厚労省、食品衛生監視部会の議事録公表 HACCP運用課題と食中毒増加の実態が明らかに
厚生労働省は4月30日、厚生科学審議会食品衛生監視部会(第8回・第9回)の議事録を公表した。食品衛生法改正に伴うHACCP(ハサップ)導入の実態や、直近の食中毒発生状況について議論が行われており、制度の運用課題と現場のリスク構造が改めて浮き彫りとなっている。
同部会では、平成30年(2018年)の食品衛生法改正を受けて制度化されたHACCPに沿った衛生管理について、その導入状況と課題が議題となった。議事録によれば、飲食店や製造・加工業などでの導入率は8~9割に達している一方、小規模事業者を中心に運用面での課題が残されているとされた。
特に指摘が集中したのは人材面だ。業界団体からのヒアリングでは、「社内に専門知識を持つ人材がいない」、「手引書を理解・活用できない」といった声が多く挙がり、制度が形式的に導入されていても、実効的な運用に至っていない実態が報告された。現場では日常業務の多忙さから教育や改善に十分な時間を割けないことも課題とされており、HACCPの定着には人材育成が不可欠であるとの認識が共有された。
第9回では令和7年(2025年)の食中毒発生状況が報告され、患者数が前年比約1.7倍に増加したことが示された。増加の主因はノロウイルスであり、弁当などを介した大規模事案では患者数が2,000人を超えるケースも確認された。
議事録では、ノロウイルスについて、感染した従業員から食品を介して広がる構造が指摘されている。不顕性感染の存在により、本人が自覚しないまま作業に従事するケースも多く、制度による管理のみでは完全に防止できない側面があるとされた。また、カンピロバクターやアニサキスといった従来型の食中毒も引き続き多く発生しており、これら3類型で全体の大半を占める状況に変化はない。
さらに、自然毒による死亡例が依然として最多であることや、加熱不十分な食肉による腸管出血性大腸菌の事例が継続的に発生していることも報告された。これらについては、消費者の認識や行動がリスクに影響する側面が大きく、制度による規制だけでは対応が難しい課題とされている。
今回公表された議事録からは、HACCPの制度としての整備が進む一方で、運用を支える人材や体制の不足、さらには制度では制御しきれないリスクの存在が明確に示された格好だ。
第8回食品衛生監視部会の議事録はこちら
第9回食品衛生監視部会の議事録はこちら
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