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東大贈収賄事件、贈賄側が記者会見 接待拡大と認識の齟齬、制度課題が浮上

 東京大学医学部を巡る贈収賄事件で、贈賄側の被告人が初公判後に記者会見を開き、事件の経緯と自身の認識を説明した。共同研究を契機に接触した大学側との関係は、講座設置を経て接待へと発展し、その内容は次第にエスカレートしたとされる。契約上の支払い義務や金銭の性質を巡っては大学側との認識に相違があると主張。内部通報対応や制度運用の在り方を含め、産学連携の構造的課題が改めて浮き彫りとなった。

初公判後記者会見の目的を説明

 4月23日午後4時、東京地方裁判所で贈収賄事件の初公判が行われた後、贈賄側の被告人である(一社)日本化粧品協会(JCA)の引地功一代表理事は、代理人の高安聡弁護士(ノースブルー総合法律事務所)とともに記者会見を開いた。冒頭、高安弁護士は同会見の目的について、裁判での検察・弁護側の主張対立で分かりにくかった経緯の説明と、従前の会見制限により(これまで話すことができなかった内容の開示および質疑の場を設けたと説明した。

共同研究を起点とした東大接近

 まず、事件の発端について代理人が説明した。カンナビジオール(CBD)を化粧品に応用する研究を進めてきた中で、医学的エビデンスの確立が不可欠だったと説明した。そのため、社会的信頼性の高い研究成果を得ることを目的に、東京大学医学部との共同研究を目指したという。

 社会連携講座の設置に向けた交渉の中で、東京大学の佐藤伸一元教授は制度上の審査に関与する立場にあり、その影響力の大きさを強く認識した。講座設置に至る過程では、申請内容の修正や調整が重ねられ、最終的に契約が締結された。

接待の常態化と経済負担の拡大

 講座設置の前後から会食や接待が始まり、その後、継続的に行われることとなった。会見では銀座界隈の複数の飲食店の名前が述べられた。接待はエスカレートし、クラブからソープランドにおける性接待にまで発展した。
 これらの費用を引地代表自身が負担していたとした理由として、カンナビノイド学講座の維持とCBDの人間の皮膚に対する影響に関する研究の継続に対する配慮があったと述べた。接待の頻度や内容は次第に拡大し、結果として大きな経済的負担となっていった。

 さらに会見では、2024年8月30日の会食の場において、金銭に関する強い要求と受け止められる発言が佐藤伸一元教授からあり、引地代表は大きなショックを受け、関係が破綻するに至った。この出来事を契機に、高安弁護士が相談を受けることとなり、大学への通報、警察への申告に至った。

認識の相違と制度運用への課題

 引地代表は、東京大学が1月28日に行った記者会見で、「協会側からは100万円しか払われていない」と主張したことに対する反論を行った。

 同氏は、東京大学側の説明と自身の認識に相違があると主張した。社会連携講座に関する契約上の支払い義務については履行しているとした上で、研究関連費用や接待費などとして支出した金額は別の性質のものであると説明した。
 具体的には、「契約上、JCAの支払い義務は年間50万円であり、2年分の100万円は支払い済み。未払いは別団体の分。東大側は増額後の金額を前提に説明している可能性があるが、民事訴訟では増額契約の成立は主張されておらず、説明に齟齬がある」(高安弁護士)としている。

 また、大学のコンプライアンス窓口への相談を試みたものの、その後の対応が十分でなかったとの認識を述べた。これについて代理人は、内部通報体制の実効性に課題があった可能性を指摘した。

 引地代表は、自らの行為について違法性を認識しているとしつつも、研究の継続や関係維持を優先せざるを得ない状況にあったと説明。同様の状況に置かれた場合には、早期に専門家へ相談することの重要性を強調した。

 続いて質疑が行われた。「同様の状況に陥らないための教訓」、「大学への通報と対応」「対応策・再発防止について」、「支出額と資金調達」、「被告側の見返りの有無」、「同日行われた吉崎被告の供述について」、「民事訴訟の状況」、「東大教授一般に対する評価」――など質疑は30分に及んだ。

【田代 宏】

(冒頭の写真:引地被告(左)と高安弁護士)

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