デジタル取引・特定商取引法等検討会 ネット広告から実店舗への誘導や後出しマルチの規制などを議論
消費者庁は11日、デジタル空間における不当な勧誘や悪質な取引類型への対応を議論する「第6回デジタル取引・特定商取引法等検討会」を開催した。本検討会では、インターネット上の広告から実店舗や自宅での対面取引に移行する際の消費者トラブルへの規制、後を絶たない悪質な連鎖販売取引(マルチ商法)への定義見直し、さらにAIを用いた監視を含めた法執行体制の強化など、多岐にわたる議論が行われた。
ネットから「店舗・訪問販売」への接続トラブル
スマートフォンの普及に伴い、インターネット広告を入り口として最終的に店舗や自宅で高額な契約を結ばせるトラブルが急増している。今回の検討会では、契約プロセスの一部がインターネット外に出る取引への具体的な規制方針が示された。
まず、ネット広告で「無料体験」や「モニター募集」とうたって店舗に誘引し、実際には高額な有償契約を結ばせる手法について、特定商取引法(特商法)における「アポイントメントセールス」の一種として整理。 具体的には、①有償契約であることを隠したり無料のみを強調している場合、②有償契約が必須であるのにモニターのみで参加できるように誤認させる場合、③有償契約の条件が極端に小さな文字で実質的に読めない場合、などは「勧誘目的の隠匿」と判定され、行政処分の対象となる方向性が示された。
大屋雄裕座長(慶應義塾大学法学部法律学科教授)は、サンプルの手渡し後に通常の説明を行う場合は悪質ではないが、説明を聞くことを強制する場合は悪質であるなど、健全な取引との切り分けを行う方針を示した。また、実態に合わせて「広告・勧誘の画面」と「申し込み・契約の場面」のそれぞれで規律を立てるべきとした。
また、水回りトラブルの修理等で深刻化しているいわゆる「レスキュー商法」への対応も議論。ネット上で「550円から」と極端な低価格を表示して業者を呼ばせ、自宅に入り込んだ後に「30万円」などの高額な契約を迫る悪質行為について、新たな規律が提案された。 実際には低価格での実績がほとんどない不実な広告を出す行為(規律A)や、広告から著しく乖離した高額な金額を合理的な根拠なく提示して勧誘する行為(規律B)を捉え、個別具体的に行政処分を下せる明確な基準を設けてはどうかとの提案がなされた。これにより、現場の状況に応じた正当な追加工事と悪質な高額請求とを明確に判別し、健全な事業者の活動を萎縮させることなく悪質業者を排除する狙いがあるとしている。さらに、十分な説明や契約がないまま勝手に屋根瓦を剥がすなどの工事を始め、原状回復を困難にして契約を迫る「点検商法」に対しても、特商法上で明確に行政処分の対象とすべく規定を設ける方向が示された。
大屋座長は委員からの意見を受け、ロードサービスへの対象拡大を事務局で検討する、トラブルの切り分けとして追加サービスの客観的な必要性、価格の適切性、要請事案との関連性の3点がポイントとなるとした。
「後出しマルチ」の客観的定義
連鎖販売取引(マルチ商法)を巡っては、近年「後出しマルチ」と呼ばれる手口が問題視されている。これは、最初に数十万円の投資商材などを購入させ、契約した後に初めて「友人を紹介すれば紹介料(特定利益)が入る」と明かす手法。事務局は当初、事業者の「意図」という主観的要素を用いた定義を提案していたが、委員から「立証や運用が難しい」との指摘を受け、今回は客観的要件による再定義案を提示した。
新たな定義案では、物品等の販売を行った後、その取引で相手方が負った金銭的負担に関連して、他者への再販売や紹介による特定利益の収受を告げる行為を「後出しマルチ」と規定。一方で、健全な「愛用者取引」(化粧品などを気に入った愛用者が、後に自発的に販売員になるケース)が違法と誤認されないよう、特定利益を提示した時点から先のみに規律を適用する「適用除外」の条文を設けるなどとした。
なお、投資商材や情報商材などの実態のない取引(モノなしマルチ)を一律禁止すべきとの意見に対しては、特商法が「不当な勧誘行為」を捉えて処分する法体系であることから、特定の商品を丸ごと禁止することは難しいとする事務局のスタンスが示された。
委員からは、モノなしマルチの深刻さは確認しつつ、特商法の枠組みで対応可能か、他手段も含めて整理する必要性ついて意見があった。
生成AI時代に立ち向かう法執行
限られた行政リソースの中で、いかに厳正かつ円滑な法執行を確保するかという方策が議論された。特商法に基づく行政処分は、国と都道府県を合わせて年間116件(令和6年実績)に上るが、インターネット取引の巧妙化に対し、さらなるスピード感が求められている。
消費者庁は一昨年から「デジタル班(専門執行班)」を設置し、時間のかかる行政処分に至る前段階の「行政指導」を戦略的に活用している。行政からの指摘に対して速やかに改善を行う事業者も多いため、早期の行政指導を活発化させることで、消費者被害の迅速な拡大防止につなげるアプローチを強化する。
今後の目玉となるのが「AIの活用」。事業者側が生成AIを悪用した巧妙な広告を打ち出す中、行政側もインターネット上のウェブパトロールにAIを導入する方針が示された。AIに「ダークパターン(消費者を欺くネット画面のデザイン)」を機械学習させ、自動で監視・検知するシステムの構築を目指す。
最後に大屋座長は、意図せずダークパターンが発生してしまう事業者側の実情にも配慮し、指摘後に速やかに是正された場合は、行政指導や確約手続きなどで柔軟に対応する。一方で、限られた行政リソースは真に悪質な事例への処分へ集中的に投下すべきであり、全体的な執行体制の強化も必要であるとした。
また、AIの活用は推進すべきだが、事業者側のセキュリティや規約などの留意事項に配慮する必要がある。複数事業者が関与する事案については、たまたま広告スペースを提供しているだけの業者は除外し、共謀・幇助や共同正犯に該当する「一体となった悪質行為」に限定して厳正に対処する。さらに、国、経産局、都道府県間で事案をエスカレーション(またはダウングレード)しやすい柔軟な組織体制を構築する。また、警察が動きやすくなる最大の要因は「法定刑」であるため、委員から提案された具体的な加重・引き上げ規定(不実告知の懲役刑引き上げなど)について今後検討を進めるとした。
国境をまたぐ取引への規制は極めて重要であるため、決済プラットフォームとの協働も含め、今後に向けてやれること・必要な提言をしっかりと報告書に盛り込んでいくとまとめた。
【藤田 勇一】
当日の配布資料はこちら(消費者庁のHPより)
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