フレイルやロコモを予防するには骨の健康維持・増進も求められる。身体活動にかかわる関節や筋肉といった運動器を支えるのが骨であって、骨の弱体化などによって生じる骨折・転倒は、介護が必要となった原因の上位に入る。骨の弱体化を防止する働きが報告されている栄養素や機能性成分としては、カルシウムやビタミンK、ビタミンDをはじめ大豆イソフラボン、β-クリプトキサンチンなどがある。ここでは、骨領域の機能性表示食品として届出件数が最も多い機能性関与成分、大豆イソフラボンを取り上げる。

トクホから機能性表示食品まで横断する関与成分

　骨からのカルシウム溶出につながる破骨細胞による骨の吸収を抑制したり、骨芽細胞による新しい骨の形成を促進したり働きによって、骨の維持に寄与すると考えられている大豆イソフラボンは、特定保健用食品（トクホ）の関与成分でもある。

　「骨のカルシウムの維持に役立つ大豆イソフラボンを含んでいるので、骨の健康が気になる方に適しています」などといった表示が許可されている。有識者の審査を経て、国から許可された表示であり、大豆イソフラボンの摂取と骨の健康維持の関係は、一定の信頼が置ける科学的根拠に裏付けられていると言える。

　それもあって、企業（届出者）の責任で表示を行う機能性表示食品においても、大豆イソフラボンの骨に対する有効性を訴求する届出が積み上がることになった。その数、現在までに約100件。

　これまでに届け出されたヘルスクレームを見ると、研究レビュー（SR）に基づき、「骨の成分の維持に役立つ」や「健常な中高年女性の加齢に伴い過剰となる骨吸収（古い骨を壊すはたらき）をおだやかにし、骨の健康維持をサポートする」といった機能のある旨が届け出されている。

　体感できないことが弱みだと指摘されて久しい骨の健康をうたう健康食品だが、需要は堅調のようだ。「機能性表示食品に限らず、引き合いが増えている。ここ数年は、年間販売量が前年を超える状況が続いている」。

　そう語るのは、大豆イソフラボンの製造販売で国内最大手フジッコ㈱（神戸市中央区）の素材事業部。機能性表示食品の届出サポートも手がけており、最近では、筋力・筋肉や関節に対する有効性が報告されている他の関与成分と、大豆イソフラボンを組み合わせたサプリメントなどの届出が増えているという。

「関節＋骨」や「骨＋筋力」など複合機能表示にひろがり

　機能性表示食品制度の施行と機能性関与成分の充実化によって、「骨＋筋力・筋肉」や「骨＋関節」のほか、「骨＋歩行能力」などといった、複合的な機能を消費者に正面から伝えられるようになった。そのため今は、フレイルやロコモの予防貢献も念頭に置いた機能性表示食品の開発が以前よりも行いやすくなったといえる。そうした環境を背景に、身体活動を支える骨の健康で定番素材である大豆イソフラボンへの関心が改めて高まり、引き合いの増加につながっていそう。加えて、フェムテック・フェムケアに対する関心の高まりも影響しているとみられる。

　骨を維持するという大豆イソフラボンの機能性は、特に女性に多い骨粗しょう症の予防への寄与が期待される。その上で、大豆イソフラボンは、更年期症状の軽減にも有用性を示すことが報告されている。フジッコでは、大豆イソフラボンに関する今後の研究開発に向けた展望をこう語る。

　「フェムケアにつながる機能性表示を行えないか検討したいと考えている。骨の健康に関しても、最近では、骨量（骨密度）だけではなく骨質を維持する必要性が指摘されている。骨質に対する有効性も今度検討していく必要がある」（同）。

　最後に、大豆イソフラボンとオーラルフレイルの関係について触れておきたい。トクホとして次の表示が許可されているのはご存知だろうか。

　「本品はカルシウムと大豆イソフラボンアグリコンを含み、歯を支えるハグキの健康を保つ食品です。更年期以降の女性の方に適しています」（申請者：サンスター㈱）。ハグキを構成する「歯槽骨（しそうこつ）」と呼ばれる骨の維持にも大豆イソフラボンは有効であるということだ。

【石川太郎】

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