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科学が照らす「腸活」の未来図 研究者インタビュー:健康長寿社会を実現する、産学連携の挑戦

 空前の腸活ブームは今、次なる進化のステージへと向かっている。生体免疫栄養学の権威・内藤裕二氏(=写真、京都府立医科大学教授)は、AIや最新の分析技術が「食と腸内環境」の相関を解き明かす未来に大きな期待を寄せている。エビデンスに基づく科学的誠実さを追求し、「個体差」という壁を越えるポストバイオティクス研究が進めば、腸活は「お腹の健康」を超え、真の健康長寿を支える社会基盤となることが期待される。未来を拓くパートナーシップの可能性などについて話を聞いた。

日本の表示システムが抱えるジレンマ
――専門である生体免疫栄養学の知見から、現在の腸活市場をどのように捉えていますか。は「エビデンスの有無による市場の二極化」についても見解をお願いします。
内藤 「二極化」については、現在の日本の表示システムが抱える構造的な欠点と言わざるを得ません。今の環境下では、一般の消費者が、多額の費用と時間をかけて実施した二重盲検試験等の臨床データに基づいた信頼性の高い製品と、そうでない製品を判別することは極めて困難です。
 私たち専門家から見れば、その両者の間には科学的な厚みに雲泥の差があることは明白です。しかし、スーパーの棚に並ぶヨーグルト1つとっても、消費者が製品間の科学的な違いや、その製品が持つ「機能の正当性」を正しく認識する術はほとんどありません。現状では、機能性表示食品という制度の下で真摯に研究を重ねた製品も、マーケティング戦略のみで売ろうとする製品も、同じ土俵で扱われてしまっています。昔ながらの知見に基づいた優良な製品がある一方で、「お肌に良い」といった成分を後から添加し、あたかも特別な効果があるかのように演出して販売する手法も見受けられます。こうした状況は、一企業だけの努力で解決できるものではなく、制度の根幹から見直していく必要があると感じています。

――「腸活=乳酸菌摂取」という過大解釈に関連して、消費者への情報伝達について伺わせてください。「腸活と言えば、とにかく乳酸菌やビフィズス菌を取れば効果がある」といった、極端な理解や過大解釈が市場では散見されます。この状況をどうお考えでしょうか。
内藤 発酵食品として長い歴史を持ち、長寿の知恵として親しまれてきたヨーグルトそのものを否定するつもりは毛頭ありません。しかし、日本では「腸活=便秘や下痢の改善」というイメージが先行して市場が形成されてしまいました。これによって、本来食を通じて目指すべき「健康長寿」という大きな目的が、一般の方々に正しく伝わっていないのが現状ではないでしょうか。
 本来、腸活を通じて全身の血管や脳、肌などに良い影響があることを訴求したいところですが、日本の食品レギュレーションでは、その効果効能について厳しく制限されています。企業側としても、健康食品という枠組みの中でいかに価値を伝えるか、非常に苦しい立場にあることは理解できます。しかし、食品を薬と同じような位置付けで見てきた歴史自体、今となっては適切ではなかったのかもしれません。研究の現場から言わせてもらえば、多様な食事を取る人間において、特定の素材だけで劇的に健康状態が改善すると考えるのは少々無謀です。人の研究の難しさを、私たちは日々痛感しています。

(『Wellness Monthly Report』2026年7月号より転載。)

【プロフィール】
内藤裕二(ないとうゆうじ)
京都府立医科大学大学院医学研究科 生体免疫栄養学講座 教授
専門は内科学、抗加齢医学、消化器病学。1983年京都府立医科大学卒業、2001年米国ルイジアナ州立大学医学部分子細胞生理学教室客員教授として渡米。帰国後は、2008年京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学准教授、2015年本学附属病院内視鏡・超音波診療部部長、2021年から現職。農林水産省農林水産技術会議委員、若狭おばま御食国大使を兼務している。著書に、すべての臨床医が知っておきたい腸内細菌叢〜基本知識から疾患研究、治療まで(羊土社 東京 2021年)、健康の土台をつくる腸内細菌の科学(日経BP 東京 2024年)など多数。



【聞き手・文:藤田 勇一】



(続きをお読みいただけるのはWNG会員のみです。残り約3,119文字。会員申込はこちら。全文の閲覧は「会員ページ」の「月刊誌閲覧」内「Wellness Monthly Report」2026年7月号(第97号)特集「拡大続く腸活市場~見えてきた課題と今後の展望」から)

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