時代を読み、事業で応える ゼリアヘルスウエイ、製薬基準の品質保証で応える安全・安心
製薬企業「ゼリア新薬工業」の100%子会社として、健康食品のODM・OEM事業を手がけるゼリアヘルスウエイ㈱(東京都中央区)。主力のドリンク剤はゼリア新薬の筑波工場で製造し、錠剤やカプセルなどは協力工場と連携する。品質保証はすべてゼリア新薬が担う。紅麹サプリ事案を経て、製薬グループのODM・OEM事業会社は時代の変化をどう読み、事業でどう応えようとしているのか。河野康生社長に聞いた。
紅麹サプリ事案後に高まった「製薬グループの安心感」
──業界環境の変化をどう見ていますか。
河野 大きな括りではそんなに変わっていないと思っています。消費者が健康を求めているという大きなトレンドは変わっていない。ただ、細かなところではやはり昔とは違います。
たとえば、2024年の紅麹事案以降の変化です。それによってサプリメントの消費が停滞したという変化もありますが、それだけではない気がします。と言うのも、サプリメントの開発や製造の受託会社は日本に山ほどあり、中には非常に安価で受託するところもあります。はっきり言えばそういうところに頼んだ方が当社より安くできる。それでも紅麹事案以降、当社に声を掛けてくださるお客様が増えた気がします。「なぜ当社に?」とお尋ねすると、答えは「安心感」のようなのです。「やはり製薬会社がバックにいるところの方がきっちりしているだろう」という意見が割と多いです。
──少なくとも業界内では、品質に対する意識が変わったということですね。
河野 おそらくそうだと思います。当社が扱う製品を作ってくれる協力工場には、すべてゼリア新薬の薬事品質保証部門が監査を行っています。また、協力工場で出来上がった製品のサンプルと試験成績書をゼリア新薬の工場の品質管理部門に送り、問題がないかチェックした上で出荷判定を出す。この出荷判定も、ゼリア新薬の品管が行っています。こうした品質保証体制は以前から変わらないのですが、紅麹事案以降、あらためて注目されるようになったのかもしれません。我々自身、紅麹事案以降、製造所の監査は非常に強化しています。以前は数年に1回程度だったのですが、かなり頻度を上げています。
──原材料の品質管理はどうしていますか。
河野 ここは正直なところ、業界全体が悩んでいるテーマだと思います。医薬品の場合は原薬に公定規格があって、それに適合しているという証明書が原薬メーカーから来る。規格を外れた原料はそもそも使用しないし、判明した時点で出荷停止や回収になります。そういう「キレ」があるのです。ところがサプリメントの原材料には、それに相当する統一的な仕組みがない。では何を根拠にするのかと。
当社ではゼリア新薬と共同で独自の原料調査票を作っていて、業界で一般的に使われている様式よりも詳しい情報を原材料メーカーに求めています。ただ、工場監査を行うにしても輸入原材料が非常に多いですし、受け入れ検査でどこまで確認できるかというと、やはり限界はあります。検査のための試薬だって品目ごとに調達しなければならない。多品目の原料を扱う受託製造企業にとって、ここが一番悩ましいところではないでしょうか。私たちも悩んでいます。
──原材料にもGMPを義務づけるべきだという意見もありますね。
河野 それが望ましいと言えば望ましいのでしょうが、実際にできるのかどうか。
──業界内では品質への関心が高まっているとはいえ、消費者から製造現場の品質はなかなか見えません。
河野 そうですね。品質が良いか悪いかは、消費者からは必ずしも分からない。そこは結局、我々のようなODM・OEMに製造を委託する販売会社でしか判断できないのです。ただ、最近は大手のお客様からも、製造所固有記号ではなく製造所名をそのまま表示してほしいという要望が増えています。これまで黒子だった製造の現場が表に出てくる流れは確実に進んでいると感じますね。
ドリンク剤受託の今後 医薬部外品で現状打開へ
──主力はドリンク剤の受託製造です。環境の変化はありますか。
河野 新しい素材で新しいドリンク剤を、という流れがなかなか生まれてこない。そのため、以前のコラーゲンドリンクのような、ずば抜けたものが今は見当たらない。ヒット素材の不在も原因だと思います。それに、当社は瓶とアルミボトル缶に対応しているのですが、瓶のコストがかなり上がっています。また、アルミ缶については「価格の壁」があり、200円台は売れる一方で、400円、500円となると動きが止まってしまうのです。理由ははっきりしていません。
