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健康食品・化粧品通販事業者が直面する課題 【寄稿】その対策、そして将来性とは

㈱通販総研代表取締役社長 辻口 勝也


 健康食品・化粧品通販業界は現在、「売上が伸びない一方でコストが上がる」という構造的課題に直面している。本稿では、両業界で共通している課題について整理すると共にそれに対する企業の対策、今後の将来性についてお伝えしたい。
 
 現在、両業界に共通する大きな課題は、主に以下の7つである。新規客獲得効率の悪化、物価高による消費マインドの低下、定期コースへの消費者の嫌悪感、原料費・物流費・紙代・人件費などさまざまな経費の高騰、容器やフィルムの手配に時間とコストがかかる、リモートワーク導入による社員間のコミュニケーション不足による組織力の低下、AIの上手な活用。
 
 多くの企業を最も悩ましているのが新規客獲得効率の悪化である。筆者は立場上、多くの通販事業者から話を聞くが、「以前ほど新規客が取れない」「どこか上手に新規客が獲得できている事業者はいるか?」という声が多い。オフライン広告は視聴者のテレビ離れや新聞・雑誌などの媒体の発行部数の減少が大きく影響している。(一社)日本新聞協会の調べでは、2005年には5,256万部強あった新聞の発行部数は、25年には2,486万部強と20年で半分以下になっている。WEBの普及でオンライン広告の市場規模は拡大しているが、健康食品・化粧品通販業界においては供給過多の状況で、効率の良い新規獲得ができている事業者は数少ない。新規客が効率よく獲得できないと広告費が減り、新規客数が減るという悪循環が生じてしまう。売上アップどころか、売上の維持にも一苦労というのが実態である。

消費マインドの低下と定期不信で売上が悪化

 物価高による消費マインドの低下も売上に影響を与えている。この要素は新規客獲得にも影響を与えているが、深刻なのが既存客からの売上に影響を与えている点である。主に定期コースの解約、販促DMのレスポンスダウンが以前よりも進んでおり、リピート売上ダウンにつながっている。
 定期コースに関するトラブルが、ここ5年くらい報じられることが増えてきた。一部の悪質な事業者によるものだが、初回の安価なオファーで商品を購入させるが、実は定期コースであり、解約しようとしても電話がなかなか繋がらずトラブルに発展している。もともとは複数回の購入を約束してくれる代わりに安くするという設計で始まった定期コースであるが、今では一部の消費者が嫌悪感をいだくものになってしまった。また、回数縛りのない定期コースを各社が運用した結果、消費者も初回だけ安く買うという消費行動を学び、早期の解約をする顧客が多数という状況になってしまっている。多額の広告費をかけて新規客を獲得しても、リピート購入で広告費が回収できないのである。 

コスト上昇が止まらない、売上減少で利益圧迫

 売上が上がらない中、上がっているのが経費である。ある事業者の方は先日、毎日のようにパートナー企業から値上げの告知が届くと嘆いていた。値上げならまだ良い方で、原料や資材そのものが入手困難となると商品自体が製造できなくなってしまう。既存客に送るDMも郵送費・紙代・印刷代の高騰から以前よりも配布数を減らさざるを得なくなってきている。DMの配布数が減ると当然売上も減るのだから事業者としても頭の痛いところである。
 さらに人件費の高騰が派遣社員の給与や外注のコールセンター費用アップに影響を与えている。優秀な人材の確保やパートナー企業の起用を考えると、抑制もできない要素である。
 容器やフィルムの手配も、商品の製造や商品発送時の梱包に影響を与えている。原料は確保できていても、容器やフィルムの納入遅延により、商品が欠品する事態も発生している。また、中東情勢が不透明になって以降、梱包の際に使っている緩衝材の入手が困難になる事例もすでに発生している。

 通販事業者にとっては、売上が下がる一方でコストは上昇し、利益が圧迫されている。事業拡大のチャレンジがしづらい状況がここ数年続いており、この先もしばらく続きそうであると予測している。

組織力強化と働き方見直し、生成AI活用は模索段階

 組織体制に目を向けると、コロナ禍で普及したリモートワークを見直す機運が高まっている。社員にとってはストレス少なく働ける労働形態であるが、経営者からするとコミュニケーション不足からくる組織力の低下を実感しており、出社日を増やす、もしくはリモートワークの解消を志向する会社が増えている。経営環境が厳しくなる中、組織体制の強化は急務であると判断する経営者は増えている。
 
 最近、利用者が増えている生成AIであるが、多くの企業では「試験的利用」に留まっており、収益に直結する活用には至っていない。AIは優秀である反面、得手・不得手もあり、決して万能な存在ではない。自社にとってどのような使い方が有効なのか、さまざまな活用を試している段階であるが、AIを使わない未来はない以上、有効な使い方を見つけていく必要がある。
 ここまで述べたように通販事業者は多くの課題を抱えており、深刻な内容のものが多い。

通販各社の打ち手が多様化、モール強化と施策の再構築

 健康食品業界に限って言えば、機能性表示食品の申請から受理に時間がかかるようになったことなど、業界を細分化していけば、より多くの課題が存在する。とは言え、その中でも通販事業者は課題解決や事業発展に向け、さまざまな取り組みを行っている。その具体的な取り組みを紹介したい。
 
