米FDAの新・NDIガイダンス解説 【GNG武田猛氏寄稿】原材料の安全性、行政はどこまで支えるのか(前編)
米国のダイエタリーサプリメント制度に関わる新たな動きがあった。米FDA(食品医薬品局)は10月19日、新規ダイエタリー成分(NDI)の届出で求める同一性や、求められる安全性の根拠に関する最終ガイダンスを公表した。どんな内容になっているのだろうか。㈱グローバルニュートリショングループ代表の武田猛氏が緊急に執筆した解説論考を前後編の2回に分けて掲載する。(編集部)
【はじめに】
2026年10月19日、米国食品医薬品局(FDA)は、新規ダイエタリー成分(New Dietary Ingredient:NDI)のIdentity(同一性・特性)とSafety(安全性)に関するFinal Guidanceを公表した。正式名称は「New Dietary Ingredient (NDI) Notifications and Related Issues; Identity and Safety Information About the NDI: Guidance for Industry」である。
米国では、原則として1994年10月15日以前に米国内で販売されていなかったダイエタリー成分をNDIと定義している。NDIを含むダイエタリーサプリメントについては、法律上の例外に該当しない限り、州際取引への導入の少なくとも75日前にFDAへNew Dietary Ingredient Notification(NDIN)を提出し、安全性が合理的に期待できると判断した根拠を示す必要がある。
FDAは2011年にNDINに関するDraft Guidanceを公表し、2016年にRevised Draft Guidanceを公表した。その後、2024年には通知手続きと期間に関する部分をFinal化し、今回、IdentityとSafetyに関する部分をFinal化した。今回の文書は、2016年改訂案のSections VI.A(同一性に関する情報)、VI.B(使用歴またはその他の安全性根拠)、VI.C(安全性に関する結論の根拠)に相当する内容を対象としている。
今回のFinal Guidanceでは、原料の特定、製造方法、組成、規格、分析方法、食経験、安全性試験などに加え、安全係数や安全域の計算、試験結果の解釈についても詳細な推奨事項が示されている。
本稿では、FDAが示した具体的な内容を紹介したうえで、企業による安全性の科学的立証に行政がどのように関与しているのかを考察する。さらに、日本の原材料安全性自主点検指針との比較を通じて、日米の共通点と相違点を整理する。
【1.Identity ― 原料を特定するためにFDAが求める情報】
FDAは、NDIのIdentityに関する情報として、原料の基原、製造方法、化学的・物理的特性、成分組成、規格、分析方法などをNDINに含めることを推奨している。
Identityに関する情報は、NDIそのものの特性を明らかにするとともに、安全性評価に用いる既存のデータが対象原料に適用できるかを判断するためにも使用される。
原料の種類に応じた推奨事項
FDAは、原料の種類や特性に応じて、提供すべき情報を具体的に説明している。
植物由来原料では、学名、使用部位、原料の入手・確認方法、加工工程などが対象となる。抽出物については、抽出溶媒、抽出条件、濃縮の程度、成分組成、指標成分などに関する情報が推奨されている。
微生物由来原料では、菌種・菌株の特定、由来、分離・同定方法、参照菌株との関係などが重要となる。微生物の特性に応じて、毒素産生性など安全性に関連する情報も評価対象となる。
また、製造工程に関する情報として、原材料、使用する溶媒や加工助剤、工程中の化学的変化、精製・濃縮方法などを説明することが推奨されている。
品質に関しては、規格とその設定根拠、分析方法、成分組成のばらつき、不純物や汚染物質の管理などが取り上げられている。原料の安定性に関する情報も、品質の維持を説明するうえで重要となる。
安全性試験に用いた原料との比較
FDAは、既存の安全性試験データをNDINに利用する場合、試験に用いられた原料と通知対象のNDIとの関係を説明することを推奨している。
両者の製造方法や成分組成などが異なる場合には、その違いを明らかにし、安全性データを適用できる科学的根拠を示す必要がある。
例えば、同じ植物に由来する抽出物であっても、使用部位、抽出溶媒、濃縮条件などによって組成が異なる場合がある。安全性評価では、こうした差異が試験結果の適用可能性に影響するかを検討する。
