1. HOME
  2. 行政
  3. 消費者庁、ネット取引の規律強化へ 中間案了承、ダークパターンやチャット勧誘に対応

消費者庁、ネット取引の規律強化へ 中間案了承、ダークパターンやチャット勧誘に対応

 消費者庁はきのう2日、「第9回デジタル取引・特定商取引法等検討会」を開催した。インターネット取引における消費者保護と健全な事業者間競争の促進に向けた中間取りまとめ案を大筋で了承した。通販市場が拡大する中、悪質な事業者を市場から排除し、消費者が安心して取引できる環境の整備に向けた制度改革の具体化を進める方針。

 堀井消費者庁長官が冒頭、黄川田仁志内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全担当)からのメッセージを代読した。メッセージでは、インターネット取引の重要性が一段と高まる中、消費者が安心して取引できる環境の整備が、消費者保護の一層の確保と事業者の健全な競争の促進の両面において極めて重要であるとの考えが示された。本年1月から熱心な議論を重ねてきた委員への感謝が表明され、今回の中間取りまとめ案には、ダークパターンに関する規律、SNS等のチャット勧誘に対する規律、電子書面交付義務の導入といった制度改革が盛り込まれていることへの期待が語られた。消費者庁として、中間取りまとめ案の具体化に全力を尽くす決意が強調された。

事務局による中間取りまとめ案の修正点説明

 事務局が、前回までの議論を踏まえた中間取りまとめ案の修正箇所について詳細な説明を行った。チャット勧誘に関しては、分かりづらいと指摘されたチャット等の定義を修正し、「文字情報等の送信(やり取りの中での画像動画等のファイル添付やリンクを用いたこれらの情報の送信を含む)」と具体化した。また、脚注でボイスメッセージやオンラインセミナーも含む旨を明記した。

 契約場面での規律については、基本的には電話勧誘販売と同等の規制を設けるべきだと明確化した。ダークパターンの論点では、類型の不十分さの指摘を踏まえ、誤認を招く表示や不安を覚えさせる手法について例えば次のようなものが考えられるとして箇条書きの例示形式に修正した。

 広告に関する表示では、実際は広告であるにもかかわらず広告であることが判別困難な表示を禁止する、または広告である旨の明示を求めるべきであると明確化した。最終確認画面の表示では、支払い総額の表示義務に関し、期間の定めのない場合に1年分の総額表示を義務付けるべきではないという指摘と、いつでも解約可能な場合は一律の義務付けが不要であるという意見を脚注で両論併記した。

 電子書面等の記載内容については、消費者の権利行使を円滑にするため、最終確認画面で表示した内容と整合的な情報提供が必要であり、最終確認画面での誤認表示を電子書面で取り繕うことは許容されない旨を明記した。また、事業者名や住所等の記載も必要だという指摘を追記した。返品特約に関しては、容易に認識できない表示に対する執行を強化すべきだとの提案を盛り込んだ。デジタルプラットフォーム事業者への要請では、調査削除義務等の法的義務を課すべきだという意見と広告審査への慎重な配慮を求める指摘を併記した。

 後払いサービスについては適用時点を明確化し、モノなしマルチに関しては他の手段を含めた総合的な対応の重要性を盛り込んだ。厳正な法執行の項目には警察との連携強化やAI技術の活用対象としての被害実態の追加が行われ、悪質な事業者を市場から排除すべきだというパラグラフが追加された。

委員からの活発な意見表明

 島薗委員は、ダークパターンの類型が例示である点が明確になったことを評価しつつ、最終確認画面と電子書面の同一性や明瞭性の担保が極めて重要になると述べ、適格消費者団体による差止請求権の対象検討時にも念頭に置くよう要望。片岡委員は事業者側の立場から、通信販売の大半は健全に行われており過剰な規制にならないよう配慮を求めるとともに、チャット勧誘の範囲やダークパターンの具体例、広告表示の定義などの認識合わせを訴えた。佐藤委員は、通信販売の本質は電話勧誘に近い個別の消費者への働きかけであるため、チャットに限定せずターゲティング広告の進化も踏まえて規定すべきだと主張した。また、海外事業者がソフトローに従わない実態を指摘し、ハードローでの規定や広告代理店まで含めた国内代理人設置義務の必要性を提案した。

 その他、最終確認画面において形式的に情報を1画面に押し込めるのではなく、スマートフォンの画面サイズを考慮した段階的な表示やリンク活用を許容する柔軟な制度設計を求める意見や、注文完了後の電子書面について、連絡先が変わりうる点などを考慮した現実的な対応への要望があった。
 また、SNSやチャットによる勧誘への規律やダークパターンへの対応を前進と捉え、悪質事業者がアカウントを変えて被害を拡大させる実態に対する継続的な検証と救済・被害回復の実効性を要請する意見や連鎖販売への的確な対応を評価する一方、法令を知らずに活動する個人事業主などの事業者に対する業界団体やメーカー、卸を通じた緻密な周知活動の重要性を訴える意見もあった。

 また、現在同庁が進めている「現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会」(座長:山本隆司・東京大学大学院法学研究科教授)との合同検討会の実施について、万場委員から質問があった。事務局は、可能性としてはあり得るとしながらも、「現段階では何も決まっておらず、今後の検討次第になるかと思う」と回答した。また長官は、「これまでの議論を見ても、両方関連してくる部分もある。関連性、有機性というのも踏まえた上で検討していく。当検討会で出たようなことを消費者契約法の検討会の議論の中で一部実現するようなこともあれば、あるいは逆の点もあるかもしれない。何らかの形で共有しながら、最終的により良い制度設計等が進んでいけば良いと考えている。また具体的なやり方については相談させていただきたい」と述べた。

実効性の確保と今後の展望

 大屋座長は、検討会の議論を総括し、消費者団体と善良な事業者の双方が問題は悪質事業者であるという点でスタンスが一致し、市場からの排除が双方のメリットになるという共通認識を持てたことが大きな成果であると分析した。今後は具体的なルールを定める段階であり、事業者からの意見聴取を行いながら、不断に見直し続ける姿勢を確立できたとした。

 堀井長官は閉会の挨拶において、消費者庁として取りまとめ内容を具体的な制度や執行の改善につなげるため詳細な検討を進めると明言した。前日に詐欺的な事業の破綻による多数の深刻な財産被害を及ぼす悪質商法に係る対策パッケージを公表したことに触れ、年間約96万件に上るPIO-NETの相談データをAIで分析し、悪質商法の共通性を見出すことで被害の未然防止につなげる考えを示した。このため消費者庁内に早期警戒準備室を立ち上げたことも発表し、執行力の強化に直結するものであると強調した。 

【藤田 勇一】

当日の配布資料はこちら(消費者庁のHPより)

関連記事:第1回 特商法検討会が始動、定期購入とSNS勧誘が焦点
    :第2回 デジタル時代へ再設計、SNS勧誘に法の網を
    :第3回 規制方向整理 消費者庁が論点提示 ダークパターン対応焦点
    :第4回 ダークパターン規制を具体化、契約・解約場面における規律の在り方も議論
    :第5回 デジタル特商法改正に向け議論進む 悪質オンライン広告や後出しマルチへの規制強化か
    :第6回 ネット広告から実店舗への誘導や後出しマルチの規制などを議論
    :第7回 消費者被害防止へプラットフォーム事業者の責任拡大を議論
    :第8回 「中間とりまとめ案」を提示、ダークパターン規制等をめぐり委員から注文相次ぐ

TOPに戻る

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

INFORMATION

お知らせ