明日、遅くとも週明けには」

 支払予定日はその都度提示されたが、その後も延期が繰り返された。
 本部側からは、「申し訳ありません」、「ご迷惑をお掛けしております」といった謝罪も送られていた。これらのやり取りを見る限り、本部側も支払いが予定どおり行われていないこと自体は認識していたものとみられる。

「待つことはできます」LINEに残されたT氏の対応は、終始抑制的だった。
「遅れるのであれば連絡だけはしてください」こうした趣旨のメッセージが複数回確認できる。

 T氏は当時について、こう振り返る。
 「資金繰りが苦しいのであれば、事情を説明してくれれば待つつもりでした。一番つらかったのは、約束の日を過ぎても何の連絡もないことでした」
 支払期限を過ぎても連絡がなく、T氏から問い合わせると、再び新たな予定日が提示される。その繰り返しだったという。

「銀行調達」「商談」――変わる延期理由

 T氏が提供したLINEの通信記録では、支払いが遅れる理由として、「株主との打ち合わせ」、「銀行調達」、「金融機関との調整」、「商談」などが挙げられていた。
 その都度、新しい支払予定日が示されたものの、編集部において説明された資金調達や商談の具体的な内容、進捗を裏付ける資料は確認できていない。

 T氏は当初、本部の説明を信じて待ち続けた。しかし、約束が履行されず、連絡のないまま支払予定日が過ぎる状態が続くにつれ、不信感を募らせていった。

カード決済を巡る問題

 支払遅延に加え、T氏が問題視しているのが、カード決済を巡る運用である。
 T氏によると、顧客がオンラインでカード決済した売上金は、本部側を経由して加盟店に支払われる仕組みだった。加盟店への支払いが滞る中、キャンセルに伴う顧客への返金も行われず、顧客から加盟店へ直接問い合わせが寄せられることがあった。
 また、現金払いと聞いて配送した案件が、現地ではすでにカード決済されていたこともある。

「売上はあるのに、資金が回らない」

 「仕事そのものはありました」T氏はそう話す。
 注文は入り、料理を作り、配達していた。事業に需要がなかったわけではない。それでも、本部を経由する売上金が予定どおり支払われなければ、仕入れや人件費、車両費などを負担する加盟店の資金繰りは悪化する。

 「仕事はしている。でも、お金が入ってこない」
 T氏にとって問題だったのは、事業が成り立たなかったことではない。自ら働いて積み上げた売上を、約束された時期に受け取れなくなったことだった。
 加盟時に交わされた覚書には、IT導入補助金が採択されない場合の返金条件が記されていた。その申請を支援する立場だった寿美家和久は、その後、IT導入支援事業者としての登録を取り消された。さらに、日々の売上金についても支払いの延期が重ねられていった。
 契約書の違い、IT導入補助金を巡る条件、登録取消し、売上金の支払遅延。これらがどのように結び付いていたのか――。

(つづく)
【田代 宏】

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