FDAのIdentityに関する推奨事項は、原料の特定、品質の把握、安全性データとの対応関係を一体として説明する構成となっている。
【2.History of Use ― FDAは食経験をどう評価するのか】
FDAは、History of Safe Use(安全な使用経験)をNDIの安全性評価に利用できるEvidenceの1つとして位置付けている。
ガイダンスでは、食経験を評価する際に、過去の摂取量、摂取頻度、摂取期間、摂取した集団、原料の形態などを確認することを推奨している。
少なくとも25年間の広範な使用経験
FDAは、食経験だけを根拠として安全性を説明する場合、一般に、少なくとも25年間にわたり多数の人々に広く摂取されてきた使用経験を推奨している。ただし、25年未満の使用経験についても、その期間のデータが十分かつ信頼できるものであることを追加情報によって説明できる場合がある。
だが、25年間という期間は法令で定められた一律の要件ではない。より短い使用経験であっても、その他の安全性情報と組み合わせて評価できる場合がある。
また、FDAは、過去に安全に摂取されていた条件と、NDIの提案する使用条件を比較することを重視している。
例えば、過去の摂取量と同等以下の量を、同等以下の頻度や期間で摂取する場合には、食経験に関する情報によって安全性を裏づけられる場合がある。
一方、過去の摂取量を超える場合や、間欠的な摂取から長期間の毎日摂取へ変更する場合には、その違いを説明する追加的な安全性情報が推奨されている。
FDAは、食経験の有無だけでなく、その使用条件と提案する使用条件との関係を評価する方法を示している。
【3.Other Evidence of Safety ― FDAが推奨する安全性試験】
食経験だけでは十分な安全性の根拠が得られない場合、FDAはOther Evidence of Safety(その他の安全性根拠)の提出を推奨している。
ガイダンスでは、動物試験や人を対象とした試験に加え、動物実験の代替・削減・改善に資するNAMs(New Approach Methodologies:新たな評価手法)についても具体的に説明している。NAMsには、in vitro試験やin silicoモデリングなどが含まれ、FDAは、科学的妥当性と評価目的への適合性を確認したうえで、安全性評価への活用を推奨している。
遺伝毒性試験
FDAは、遺伝毒性に関する評価方法として、細菌を用いる復帰突然変異試験などを取り上げている。
遺伝毒性に関する懸念が認められた場合には、得られた結果を評価し、必要に応じて追加的な情報を収集することが推奨されている。
反復投与毒性試験
動物を用いた反復投与毒性試験では、投与量、投与期間、観察項目、試験動物の種類などが評価に影響する。
FDAは、90日間の反復投与毒性試験などを取り上げ、試験期間と人における使用期間の違い、げっ歯類と非げっ歯類のデータの利用などについて説明している。
生殖・発生毒性と人を対象とした試験
生殖・発生毒性については、原料の特性、対象となる使用者、既存の安全性情報などを踏まえて、必要な評価を判断する考え方が示されている。
人を対象とした試験では、対象集団、摂取量、摂取期間、安全性に関する評価項目、有害事象などの情報が重要となる。
FDAは、有効性を主要な目的として実施された臨床試験について、安全性に関する評価項目が十分に収集されていなければ、安全性の結論を裏づける情報として限界があることも説明している。
試験の組み合わせは一律ではない
今回のFinal Guidanceには、食経験と提案する使用条件の関係に応じて、安全性試験の種類を整理したStandard Safety Testing Table(標準安全性試験表)が付録Aに掲載されている。
ただし、FDAは、表に記載された試験をすべて実施することを求めているわけではない。既存データの内容、原料の特性、使用条件、安全性に関する懸念などを踏まえ、必要な試験を判断することを推奨している。
2016年改訂案との比較では、試験表の構成にも変更があり、一部の長期動物試験や生殖毒性試験に関する推奨が見直されている。今回のFinal Guidanceでは、既存データや代替的な評価方法の活用についても説明されている。
なお、Standard Safety Testing Tableの日本語版を、以下に別添資料として掲載する。

(後編につづく)
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