時代を読み、事業で応える DHC、研究開発基盤の強化が将来を決める 素材探索から品質管理まで自社の目で
2023年4月に新経営体制へ移行した㈱DHC(東京都港区)。25年の連結売上高は見込みで996億円。26年は前年比10%増をめざし、リニューアルを含む新商品数を前年比で倍増させる計画だ。中期重要施策には「商品力の強化」を掲げた。サプリメントではどんな価値を消費者に提供していくのか。3つある研究開発組織のうち、基礎研究ユニットとサプリメントユニットの2つを管掌する影山将克上席執行役員に聞いた。
──2026年10月にも東京・晴海に研究開発拠点を新設し、研究開発組織を統合するそうですね。なぜ今、統合なのですか。
影山 「未来創研プロジェクト」と呼んでいます。DHCの強みには、サプリメントと化粧品の両方の研究開発組織を持ち、知見やデータを積み上げてきたことがあると思います。ただ、これまではそれぞれ独立して研究開発を行っていて、技術や人の交流もほぼありませんでした。そうではなく、これからの研究開発はホリスティック(統合)路線で攻めていこうと。そのために、基礎研究、サプリメント、香粧品の3つの研究開発ユニットを一体化させ、開発基盤を強化します。外部の研究機関との連携も積極的に進めていきたいと考えています。
──今、社内の研究開発人員は全体で何人ぐらいですか。
影山 具体的な人数は開示していません。ただ、旧体制と比較すると倍増しています。旧体制の課題だった人材育成も進めながら、研究開発の人員を増やしています。実は、新体制に移行した23年は、リニューアルも含めた新商品が1つもなかった。ですが、25年はサプリメントなど健康食品で17、化粧品では25でした。26年はそれぞれ倍増させようとしています。「商品力の強化」が中期重要施策の一つです。商品ポートフォリオの見直しなども行いながら進めていきます。そのためにも、研究開発基盤を強化しようということです。
──基礎研究ユニットではどんな研究を。
影山 サプリメントと化粧品のそれぞれについて、シーズを見つけるための研究です。将来の「土台づくり」に向けた研究とも言えますね。サプリメントについて言えば、素材の探索、安全性や機能性に関する研究、作用メカニズムの検証、臨床試験の計画などを、最終的な商品化を見据えながら行っています。素材や成分の特性を徹底的に掴み、それを商品に落とし込むための研究とイメージしてもらえれば。その成果をサプリメントユニットと共有し、そこから具体的な商品開発を進めています。
基礎研究は前から取り組んでいました。ただ、ここ数年でさらに力を入れるようになりました。以前ですと、例えばコエンザイムQ10やα-リポ酸などがそうですが、テレビ番組に取り上げられて爆発的にヒットするといった、いわば「降ってくる」ようなことが結構ありました。しかし今はそんな時代ではないですし、そもそも新商品のタネ(シーズ)も少ない。だから独自に見つけていかないと将来がない。そんな危機意識もあって、出口(商品化)を意識した基礎研究に力を入れるようになりました。
本当にさまざまな研究を行っています。例えば、オリーブに含まれるある成分にダイエット効果があることを基礎研究で見出しました。今、臨床試験を進めているところです。
原材料から最終製品まで3段階で品質確認
──研究開発の立場として、24年の紅麹サプリ事案をどう受け止めましたか。
影山 事案自体に対しては、なぜ原材料を出荷するまでの段階で気づけなかったのかという疑問があります。ただ、大きな流れで見ると、2015年に機能性表示食品制度が始まり、機能性とエビデンス(科学的な根拠)に対する要求が大きく高まりました。私たちもエビデンスを重視し、多くの商品で機能性表示を行っています。その上で、紅麹事案をきっかけに、商品の安全性と信頼性に対する消費者の目線が一段と厳格化され、品質保証の強化と説明責任が求められるようになった。そのように受け止めています。品質問題を起こせば、信用が失われてしまう。そうならないようにするためにも、安全性を含めた品質を「見える化」していく必要があると考えています。
──DHCは25年から、機能性表示食品に含まれる機能性関与成分の含有量分析結果をロット毎に開示しています。「見える化」の一環ですね。
影山 現在も続けています。当社のサプリメントはすべてGMP(適正製造規範)認証取得工場で委託製造しています。原材料の選定も厳密に行っています。機能性表示食品に限りませんが、個々の商品の主要原材料に関しては、当社の品質管理室で品質確認を行っています。成分含有量など製品規格との同一性や微生物などを分析し、規格どおりであることをチェックします。合格したものだけを工場に支給し、バルク(パウチや容器に充填する前の製品)の段階でまた自社で分析を行い、それに合格したものだけを次の工程に進めます。そして出来上がった商品を出荷する前にも同様に自社で品質確認を行っています。
