東大贈収賄事件、吉崎被告に有罪判決 社会連携講座の構造問題にも言及、追徴約197万円命令
東京大学医学系研究科の社会連携講座を巡る贈収賄事件で、収賄罪に問われた東京大学の吉崎歩元准教授に対する判決公判が22日、東京地方裁判所で開かれた。裁判所は、吉崎被告に対し、懲役1年、執行猶予2年の判決を言い渡した。また、日本化粧品協会から受けた遊興接待費196万7,433円の追徴を命じた。
同事件は、東京大学医学系研究科に設置された「臨床カンナビノイド学講座」を巡り、一般社団法人日本化粧品協会(JCA)側から、高級飲食店や銀座クラブ、ソープランドなどで接待を受けたとされる事件。吉崎被告は、東京大学の佐藤伸一元教授とともに収賄側として起訴されていた。
判決で裁判所は、吉崎被告が本件講座の設置、運営、研究内容の選定・実施などに関与する立場にあり、日本化粧品協会側から「有利かつ便宜な取り計らい」に対する謝礼および今後の便宜供与への期待という趣旨を認識しながら、計30回にわたり遊興接待を受けていたと認定した。接待総額は196万7,433円相当とされた。
量刑理由において裁判所は、吉崎被告が講座設置前後の1年余りにわたって、贈賄側の契約業者から30回の遊興接待の供与を受けたと指摘。当初は業者負担を気遣う様子を見せていたものの、次第に契約業者と密に接するようになった中で、常習的に犯行に及んだと述べた。
さらに接待内容について、いわゆるキャバクラやソープランドにおけるサービスを受けるという性的嗜好の強いものであり、「職務の廉潔性を害したことは明らか」と厳しく指摘した。
一方で裁判所は、社会連携講座制度そのものについても踏み込み、東京大学の看板を営利目的で利用しようと画策する企業の思惑に悪用されかねないシステムという側面があり、それを公益的な研究のために用いるには、講座を統括する担当教授のモラルに大きく依存する構造にあったとした。
また、吉崎被告と佐藤元教授との関係性について、被告人は社会連携講座長として研究面などで講座をけん引してまとめる立場であったとはいえ、同講座の事務面および接待の段取りなど広範で連絡調整を図っていたとして、賄賂の問題性を把握し距離をコントロールする余地があった。また、担当教授が接待に応じられない場面でも、なお被告人だけで契約業者から接待に応じているとし、被告人自身も積極的に接待を受けたいという意向があったと認定した。
その上で裁判長は、「被告人の刑事責任を軽視することはできない」としながらも、本件が広く報道されたことで再び公職に就く可能性が低くなっていることや、犯行を認め反省していることなどを考慮し、比較的短期間の執行猶予期間を定め、社会内で更生を図るのが相当と判断した。
これまでの公判では、JCA側の引地功一代表理事が、「研究継続や講座維持のため、接待を断れない構造があった」と供述。性接待を含む接待実態や、研究費・研究機器購入などを巡る証言も注目を集めていた。
現在、民事訴訟では、日本化粧品協会側が、接待交際や研究機器購入などを巡り、東京大学側に対する使用者責任や損害賠償責任を主張しており、裁判所主導による争点整理が進められている。21日には5回目の準備手続が行われた。
【田代 宏】
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