1. HOME
  2. 特集
  3. 開発コスト削減とスピードアップを実現 【時代を読み、事業で応える】AI戦略で中小企業をサポート

開発コスト削減とスピードアップを実現 【時代を読み、事業で応える】AI戦略で中小企業をサポート

㈱FRONTEO 代表取締役社長・最高経営責任者 CEO 守本 正宏 氏

 ヘルスケア産業が個別最適化と科学的根拠の深化という転換点にある中、AI技術がその羅針盤として注目されている。膨大なデータから「相関」を見出す従来の生成AIとは一線を画し、独自の方程式で「因果関係」を解明する同社。創薬分野で培った高度な知見を、今なぜ機能性表示食品や未病・予防領域へと注ぐのか。同社を率いる守本正宏氏に、データから読み解く時代の兆しと、2030年に向けて同社が描くヘルスケアの民主化ビジョンについて詳しく聞いた。

「相関」から「因果」へ、意思決定の質を変えるAIの真価

――ヘルスケア産業は現在、超高齢社会の加速や消費者の本物志向、さらにはパーソナライズ化の潮流により、大きな転換期を迎えています。これからの市場においてAIが企業の「意思決定のあり方」をどう変えていくと予測されていますか。
守本 これからのヘルスケア領域、特に未だ解明されていない複雑な生体メカニズムを扱う現場では、単なる「AとBには関係がありそうだ」という統計的な相関関係の分析だけでは不十分です。なぜその結果が導かれるのか、という「因果関係」を解き明かすAIの選択が不可欠になります。これまでの意思決定は、過去の成功体験に基づく「経験や勘」、あるいは資本力に頼る手法が主流でした。しかしこれからは、AIによる高精度な仮説構築に基づいた「科学集約型」へと、そのあり方が劇的にパラダイムシフトしていくでしょう。

――貴社独自のAI「KIBIT」は、そうした専門性の高い領域で具体的にどのような価値を発揮するのでしょうか。汎用的な生成AIとの決定的な違いを教えてください。
守本 KIBIT、そして私たちが提唱する「方程式駆動型AI」の最大の特徴は、一般的なAIが膨大な計算資源や巨大なデータセンターを必要とするのに対し、PC1台という極めて少ないリソースで、大規模計算機に匹敵、あるいはそれ以上の高精度な推論を短時間で行える効率性にあります。これは情報の「量」で勝負するのではなく、情報の「質」と「繋がり」を解析するアルゴリズムの違いに起因します。
 また、データの扱い方、つまり論文の読解方法も独自の哲学に基づいています。私たちは論文の「結論」だけを鵜呑みにすることはありません。本文中に記述された「どの分子がどう動いたか」、「細胞がどう変化したか」といった査読済みの客観的事実のみを抽出し、それらを自社開発の方程式で繋ぎ合わせ、ネットワーク化します。この解析プロセスにより、論文の著者自身も意図していなかった、あるいは膨大な情報の海に埋もれて誰も気づかなかった「新たな知見」を発見することができるのです。

創薬知見を食品開発へ、エビデンスを底上げ

――貴社はAIを用いた標的探索や作用機序の解明など、創薬支援で多くの実績があります。この高度な知見は、サプリメントや機能性表示食品の開発現場へどう応用できるとお考えでしょうか。
守本 「なぜこの成分が体に良いのか」という作用機序の解明という点では、創薬も機能性表示食品も本質的なプロセスは同じです。例えば、古くから経験的に使われている伝統的な素材について、最新のサイエンスでそのメカニズムを裏付けたり、ある目的(例えば腸活)で使われていた素材が、実は脳機能改善という全く別の効果を持つ可能性を「逆引き」で探索したりすることが可能です。
 これにより、既存の論文から情報を集めるだけの従来のSR(システマティックレビュー)では見つけ出せなかった独自の作用機序の発見や、臨床試験の精度を劇的に高める「どのバイオマーカーを持つ人に効果が出やすいか」という被験者の層別化が可能になります。開発の「入口」段階で質の高いサイエンスを導入し、精度の高い仮説を立てることは、結果として無駄な試験コストを減らし、研究開発のスピードを飛躍的に高めることにつながります。

――リソースの限られた中小規模のメーカーにとっては、非常に革新的な武器になりますね。
守本 まさにそこが私たちの戦略的ビジョンです。現在のヘルスケア市場は多額の研究開発費や広告費を投じられる企業だけが、高度なエビデンスをつくることができ、市場を支配できる構造となっています。しかし、私たちのAI技術は、先ほど申し上げた通りPC1台レベルの計算資源で運用できるため、中小企業であっても十分に手が届く価格帯で提供できます。中小企業が大手と対等に渡り合える、科学的根拠に基づいた高品質な製品を世に送り出せるよう支援することで、業界全体の信頼性を底上げしたいと考えています。

