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転換期に立つ健食・化粧品通販 「獲得」から「信頼」の時代へ。AI活用と不正対策でLTV最大化へ

 健康食品・化粧品の通販(EC)市場は今、転換期に立たされている。原材料費や物流費の断続的な高騰、新規顧客獲得単価(CPA)の上昇といった「多重苦」に加え、消費者の「成分リテラシー」向上や、AIを悪用した巧妙な不正注文の増加が事業者の経営を強く圧迫している。かつての「派手な広告で釣る」「初回無料」といったビジネスモデルが限界を迎える中、業界が生き残るための道筋を探る。

売上停滞とコスト高、重層的な構造的課題

 現在、多くの通販事業者が直面している最大の課題は、「売上が伸びない一方でコストが上がる」という深刻な構造的歪み。㈱通販総研の辻口勝也氏は、新規客獲得効率の劇的な悪化を最大の懸念事項として挙げる。かつてオフライン広告の主役だった新聞の発行部数は、(一社)日本新聞協会の調べによると、2005年の約5,256万部から25年には約2,486万部へと、この20年で半分以下にまで激減した。リーチできる見込み客が物理的に減少する中で、オンライン広告も供給過多となっており、効率的な獲得ができている企業は極めて少ないのが実態となっている。
 さらに、地政学的リスクに起因するコスト高騰が追い打ちをかけている。(公社)日本通信販売協会(JADMA)の万場徹専務理事は、中東情勢の動向が業界にとって死活問題になり得ると指摘する。健康食品や化粧品のサプライチェーンを細かく見れば、中身の原材料はもちろん、容器、キャップ、バージンシール、商品を保護するフィルム、配送時の緩衝材に至るまで、その多くが石油由来の資材。石油価格の変動は単なるガソリン代の上昇に留まらず、商品原価そのものを押し上げる。これに物流費や人件費の高騰が加わり、一企業の努力で吸収できる限界をとうに超えつつある。

納得感を求める顧客、成分リテラシーの壁

 消費者の意識変化も、従来のビジネスモデルを根底から揺るがしている。物価高による消費マインドの低下に加え、一部の悪質な事業者による解約トラブルなどが報じられたことで、「定期コース」そのものへの嫌悪感が広がっている。かつては一般的だった「回数縛り」が敬遠され、初回割引のみを享受して即座に解約する「初回解約」が常態化した。これにより、多額の広告費を投じて獲得した新規客がリピートに至らず、広告費の回収が困難になる「LTV(顧客生涯価値)の低下」が深刻化している。
 特に化粧品分野では、SNSの普及により消費者の「成分リテラシー」が飛躍的に向上した。「レチノール」「ビタミンC」「ナイアシンアミド」といった特定の有効成分を基準に選ぶ「成分買い」が定着し、ブランドストーリーやイメージ広告よりも、配合濃度と価格のスペック比較にさらされる傾向が強まっている。広告代理店の㈱新広社によれば、かつての「強い訴求」はもはや通用しにくくなっており、現在は「掲載内容の情報量が多い」クリエイティブが信頼を獲得しているという。納得して買いたい消費者は、より多くの、そして深い情報を求めている。

媒体の相互補完進む広告戦略の最新潮流

 こうした厳しい環境下で、広告予算の配分(ポートフォリオ)にも変化が見られる。デジタル広告費の高騰とCookie規制の影響を受け、デジタルのみで頭打ちになった企業がシニア層の取り込みを狙ってオフライン媒体へ回帰する動きがある一方で、逆にオフライン中心だった老舗企業がオンラインへ力を入れるなど、媒体間の相互補完が進んでいる。新広社によれば、現在のトレンドは「回帰」というよりも、ターゲットの生活動線に合わせてデジタルとオフラインをいかにシームレスにつなぎ、効率を最大化するかにシフトしている。
 成功している事業者に共通するのは、単一の媒体に依存しない柔軟なメディアミックス。例えば、新聞全面広告で信頼性を担保し、そこからQRコードでLINEやLPに誘導し、動画で詳細を伝えるといった手法。また、自社ECでの獲得コストが上がる中、Amazonや楽天といった巨大プラットフォーム(モール)での展開を強化し、モール内の広告投資を通じて確実に新規客を確保する動きも目立つ。消費者の購買接点が分散する中で、いかに多角的なタッチポイントを構築できるかが、広告戦略の成否を分ける鍵となっている。

(月刊誌「Wellness Weekly Report95号(2026年5月10日刊)より転載、つづきは会員専用記事閲覧ページへ)

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