1. HOME
  2. 機能性表示食品
  3. N-アセチルマンノサミン届出の背景 オレキシン研究報告に注目、そして進めた安全性・機能性試験

N-アセチルマンノサミン届出の背景 オレキシン研究報告に注目、そして進めた安全性・機能性試験

 N-アセチルグルコサミンは知っているが、N-アセチルマンノサミンは初めて聞いた──そんな人も多いに違いない。

 消費者庁が2026年1月20日に行った機能性表示食品の届出情報検索データベース(DB)の更新で、初めて公開された新規の機能性関与成分だ。

 ManNAc(マンナック)と略称されることもあるN-アセチルマンノサミンとは何か。それを書き起こす前に、届け出られた機能性表示の内容を押さえる。

前向きな気分と認知機能は「車の両輪」

 同日のDB更新で、個別に届け出られた2種類の機能性表示が一度に公開された。

 まず、「中高年の方の前向きな気分(活気・活力感)を維持する機能が報告されています」

 次いで、「中高年の方の認知機能の一部である判断力(判断の正確さや速さ、変化する状況に応じて適切に処理する力)、認知柔軟性(外部からの情報等の刺激に対して考え方を柔軟に変える力)、認知機能速度(視覚情報を素早く正確に判断して適切な行動につなげる力)、情報処理速度(情報を適切に素早く処理する力)を維持する機能が報告されています」

 かたやメンタルケア、かたや認知機能速度や情報処理速度など認知機能の一部の維持。対象者(中高年)の限定付きだが、メンタルケアと認知機能ケアの双方を単独で訴求できる機能性関与成分は珍しい。

 前者に関してはその後、次の機能性表示が届け出られた。

 「中高年の方の前向きな気分(活気・活力感(生き生きすること、積極的な気分でいること、活気がみなぎること、活気がわいてくること、やる気でいっぱいなこと))を維持する機能が報告されています」

 最初の届出に比べ、より「前向きな」語彙が増えた格好だ。ちなみに、どの機能性表示も摂取量に関する科学的根拠は、機能性関与成分量として1日あたり8.8mg。いわゆる「1日1粒」の製品設計が可能な機能性関与成分である。

 「認知機能と前向きな気分は、両輪の関係にあるのではないでしょうか。認知機能はあるのに気分が乗らなかったり、意欲が湧かなかったりしてやらない、やれない、ということがありますよね。逆に、意欲があって、前向きな気分だから、認知機能が維持されるということもある。そのように認知機能と意欲(前向きな気分)は相互に関わり合っているはずです」

 N-アセチルマンノサミンを届け出た㈱東洋新薬(本部:佐賀県鳥栖市)の研究開発部統括マネージャーが両機能の関係をそのように語る。

シアル酸の前駆物質、東大の研究報告に着目

 顧客の選択肢を広げるための独自素材。それを持ち味の一つとしながらサプリメントなど健康食品の受託開発・製造を手がける同社にとって、同成分は初の認知機能領域の独自素材だ。同領域を取り入れることにした背景を同統括マネージャーはこう語る。

 「認知機能単独では強い素材がすでにある。とはいえ、日本の人口動態などを考えれば、認知機能は今後さらに重要性が増す分野です。そうであれば、お客様の選択肢の一つとして揃えておく必要が当然ある。そうした目的で、なんらか違いを出せる素材はないかと探していました。そこに現れたのがN-アセチルマンノサミンです」

 N-アセチルマンノサミンとは、一言でいえば「糖類」である。より厳密には「天然に存在する非荷電単糖で、解糖系産物のフルクトース6リン酸からUDP-GlcNAcを経てシアル酸へ変換される中間体として細胞内に存在する成分」(届出資料)。平たくいえば、シアル酸(N-アセチルノイラミン酸)の前駆物質。シアル酸は、脳や中枢神経に多く含まれる物質で、神経回路の形成や記憶、シナプスの可塑性に関与しているといわれる。

 そんなN-アセチルマンノサミンに同社が着目した背景には、東京大学・塩田邦郎教授(当時)らの研究グループによる、同成分に関する研究報告があった。

 それは、細胞培養条件下において、N-アセチルマンノサミンに関連する代謝経路と、オレキシン神経細胞への分化との関連を示唆する基礎研究の報告だった。

 オレキシンは、現・筑波大学の柳沢正史博士らが発見した神経伝達物質として知られる(発見当時はテキサス大学)。脳の視床下部で産生され、その受容体が脳の広範囲に分布することから、脳の様々な機能に働きかけるとされる。柳沢博士らをはじめとする一連の研究で、ナルコレプシー患者の脳内ではオレキシンが欠乏していることが分かり、同物質は睡眠と覚醒を調整する重要な神経伝達物質として認知されることになった。柳沢博士は一連の発見の功績で、ノーベル生理学・医学賞の候補として名前が挙がる。

 オレキシンの産生を増加させるN-アセチルマンノサミン──独自素材に組み入れることを考えないほうが不思議だろう。パンチの効いたキーワードが素材背景にあらかじめ揃っている。

 東洋新薬は、前述した東京大学・塩田邦郎教授(当時)らの報告に着目し、同大らも実施したことのなかった臨床試験を初めて行った。その結果が、前掲の機能性表示食品としてのヘルスクレームにつながる。「脳のオレキシンを増加させるという作用メカニズムを考えれば、(機能性表示の)拡張性は十分あると考えています」(同統括マネージャー)。

新規成分の安全性をどう固めたか

 ところで、安全性の確認はどうしたのだろうか。N-アセチルマンノサミンは生体内に存在する物質だが、食経験のほとんどない、いわゆる「新規食品成分」と考えられる。同社が届け出た安全性に関する資料を調べた。

 それによると、複数のデータベースを使って文献検索を行って安全性を評価しつつ、同社が独自素材として展開する固有のN-アセチルマンノサミンを使用し、以下の試験を実施したとされている。

 まず、復帰突然変異試験。続いて、小核試験と急性毒性試験。さらに、90日反復経口投与毒性試験=亜慢性毒性試験も。

 以上の試験のいずれにおいても「陰性または毒性は認められなかった」。その上で、ヒト長期・過剰摂取試験(健常成人15人、18.5mg/日を12週、続いて92.5mg/日を4週の計16週)を実施。その結果、「臨床上問題となる検査値の変動及び試験食品と因果関係のある有害事象の発現は認められなかった」としている。

 亜慢性毒性試験まで行っているため、ヒト試験も含め、安全性評価コストは相当額に上ったと考えられる。だが、同統括マネージャーは、「当社では通常運転です」と説明する。実際、同社がN-アセチルマンノサミンに続いて届け出た新規の機能性関与成分に関する届出資料を見ても、同様の安全性評価が行われていた。ヤナギラン由来エノテインBである。

(つづく)

【石川太郎】

機能性表示食品、「新規」はどう生まれるのか 過去記事
動体視力の維持、QOLの維持に翻訳 
eスポーツから広げた発想、もともと日本にあった知見活かす

関連記事
【東洋新薬が届出】大麦若葉末、免疫ケア表示の舞台裏(前後編)

TOPに戻る

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

INFORMATION

お知らせ