――「科学の民主化」が、業界の誠実さを証明する武器になるのですね。
守本 その通りです。資本力のある企業だけがエビデンスをつくることができる時代は終わります。私たちのAIは、志ある中小企業がどんな企業やアカデミアとも対等に渡り合い、[裕瀧1.1]真に価値ある製品を世に送り出すための「羅針盤」となります。科学に裏打ちされた「誠実さ」こそが最大のブランド力になる時代。2030年に向け、誰もがデータに基づいた最適な選択を享受できる、透明性の高いヘルスケア市場を共に切り拓いていきたいと考えています。

――近年、製品の安全性や品質管理に対する消費者の眼差しはかつてなく厳しくなっています。リスク管理の面でのAIの貢献はいかがでしょうか。
守本 昨今の紅麹問題などは、産業界全体にとって「安全性の担保」の重要性を再認識させる大きな教訓となりました。これまでの安全性評価は、既知の毒性情報との照合が主でしたが、私たちのAIを用いれば、製品の開発段階で膨大な論文情報を網羅的に解析し、潜在的な毒性や、特定の成分同士が体内で引き起こす予期せぬ相互作用を事前に予測・特定できる可能性があります。
単に「売れる製品」を作るだけでなく、開発の極めて初期の段階から科学的なガバナンスを効かせ、リスクを客観的に評価する。こうした真摯な経営判断をデータで支えることこそが、これからの不確実な時代に企業の持続可能性を守る「最強の盾」になると確信しています。科学に裏打ちされた「誠実さ」こそが、最大のブランド力になる時代です。

未病・予防領域の展望、AIが溶け込むライフスタイル

――AIを活用した医療機器・システム開発の知見を、健康食品の主戦場である未病・予防領域へどう繋げていきますか。
守本 私たちは、日常会話のテキストデータを分析して「あたまの健康度」を数値化するサービス「トークラボKIBIT」などをすでに展開しています。こうした技術は、消費者が自分自身のコンディションを意識するきっかけを提供します。健康食品ビジネスにおいて重要なのは、単に「売る」ことではなく、いかにして消費者の「自分事化」を促すかです。
 AIによる可視化は、適切な機能性表示食品の摂取や生活習慣の改善といった行動変容を促すための強力な動機付けになります。AIが示すスコアを経時的に追うことで、消費者は健康意識が高まり、「今のうちにこの成分を取ろう」という具体的なアクションに移れるようになります。「病気になってから治療する」のではなく、AIが日々の記録や何気ない会話から予兆を検知し、消費者は未病の段階で適切な栄養介入を検討する。このBtoBtoCのビジネスモデルは、個人のQOL向上はもちろん、逼迫する国家の医療費削減という切実な社会課題に対する、AI企業としての直接的な回答になると信じています。

――最後に、AIが社会インフラとして完全に定着した今後のヘルスケア産業の姿をどう展望されていますか。
守本 近い将来、サプリメントや健康食品は、単なる一時的な「流行りもの」や「気休め」ではなく、個々人の正確な科学的データに基づいた「パーソナライズされた生活必需品」としてのポジションを確立しているでしょう。その時、企業の格差を決めるのは広告予算の多寡ではなく、どれだけ誠実に、科学的な真実に裏打ちされた製品を提供できているかという一点に集約されます。
 AIは魔法の杖ではありませんが、正しく使えば、これまで見えなかった「真実」を照らす強力な光になります。私たちはこれからも、革新的なAI技術の提供を通じて、企業の規模に関わらず、消費者が本当に価値のある製品を選択し、健やかな日々を享受できるような、透明性の高いヘルスケア市場を共に創造していきたいと考えています。

――ありがとうございました。

【聞き手・文:藤田勇一】

(月刊誌「Wellness Weekly Report93号」(2026年3月10日刊)より転載、取材日:2月18日)

【プロフィール】守本 正宏(もりもと・まさひろ):1966年、大阪府生まれ。89年、防衛大学校卒業後、海上自衛隊の護衛艦での勤務を経て、アプライドマテリアルズジャパン㈱に入社。2003年に㈱FRONTEO(旧UBIC)を設立。独自開発のAIエンジン「KIBIT」を核に、国際訴訟支援からライフサイエンス、経済安全保障まで多岐にわたる分野でAIの研究開発と事業展開を牽引している。

TOPに戻る

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

INFORMATION

お知らせ