植物由来で現在唯一、勝ち筋どう描く 【大麦若葉末、免疫ケア表示の舞台裏(後編)】東洋新薬、原材料販売も積極的に展開へ
風邪をひかなくなったという体感から始まった、㈱東洋新薬(本部:佐賀県鳥栖市)による大麦若葉末を巡る免疫ケア研究。摂取すると唾液中のIgAが顕著に高まるという知見を入り口に研究が進み、最終的に、「大麦若葉由来食物繊維はcDC(通常型樹状細胞)に働きかけ、健康な人の免疫機能の維持に役立つことが報告されています」という機能性表示に辿り着いた。
だが、そこがゴールではない。免疫ケア機能が報告されている大麦若葉末の意義、あるいは、それを日常的に摂取する必要性を消費者にどう理解してもらうか。届出以上に難問といえそうだ。
cDC活性→T細胞等活性→免疫機能を維持
「免疫の司令塔」の一つ、cDCに働きかけることを作用メカニズムとする初の免疫ケア機能性関与成分──大麦若葉由来食物繊維はその座を逃した。
同成分の免疫ケア機能性表示の届出が公開される約2カ月前の2026年3月3日付の届出情報検索データベース更新。『ヤクルト』や『Y1000』でお馴染みの機能性関与成分、乳酸菌シロタ株の新規機能性表示が公開された。「樹状細胞(cDC)に働きかけ健康な人の免疫機能の維持に役立つ機能が報告されています」という内容だった。
さらにこの日の更新では、「樹状細胞(cDC・pDC)に働きかけ、健康な人の免疫機能の維持に役立ちます」という機能性表示も公開。乳酸菌のL. bulgaricus OLL1073R-1とS. thermophilus OLS3059を機能性関与成分とする『明治プロピオヨーグルト』の届出である。
これらの届出を見て同社はどう思ったか。大麦若葉由来食物繊維の免疫ケア機能性表示実現への自信が深まったのではないか。
「いえ、そんな気持ちはゼロですよ。ただただ悔しいとしか……我々が最初だと考えていましたから。何度も差し戻されましたが、3月の段階では(届出公開まで)時間の問題でしたし」(同社研究開発部統括マネージャー・神谷智康氏)。
届出が公開されたのは5月8日。免疫ケア機能性表示の科学的根拠として届け出たシステマティックレビューでは、計5本の臨床試験論文を採択。各論文の主要アウトカムは、2報がcDC、2報がIgA、残りの1報が腸内細菌の占有率だった。
作用メカニズム(機序)については、「大麦若葉由来食物繊維はcDCに作用し、T細胞の活性化を誘導することにより、免疫機能を維持し、結果的に体調を維持する機能を発揮したと考えられる」と考察。T細胞は、獲得免疫の中心的な細胞とされる。
同統括マネージャーによれば、T細胞の活性化が起点になり、同じく獲得免疫細胞のB細胞による抗体産生など、より下流の免疫応答にもつながる。B細胞は、IgAなどの抗体産生に関わる免疫細胞だ。大麦若葉末の免疫ケア研究の入り口となったIgAに関しては結局、機能性表示に盛り込むことはなかったが、「唾液中IgAが増えたということは、B細胞系の応答が動いたことを示す一つの指標になる」という。
複数の機能性、「腸活」で横串
問題は、ここからだ。「cDC(通常型樹状細胞)に働きかけ、健康な人の免疫機能の維持に役立つ」という、大麦若葉由来食物繊維を含む大麦若葉末の消費者にとってのベネフィット、あるいは価値、平たくいえば、それを摂取し続ける意味とは何か──同社は今、それを見出そうとしている。
1つ、キーワードとなりそうなのが、昨今のトレンドワード「腸活」だ。同社が自社素材の大麦若葉末についてこれまでに確認してきた機能性は、「腸の健康維持・増進」で横串を通すことができる。
トクホの関与成分としては、「食後血糖値上昇抑制」のほかに「便通改善」がこれまでに許可されている。また、機能性表示食品の機能性関与成分としては、「便通の改善」、「腸内環境の改善(善玉菌である酪酸菌・乳酸菌を増やす)」、「肌の潤いを維持して肌の健康を守るのを助ける」、「睡眠の質(起床時の眠気)の改善」、そして「健康な人の免疫機能の維持に役立つ」がこれまでに届け出られている。
腸との関連が直接的でないものも含まれるが、大麦若葉由来食物繊維の機能性の土台には広義の意味での腸の健康維持・増進があると言える。ただ、同統括マネージャーはこう話す。
「当社の大麦若葉末を配合すれば、こうした機能を一度にうたうことができますよ、とアピールできるのは、確かにストロングポイントです。ただ、その強みは、消費者にとってどれだけ意味があるか。そうした意味付けを整える必要があります。確かに『腸活』は、有力なキーワードになると思ってはいます。ですが、『では腸活でどんな勝ち筋が大麦若葉末で描けるのか』と問われると、言語化が難しい。もっと掘っていく必要がありそうです」
現在、免疫ケアの機能性関与成分の大半を占めるのが乳酸菌をはじめとする菌体成分だ。
その中で、ただ1つの植物由来成分が、同社が九州を舞台に大麦若葉の栽培管理から、大麦若葉末への微粉砕加工までを自社で手掛ける大麦若葉由来食物繊維である。
「どんな勝ち筋を描けるのか」の答えは、同社が免疫ケア研究に着手する端緒となった体感を多くの消費者が得られるのだとすれば、よりクリアに見えてくるに違いない。そのためには、大麦若葉といえば青汁という固定観念にとらわれない、幅広な商品開発が求められそうだ。
おそらく同社もそのことを理解している。「受託加工だけでなく(大麦若葉末の)原料販売も行う。飲料をはじめとする明らか食品に、抹茶のように使っていただければ」。免疫ケア機能性表示の届出公開後、同社の幹部はそう話している。
(了)
【石川太郎】
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