東洋新薬、独自素材販売の今と未来 一般食品への広げ方、視野に入れる「One to One」研究開発
健康食品の受託開発・製造(ODM)を行う㈱東洋新薬(本部:佐賀県鳥栖市)が原料販売事業を立ち上げてから約6年が経過した。独自に研究・開発した機能性食品素材を、ODMに活かすだけでなく、飲料・食品メーカーを中心とする外部企業に対して営業、販売する取り組みを始めたのは2020年のことだった。新規事業を軌道に乗せることは出来たのか──同社の担当者の話からは、機能性食品素材の需要を一般加工食品まで広げるにあたっての課題と、成長可能性の両方が見えてくる。
途切れぬ引き合い、課題は「時間」
同社は、特に機能性表示食品のODMを強みとする。強みの源泉は、独自に研究・開発した数多くの機能性食品素材。その数を年々増やし、また、可能な機能性表示の幅と領域を広げることで、競合他社が容易には真似ることの出来ない製品をODMの顧客に提案している。
その「虎の子」の独自素材をODMの顧客以外に提供するのが原料販売事業だ。同社で製造できない清涼飲料水をはじめとする一般加工食品を中心に営業、販売を進めるスタイルは、事業の立ち上げから約6年が経った今も変わっていない。
この間、原料販売事業の顧客は、国内外に生まれた。同社の担当者は「一定の需要がある。そういう確証を得られました。(普段から)一定の引き合いがあり、案件が無くなることのない状態を維持できています」(商品提案部統括マネージャー)と話す。
だが、順風満帆とは言えない。同統括マネージャーは続けてこう話す。「この6年で、さまざまな課題も見えてきました」
最大の課題は、商品開発から販売に至るまでの「時間」だ。一般加工食品の場合、サプリメントなどの健康食品と比べて「2年以上はかかる」(同統括マネージャー)。その要因としては、錠剤やカプセル剤などのサプリメントではほとんど気に留める必要のない「風味」の開発に時間が相当かかることが挙げられる。
その上で、機能性表示食品として販売するのであれば、消費者庁から届出番号を付与されるまでに一定の期間を要する。そうこうしているうちに、「マーケティングや販売の方針が変わり、途中で開発が止まってしまう。そういう大型案件がこれまでにいくつかありました」
他にも、強みが弱みになる場合もある。例えば、機能性表示食品として免疫ケア機能も訴求できるようになった同社の大麦若葉末(大麦若葉由来食物繊維)。同社独自の「超微粉砕製法」で加工しているため、粉っぽさが少なく、口当たりなめらかな大麦若葉青汁を作れるのが強みだ。だが、それをそのまま一般加工食品に応用しようとすると、極めて微細な粉末に加工されているため、商品形態が多様化している一般加工食品の工場では取り扱いが難しい場合がある。
こうした課題を同社は前向きに捉える。同統括マネージャーは「(健康食品の)受託製造を行っているだけでは見えなかった課題に気づくことが出来ましたし、通信販売を主戦場とする健康食品と(主な販路が店頭となる)通常の食品では、マーケティングの視点が異なることも理解出来ました」と話す。それが刺激となり、現在、原料販売事業を通じて顕在化した課題の解消を図る独自素材や既存素材の改良などの検討を進めているという。
同統括マネージャーはまた、一般加工食品メーカーの意識の変化を指摘する。「ブランドのスモールスタートを検討するメーカーさんが増えています」。だとすれば、機能性食品素材が一般加工食品により活用される好機。〝小さく生んで大きく育てる〟潮流が広がれば、時間の課題はおのずと解消されていきそうだ。いずれにせよ同社では、すでに飽和している分野はあるにしても、健康食品と同様、消費者の生活シーンにアジャストさせた健康価値を付加した一般加工食品の需要は「まだまだ伸びていく」と見る。
BEAAと研究・開発力で描く10年後
葛の花エキスにターミナリアベリリカにフラバンジェノール(松樹皮抽出物)──東洋新薬の原料販売事業では、これら独自の研究・開発で創出した機能性食品素材を、素材認知度を高める目的もあって外部に出している。その中で、同社が新たに開発し、今年から販売品目に追加した素材が、同事業を大きく成長させる原動力となる様相を見せている。Balanced Essential Amino Acidを正式名とする「BEAA」だ。
必須アミノ酸で構成されるBCAAとEAAを「独自の比率」で調合したもの。約3年間の研究・開発を経て今年2月、スプーン一杯分に相当する「3g」で、「ホエイプロテイン20g相当の運動による体づくりをサポート」すると訴求しながらODMと原料販売の両方を始めた。目下、原料販売事業で最大の注目株。米国や中国での需要の高まりを背景に、2年前との比較で少なくとも3倍以上という尋常ではない価格急騰に見舞われ、必要量の調達さえ難しくなっているホエイプロテインの状況が、そうさせた。
同社は現在、とりわけBEAAの販売促進に力を入れている。その一環として、今月30日から10月2日まで東京ビッグサイトで開催される中食・外食・小売向けでは日本最大級とされる食品商談会「FOOD STYLE JAPAN2026」に初出展する。需要調査も兼ね、大麦若葉末とともにBEAAをアピールし、中食・外食事業者や加工食品メーカーなどに対し、健康・栄養を切り口とした新たな付加価値づくりを提案する計画だ。健康維持・増進を目的にしたプロテインなどたんぱく質補給食品の需要拡大が予測される中で、加工食品メーカーらがどう反応するのか注目だ。
同社の原料販売事業の10年後を考えても、BEAAはキー素材になりそうだ。
同統括マネージャーは同事業の将来について、「販売実績がグローバルで広がり、これまでの課題を解消した原料が開発できていると思います」としつつ、BEAAについて、「さまざまな食品に使ってもらえていると思います。高たんぱく質食品のような商品を展開しているメーカーさんには現時点で興味をもっていただいていますし、日本でも今後広がりを見せるはずのそうした食品に使っていただけるよう、我々も目指しています。それが実現できれば(原料販売の)ネットワークも広がっているはずです」と予測。それを根拠に「10年後は今よりも拡大しています」と同事業の将来を展望する。
それを現実のものとするためにも、やらなければいけないことがある。「我々の強みでもある研究・開発力をもっと伝えていきたい」という。健康食品業界では知られた話だが、健康食品を扱っていない食品メーカーには「まだまだ知られていないんです」。それを伝えることで、こんな取り組みを進めたいと話す。
「私たちは、(健康食品の)原料を機能性(表示食品の機能性関与成分として使える素材)にしていく研究・開発が得意で、実績もたくさんあります。開発途上のものもたくさんあって、そうしたものを食品メーカーさんと一緒になって開発を進め、(そのメーカーの独自素材として)使っていただく。今後は、そんな取り組みも広げていきたいと思っています」
One to One ODM──同社が今期(2026年9月期)から新たに掲げるようになったコーポレートメッセージだ。意味は、顧客企業にとって「かけがえのない唯一の商品作り」を研究・開発力で支えていく、ということ。同社は今、それを健康食品ODMだけでなく、原料販売事業でも推進していこうとしている。
【石川太郎】
(冒頭の画像:東洋新薬が原料販売事業の一環として運用しているウェブサイト。同社で取り扱う各原料・素材に関する学術情報や商品開発のヒントなどを発信)
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