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紅麹7日間試験、語られなかった点 YouTube検証第3回「胃毒性議論と説明過程」

 ウェルネスデイリーニュース編集部は、紅麹サプリメント問題の経緯を検証するYouTube動画シリーズ「紅麹サプリ・検証シリーズ」の第3回を公開した。
 今回のテーマは「7日間試験で何が語られなかったのか」。2024年に実施された7日間反復投与試験を巡り、当初の説明では主に腎毒性が強調された一方、その後の議論では胃への影響が指摘された経緯を整理した。試験結果がどのように共有され、どの情報が社会に説明されたのか、その過程を検証している。

プベルル酸研究の最新動向

 冒頭、紅麹サプリ事件を巡る新たな研究として、東京科学大学の研究チームがプベルル酸による腎障害の発症メカニズムに関する論文を発表したことを紹介した。同研究は、『紅麹コレステヘルプ』の健康被害ロットおよび原因物質とされるプベルル酸を用い、ヒトの腎細胞やマウスで実験を行った結果、腎臓の細胞機能を支えるミトコンドリアが損傷することで腎障害が起きる可能性が示されたとするものである。

 もっとも、この研究は発症メカニズムの解明を目的としたものであり、プベルル酸が腎毒性を示す可能性を示唆する一方、原因物質を直接証明する研究ではないとされる。実際の患者が同程度の濃度に達していたか、プベルル酸が唯一の原因であるか、サプリメント中の濃度が毒性レベルであったかといった点には言及されていない。研究については、現在、同大学に取材を申し込んでいる。

 紅麹サプリメントによる健康被害では死亡例も報告されているが、小林製薬の説明によれば、製品摂取と死亡との因果関係が明確に確認された症例は現時点ではなく、1件が現在も調査中とされている(2月19日時点)。因果関係が認められていない理由については、次回取り上げる予定だ。
 これまでのシリーズでは、自主回収の判断やピークX問題、プベルル酸を巡る議論などを整理してきたが、今回は視点を変え、2024年3月に実施された「7日間反復投与試験」に焦点を当てた。

焦点となった7日間反復投与試験

 紅麹サプリによる健康被害が報告される中、小林製薬は紅麹サプリメントについて7日間反復投与試験を実施した。この試験結果は、自治体による製品の自主回収命令の根拠の1つとして説明されてきた。当時の報道でも主に強調されていたのは腎毒性の可能性だった。
 しかしその後の議論の中で、胃への影響、いわゆる胃毒性の問題が浮上した。この点が議論されたのが消費者庁で行われた検討会である。

胃毒性を巡る説明の変遷

 2025年9月4日の会合では、プベルル酸に関する調査の進捗として、28日間ラット試験の実施が新たに公表された。その際、7日間ラット試験について胃毒性の所見が追記され、委員からは「7日間試験では胃への影響も確認されている」との趣旨の指摘が出された。すなわち、この試験では腎臓だけでなく消化器系への影響も観察されていた可能性があるとされる。
 ただし、この点は初期段階ではほとんど説明されて来なかった。厚生労働省はこの点について、「手元に正確な資料はないが、メインが腎毒性ということで報告が上がってきていると認識している」とし、動物試験で見られた胃毒性については粘膜への刺激性を示唆する所見ではないかと考察していると説明した。また、毒性試験の報告では回復性も確認されているとしたが、ヒトで胃毒性が見られていたかについては正確な情報を持ち合わせていないと述べている。

 一方、同年9月9日の取材で厚労省の幹部は記者に対し、2024年9月18日の公表について「胃毒性も入れておけばよかった」との趣旨の発言をしている。これは説明の方法について手続き上の問題があった可能性を示唆するものであるとしている。

試験データ共有の検証課題

 問題となるのは、7日間試験の内容がどこまで共有されていたのか、またどの情報が社会に説明されたのかという点である。この点は必ずしも十分に整理されていない。
 重要なのは、単純に情報を隠していたかどうかという問題ではなく、情報整理と説明のプロセスにある。すなわち、どの試験結果が、どのタイミングで、誰の判断により、どこまで公開されたのかという点を明らかにしなければならない。

 2024年9月18日に開催された「紅麹関連製品に係る事案の健康被害情報への対応に関するワーキンググループ」では、4人の専門家が健康被害の原因について議論を行った。しかし、厚労省の証言によれば、この4人の専門家は7日間試験のすべてのデータを事前に確認していなかったとされる。
 それにもかかわらず、参加していたある専門家は「プベルル酸が悪であるということはこれで明らかになった」と厚労省による発表を「クリアな結果」と評価している。一方で、前述の厚労省幹部は取材に対し、「上乗せ相互作用の可能性は否定しない」と述べているのである。

 行政判断の透明性について、そのデータがどのように評価されたのかを後から検証できるかたちで示すことは重要だ。

 紅麹サプリ事件については、行政判断、科学研究、企業の説明のそれぞれを冷静に検証していく段階に入っている。
 次回は、食中毒事件において、「食中毒死の原因がなぜ公表されないのか」、自治体への取材を通して明らかになった疑問をYouTubeで語る。これは小林製薬の紅麹サプリメントが引き起こした健康被害にも通じる重要な問題である。

【田代 宏】

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