そのように当社は3段階の品質チェックを自社で行っています。その上で、原材料メーカーも、最終製品の製造委託工場も、それぞれ品質確認を行っていますから、当社のサプリメントは、品質チェックがかなり行われているほうです。今は、そういう安心・安全に対する取り組みを対外的に発信していく必要があると思っています。
当社の場合、個々の品質保証や安全管理は信頼性保証部門が主に担当していますが、我われ研究開発部門も関わっています。信頼性保証部門とともに、今は原材料も含めて、工場監査を行ったりしています。安全性や機能性を担保できる商品を開発するためには、原材料から最終商品まで、どのように製造されたり、品質管理されていたりするのかを知っておく必要があります。
体感性のある商品を追求したい
──「最高の顧客体験を提供する」とDHCの高谷会長(兼CEO)は語っています。サプリメントにおける最高の顧客体験とはなんでしょうか。
影山 科学的根拠があって、品質がしっかりしていて、価格的にも続けやすい。そうした商品を、データに基づくパーソナライズやチャネル最適化を通じて提供すること。それが土台です。その上で、研究開発の立場として特に意識しているのは、お客様に気づきを与えること、つまり、体感性のある商品を提供することです。
誰もがバッチリ体感できるような素材や成分は滅多にありません。ですが、個々の素材や成分の特性、例えば吸収性や吸収時間などを十分理解したり、製法を工夫したりすることで、有効成分の吸収効率や持続性を高められます。そうすることで、体感性を高めることができる。基礎研究では、体感性を高めるための研究も行っていて、例えば『速攻ブルーベリーV-MAX』という商品では、アントシアニンが約60分、アスタキサンチンが約10時間、ルテインが約33時間といった成分ごとに異なる吸収時間のピークを考慮し、持続性が高まるように設計しています。
実際、当社のサプリメントの中でアイケアの分野は前年比110%(10%増)の伸びを見せていて、現在も成長中なのですが、お客様からは「体感がある」という声が多く寄せられています。
──今後、DHCのサプリメントに関する研究開発はどこに向かいますか。
影山 顧客体験価値をどうもたらすかを考えていく必要があると思っています。ですから、デジタルデバイスやアプリなどを活用して効果を「見える化」したり、研究成果を消費者に分かりやすく伝えるための工夫だったりも研究テーマになると思いますが、最大の研究テーマはやはり、老化をいかに遅らせるか。誰もが無理なくウェルエイジング(Well-Aging、心身ともに健康で上手に年を重ねること)に取り組める基盤を提供するための研究開発を進めていきます。
──つまり「Longevity」(健康に長生きすること)ですね。
影山 そうですね。今は、血圧やコレステロールなど、健康の一部の改善に目が向いていますが、そうではなく、全体的な健康を消費者に提供できるようにする必要があると思っています。テロメア、オートファジー、DNAメチル化(エピジェネティクス)など複数のアプローチを通じて、実年齢と生物学的年齢の観点から、全体的に老化を遅らせていくような方向性。それがサプリメントの究極的な役割であり、価値ではないかと。
今後、本格的に研究していきます。素材探索を行い、良いものを見つけることができれば。当然、安全性もきっちり見ていかないとなりません。これからの新しい素材や成分は、医薬品並みの毒性試験が求められると思っています。「食経験が数年あるから大丈夫」で済ませられるような世界ではもうありません。
──ありがとうございました。
【聞き手・文=石川太郎、取材日=2026年2月13日】
【プロフィール】影山将克(かげやま・まさかつ)2001年5月、DHC入社。健康食品の開発に従事。「持続型シリーズ」や「アイケアシリーズ」などをはじめとする様々な商品を手がける。2018年、免疫調節機能に関する研究で博士(環境学)の学位を取得。23年7月より現職。
「Wellness Weekly Report」93号(2026年3月10日号)より転載、一部加筆
特集「時代を読み、事業で応える」
関連記事:FRONTEO、AI戦略で中小企業をサポート
:サイキンソー、腸内細菌叢データで「0次予防」を実現
:トランスジェニック、創薬グレードの知見で築く「食のエビデンス」
:Alataka、菌のリレーで腸内環境の土台を整える
:ゼリアヘルスウエイ、製薬基準の品質保証で応える安全・安心
:太陽化学、グローバルに戦える機能性素材をつくる