──厳しい環境のようです。どう打開していこうとしていますか。
河野 ひとつは指定医薬部外品です。当社が製造販売元となり、お客様に製品を供給していくことを考えています。中身を変えず、パッケージだけ変える。すでにビタミンとコンドロイチンを配合した指定医薬部外品の固形剤でそれに取り組んでいますので、来年度からは、50mlドリンクタイプの指定医薬部外品でも事業を広げていきたいと考えています。部外品であれば効能・効果をきちんと謳えますから、健康食品やサプリメント以外での製品展開を考えているお客様のニーズに応えられると思っています。
──ゼリアヘルスウエイのドリンク剤受託製造事業の最大の強みとは、医薬品GMP基準で運用されているゼリア新薬の筑波工場で製造・品質管理を行っていることだと思うのですが。
河野 筑波工場は、健康食品GMP(日本健康・栄養食品協会が認証)も取得しています。
──顧客にとっては、GMP基準を遵守したサプリメントの枠組みで機能性表示食品のドリンク剤を届け出ることもできます。そこは大きなアドバンテージになるのでは?
河野 それをできるところは当社以外にもあるはずですが、そうですね、そうした強みをもっと生かせると良いのかもしれません。そのためにも、ドリンク剤の需要をもっと伸ばしていく必要があります。
今の購買行動続くか 王道はもうない
──河野社長がゼリア新薬からゼリアヘルスウエイに移られてから約16年です。「黒子」であるODM・OEMの立場から見て、サプリメントを求める消費者の姿はどう変化しましたか。
河野 サプリメントといっても、販路によって立ち位置が全然違いますから一概には言えません。大手流通で売れているもの、昔ながらの対面販売、ネットワークビジネス、それぞれ別の世界です。ただ、ひとつ言えるのは、これから10年、15年のうちに、高額なサプリメントはなかなか売れなくなるのではないか、ということです。今それを買っている方は70代、80代で、年金もしっかりもらえている世代でしょう。ドラッグストアに行けば同じような成分のものが2,000円、3,000円で買えるのに、なぜ1万円で買っているのか。将来の世代は同じ購買行動を取らないのではないでしょうか。
──もしそうなると業界の構造も変わりそうです。
河野 製品の単価が下がっていくでしょうから、従来の高単価・高利益率というビジネスモデルは成り立たなくなるかもしれません。ただ逆に、そうなったときに新しいものが出てくる可能性もある。医薬品ではいくつか思い浮かべることのできる、誰もが知っている「ブランド」がサプリメントはまだまだ少ないですよね。だからこそ成長余地はまだまだあると思います。今のところ新しいプレーヤーが参入しやすい環境でもありますし。
──これからのゼリアヘルスウエイの役割をどう考えていますか。
河野 当社は自社で原材料を一から開発する力は持っていません。メーカーなどと連携して密に情報を取りながら、どう組み合わせていくか。そして、お客様から「こういう剤形でこういうものを作りたい」と言われたときに、最適な製造所を見極め、振り分けていく。私は当社のことを、ドリンク剤以外に関しては、受託メーカーというよりも「コーディネート会社」だと思っています。ただ、その裏側にはゼリア新薬の品質保証がある。そこが単なる企画会社とは違うところだと言えるかもしれません。そうした中で今後は、ウイングを広げられるだけ広げていくことが大事だと思っています。清涼飲料水だ、サプリメントだとカテゴリーにこだわることなく、先ほど申し上げた指定医薬部外品も含め、最適な解を見つけていくしかない。王道なんて本当にないのですから。
──ありがとうございました。
【聞き手・文=石川太郎、取材日=2月19日】
【プロフィール】河野康生(こうの・やすお)1985年ゼリア新薬工業入社。OTCの営業部門や学術部門などを歴任した後、2010年4月ゼリアヘルスウエイに出向。取締役管理本部長を経て2025年6月より現職。
(Wellness Weekly Report93号」2026年3月10日号より転載、一部加筆)
特集「時代を読み、事業で応える」
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