 新規客獲得の効率悪化に対しては、Amazon・楽天などのモールでの施策を強化する会社が増えている。Amazonや楽天内での広告は、自社で広告を出稿するのと比較すると低いCPO(顧客獲得コスト)になることが多い。同じ広告費を使うのであれば、より新規客が獲得でき、売上に直結するモールに投資しようという流れである。自社で獲得する顧客よりもリピート率が低い、モールに支払う手数料が負担になるという側面はあるが、モール自体が成長段階にあるため、事業者としては無視できない有力な販路になっている。

 一方で、その会社が従来から主戦場にしている媒体で、愚直にクリエイティブテストを繰り返している事業者も存在する。特に、オフライン広告は以前と比べると競合事業者の出稿が減少している傾向があり、反応が取れる勝ちクリエイティブが開発できると、目標とするCPOで新規客が獲得できることもある。特に高齢者ターゲットの商品であれば、オフライン広告は今でも有力な媒体の1つである。
 
 化粧品通販事業者では、対面販売の強化が進む。商品理解、商品の正しい使い方の紹介、販売スタッフとの関係作りと、対面販売ならではの良さが見直されている。地道で手間はかかるが、新規獲得費用の安さ、その後のリピート率を考えると1つの有力な手段と評価されている。

 経費アップに対して、各社、積極的に取り組んでいるのが「おまとめ定期コース(複数本お届け定期コース)」である。従来は、定期コースというと毎月1個をお届けするというのが一般的であった。しかし、物流費の高騰を受け、2カ月に1回2個、3カ月に1回3個といったお届け方法での定期コースに積極的に誘導している。毎月1回に比べると送料負担が減る分、顧客にも割引で還元するようにしている。この「おまとめ定期コース」には定期コースの継続率が上がるという副産物がある。顧客にとっても毎月コンビニや郵便局に代金を支払いに行くのが面倒という側面があり、割引だけでなく、利便性においても評価されているようである。

 また、DMの送付に制限が出てきているため、各社、LINEのお友達登録を積極的に促している。総務省の「令和7年版情報通信白書」によるとLINEの利用率は、全体で2014年の55.1%から24年には94.99%へと増加している。高齢者層でも、60代の利用率が2014年の11.3%から24年の91.1%へと増加している。実際にある健康食品通販会社は、顧客の大半が70代以上であるにも関わらず、LINEのお友達登録者を約10万人抱えている。費用対効果と到達力の観点から、DMよりも売上・利益への貢献度は高く、事業者にとっては欠かせないツールになってきている。運用としては、DMを完全にLINEに置き換えるのではなく、反応が取れる客層にはDMを活用しつつ、LINEを併用するというのが効果的な使い方である。

 商品の形状見直しも進んでいる。日本郵政のゆうパケットで送れる形状への変更である。ゆうパケットは重さ1㎏までの発送が対象で、箱の大きさに制限はあるが、厚さが3㎝以内であれば、日本全国、宅配便より安価に送付することができる。例えば、青汁であれば四角い箱に入っているのが一般的であるが、ゆうパケットで送れるような平たい形状の箱に変えている。育毛剤や化粧品でも詰め替え用を用意し、定期コースの初回は宅配便で送るが、2回目以降は詰め替え用をゆうパケットで送る会社が増えてきている。

新商品開発が未来を左右、多様化する販路対策が鍵

 将来に向けて最も大切なことは、新商品の開発である。多くの通販事業者・化粧品事業者には過去の事業を支えてくれた主力商品がある。しかし、その主力商品での新規客獲得が難しくなっている以上、新商品に会社の未来を託すしかない。ある化粧品通販事業者は過去2年で2つの機能性表示食品を開発した。この会社はオフライン広告を長年主戦場にしていたが、最近ではAmazonでの販売を強化している。新たに開発した機能性表示食品は、1つは新聞広告で、もう1つはAmazonで売上が好調である。媒体も含め戦略的に展開したと言いたいが、実情はオフライン広告、オンライン広告、Amazonとテストを繰り返し、その商品の販売に適した販路を見つけたのが実情である。従来と違うのは、自社が経験値の高い販路に固執するのではなく、さまざまな販売を模索する点である。

 最後に業界の将来性であるが、通販利用者は増え、通販業界の市場規模も増加している。決して業界の未来を悲観する必要はない。但し、販路は多様化しており、対面販売と通信販売の垣根も下がってきている。今後の成否を分けるのは、商品力そのものに加え、「どの販路で、どの顧客に届けるか」という点である。

【プロフィール】
辻口勝也(つじぐちかつや)
大手食品メーカー、大手経営コンサルティング会社を経て、株式会社通販総研を設立。健康食品、食品、化粧品、飲食業界を中心に通信販売事業の売上アップを支援。販売データ分析から把握できる数字による指標と現場社員からの意見・アイデアを重視し、実地に沿ったコンサルティングを心がける。

(月刊誌「Wellness Weekly Report95号(2026年5月10日刊)より転載」

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