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なぜ「新規」を生み続けられるのか 研究開発の現場と経営が見ている同じ「一点」

 ㈱東洋新薬(本部:佐賀県鳥栖市)が機能性表示食品について過去に届出実績のない「新規」を連発している──本連載の第1回はそう書き起こした。

 この連載で取り上げてきたのは、動体視力の維持、スムーズな血液の流れ、頭皮環境を整える──といった新規の機能性表示。さらに、N-アセチルマンノサミン、ヤナギラン由来エノテインBという新規の機能性関与成分。いずれも2026年の前半、わずか半年ほどの間に届出番号が付与・公開されたものだ。

 本連載では、こうした1つひとつの「新規」がどう生まれたのかを、同社研究開発部の統括マネージャーに対する取材と、それぞれの届出資料から紐解いてきた。

 取材で分かった着想の入口は、おおよそいつも意外なところにあった。例えば、動体視力の維持はeスポーツ、頭皮環境は会議後の雑談、ヤナギラン由来エノテインBは薬用ハーブとしての欧州での実績、N-アセチルマンノサミンはオレキシンを巡る国内研究機関による既報の知見──。

 同社は、そこから健康維持・増進への意味付けを見いだし、外部の助言を得つつ自社で臨床試験を含む研究開発を実施して安全性と機能性を検証した上で、直接の顧客である健康食品販売会社らが機能性表示食品として届け出られるようにしている。

 安全性の検証に関しては、亜慢性毒性試験までを行うことを「通常運転です」と言い、届出資料では科学的根拠を説明しながらも機能性表示に反映されていない機能を巡っては「チャレンジは、しました」と語った。この連載では、取材を通じて見えてきた、機能性表示食品で出来ること、出来ないことの一定の線引きや、やるべきことも伝えたつもりだ。

 では、1つの会社が、具体的にはサプリメントなど健康食品の受託開発・製造企業が、なぜこれだけの「新規」を立て続けに生み出せるのか。最終回は、個々の届出を離れ、それらを生んだ研究開発の現場そのものに目を向けてみたい。

絶対的基準なき中での拠りどころ

 消費者や生活者に「健康」を届ける。そのための研究開発を企業の営みの1つとして行う以上、そこには学術的な新規性だけでなく、事業としての成果も求められる。取材した統括マネージャー自身、ビジネスである以上は投資に見合う成果が要る、とその前提を隠さない。

 しかし、だからこそなのだろう、思いついたことを試せる、つまり、思いついたことを試験にかけられる環境が同社にはあることが取材で分かった。当然、リソースの制約はあるから何でもかんでも試せるわけではない。研究開発のための投資の決定までにはいくつもの段階を踏む必要がある。

 そうした中でも、会議後の雑談などから得られた着想を基礎研究や臨床試験へと回し、一定の科学的根拠を得て、機能性表示食品として消費者庁へ届け出られる状態にまで、時間をかけながら仕上げていく。この連載で見てきた「新規」は、いずれもそうした現場から生み出されたものだ。

 一方で、同社に限らず、機能性表示食品の届出に必要な科学的根拠に関する絶対の物差しはない。ここまでやれば安全性は十分だ、機能性が十分だと言い切れるような絶対的な基準が、サプリメントなど健康食品には存在しない。なぜなら、特定保健用食品を除き、国が個別に審査し、その十分性を最終的に認定する許認可制が取られていないためだ。

 そのように基準があいまいな中で、同社は何を拠りどころに日々の研究開発を営んでいるのだろうか。同統括マネージャーは取材の中でこう語っている。

 「個人的な考えになってしまうかもしれませんが、そもそもこの業界になぜ来たのかと言えば、人々の役に立ちたい、ということがやっぱりある。だから人を騙したり、裏切ったりするようなことは絶対にしたくないし、してはならない。そこは、絶対にぶれない信念として持ち続けているつもりです」

現場の「信念」、経営の「責任」

 消費者を裏切らないという信念を語る研究開発の現場を、経営はどう捉えているのか。

 同社の髙垣欣也取締役副社長は2025年12月、ウェルネスデイリーニュースの取材に対し、同社で開発・製造する製品の「品質」に対する責任についてこう語っている。

 「お客様、そして消費者に対する我々の責任を果たすために、我々の独自素材からそうではないものまで、原材料の選定や調達から受け入れまでの品質確認をより徹底していく必要があると考えています」

 研究開発現場の統括マネージャーが「消費者を裏切らない」と言い、経営責任を担う副社長が「消費者への責任を果たす」と言う。立場は違うにせよ、同じ方向を向いている。

 では、その責任を、事業としてどう形にするのか。

 同社は今期(2026年9月期)、「One to One ODM」という新たなコーポレートメッセージを掲げた。顧客企業と1対1で向き合いながら、新たな定番商品など「新しい柱」になるものを提供していくという理念。それを支えるのが、同社が強みとするいくつもの独自素材と、特定保健用食品の許可実績で培った研究開発体制が生む、「エビデンス(科学的根拠)」という付加価値だという。

 「我々は、他では真似できなかったり、真似されにくかったりするものをご提供できる。そうした独自性を、個々のお客様のニーズに則しながら、1つひとつの商品にオリジナリティを付加させられるようにしたい。それが『One to One ODM』です」(同)。

 国内健康食品業界は、「ヒット商材が不在」と言われて久しい。2015年の制度施行から10年超を経た機能性表示食品も、「健康維持・増進」という定義のない範囲に収まる表示(ヘルスクレーム)が求められ、革新的なヘルスクレームを生み出すことは容易ではない。

 そのように市場での差別化が難しい中で、プロモーションにだけ頼るのではなく、商品そのものの力で応える。同社はそれを「One to One ODM」と呼び、顧客企業ごとの「かけがえのない唯一の商品作り」を支えることだと説明する。この連載で追ってきたそれぞれの「新規」は、その1つの表れだろう。そしてそれを支えているのが、思いつきを試験にかけながらエビデンスを積み上げてきた同社の研究開発力である。そのように言えそうだ。

 思いつきを試験にかけられる研究開発の現場があり、その成果を事業として束ねる経営がある。その上で、両者が「消費者」という同じ一点を見ている。そして絶対の物差しがない領域で、削るのではなく積むことを選び、掲げられる機能は掲げ、掲げられるかどうか微妙な機能も「チャレンジ」と呼んで手を伸ばす。本連載が見てきた「新規」は、そうした研究開発の姿勢から生まれた。

(了)

【石川太郎】

機能性表示食品、「新規」はどう生まれるか 過去記事
動体視力の維持、QOLの維持に翻訳 
eスポーツから広げた発想、もともと日本にあった知見活かす

N-アセチルマンノサミン届出の背景 
オレキシン研究報告に注目、そして進めた安全性・機能性試験

睡眠と排尿、2つの機能性表示なぜ? 
ヤナギラン由来エノテインBの届出資料を読み解く

「頭皮の健康」はどう生まれたか 
「肌の一部」という発想、既存機能の「血流」に着目 

血管でも血流でもなく「血液」  
フラバンジェノールがうたえた理由 

関連記事:【東洋新薬が届出】大麦若葉末、免疫ケア表示の舞台裏(前後編)

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