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食品基準行政の消費者庁移管、業界への影響は?(後) 「業界抱える課題背景、制度がないことに尽きる」

 厚生労働省が所管する食品衛生基準行政が2024年度にも消費者庁へ移管される。感染症対策を強化したい政府方針が背景にある。移管がサプリメント・健康食品業界に及ぼす影響を業界関係者はどう予測しているのか。(一社)日本健康食品規格協会(JIHFS)の池田秀子理事長と、(公財)日本健康・栄養食品協会健康食品部の増山明弘部長に意見交換してもらった。結果、話は大きく膨らんでいった。(聞き手:田代宏)

――業界内でリーダーシップを取ることのできる団体・事業者が必要だと言われています。

増山 この業界は、登場人物、役割が多く、カテゴリーが広すぎるのもまとめ切れない要因だと思います。原材料、受託製造、販売と事業者が別々で、それぞれに大手と言われる企業が存在します。つまり、例えば化粧品業界のように、全てをカバーできる大手がいないということです。各カテゴリーにはそれぞれ大手企業が存在しますが、各社、それぞれのカテゴリーでの立場・役割が違いますので、どこか1社が全てをまとめようにもまとまりません。

 また、最終商品形態が、錠剤・カプセルであったり、ドリンクであったり一般食品であったりとさまざまですから、各分野でのリーダーシップ企業はありますが、全てというのは難しいと思います。いわゆる業界大手も、主要事業は別事業であることが多く、健康食品を本業とした、全ジャンルをカバーした大手企業はないのではと考えます。

池田 法制度が無いということに尽きると思います。医薬品も化粧品も人類の歴史と共にあって、老舗と言われる企業など、長い歴史の中で企業が作られてきました。それに対して、サプリメントは比較的新しい産業ですから、さまざまな事業者が参加してそれぞれの個性によって市場を開拓しています。米国や欧州を見ると、法制度を拠り所として大手企業が参入し、例えば米国では大手企業が多いCRNが前面に立ち政府などとの交渉でもリーダーシップをとっています。日本にはその制度がないため、そのような分野に入ることを躊躇する大手企業の慎重さがあるのだと思います。機能性表示食品制度ができて、製薬企業の参入が増えてきました。このように、制度があればどこまでやれて、どこからが駄目なのかという線引きができますので、大手企業もまた製薬企業なども入りやすくなります。

 しかし、機能性表示食品制度ができたからと言って安心してはいられません。このままでは、製薬企業に足をすくわれる可能性があると思います。食品業界として、何をすべきなのかしっかり考えなければなりません。

増山 ジェネリック業界など、ビジネスチャンスを見る目も持っていますし、大手医薬品の市場からジェネリック医薬品の市場を作り上げたという実績もあります。いわゆる健康食品販売の大手と言われる企業も、アッという間に市場を持っていかれる可能性もあると思います。

池田 日本の大手食品メーカーには世界的なメーカーもあり、実際、サプリメントで実績がある企業もあります。そういった企業にはぜひともリーダーシップをとってもらいたいです。

増山 健康食品は食品なのですから日本の大手食品メーカーにはぜひとも健康食品のリーダー企業としても力を発揮してもらいたいものです。大手企業がリーダーシップを取ることで、例えば中小の製造会社や原料メーカーへの影響力を持つことができます。そうなると、業界全体に対して統一したメッセージを発信できるようになると思います。健康食品と言えども食品ですから、国内の食品大手企業には頑張ってもらいたいです。

池田 健康食品のGMPに関しては、これまで17年間、地道な活動を続けてきました、この活動がきちんと位置付けられるということが必要だと思います。機能性表示食品制度が始まり、ガイドラインの一文にGMPによる製造の推奨が入りましたが、まだまだ十分だとは言えません。やるべきことはクリアになりましたが、そこに到達しているかという実際の状況はまだまだです。GMPにしても何にしても、健康食品の品質管理の部分はあくまでもガイドラインに過ぎず法律ではありません。

増山 健康食品GMPについては、年々、事業者はレベルを上げてきています。OEM大手は特にそのレベルが非常に高くなりました。むしろ最近は、中小の工場もGMPに対する意識が出てきていると思いますので、そういう意味では、機能性表示食品制度が良いきっかけになったのではないでしょうか。

池田 米国は、ダイエタリーサプリメントに関してはcGMPが義務化されておりますので、製薬会社であろうと何であろうと、サプリメントを作る以上は、サプリメントcGMPを重視しなければなりません。しかし日本は、「うちは製薬会社だから、食品のGMPよりもはるかにレベルの高いGMPで製造している。健康食品GMPなんて取る必要がない」という声を聞くことがあります。しかしこれは間違いで、先日のカプセルの問題にもありましたが、食品が求める安全性と医薬品が求める安全性は明らかに違います。安全性については、食品の方がはるかに厳しいにもかかわらず、そういう点を製薬会社は時に理解していません。ですので、健康食品を作る以上は、健康食品GMPが必須であると考えます。

増山 製薬会社には、医薬品は、例えば多少胃が荒れても痛みなどの症状が治まればよいといったような、「多少何か副作用が起こっても効けば良い」という認識が根底にあります。他方、誤解を恐れずに言うとすれば、食品の場合は効果が薄くとも安全でなければ絶対にいけません。効果効能よりも安全性が最優先です。しかし、そういう発想が薄れてきています。なぜなら、「効果がなくても良い」だと商売になりませんし、効果があることを前提にトクホや機能性表示食品としてマーケティングを行っているからです。

 根本にある「安全は当たり前、効いたとしても安全に問題があってはダメ」という感覚が、食品業界の大手企業には当たり前としてありますが、新たに参入した医薬品や化粧品業界の人たちは、頭では理解していても、根本では少しズレているということではないかと思います。先日のカプセルの問題はまさにその最たる例だと思います。そういった食品における当たり前を、私たちがもっと発信していなければならないと思っています。

池田 リスクを適切に管理しなければなりません。それがきちんと制度化されて、原材料においてはこういうことを必ずやらなくてはならない、それが出発点になり、原材料のGMP、最終製品のGMPという具合に、仕組みが明確にならなければなりません。

――今後の展望について最後にお願いします。

増山 業界全体が健全に発展していくことが大切です。トクホにおける課題、機能性表示食品制度における課題、GMPにおける課題といろいろあり、1つひとつ対応していくわけですが、全体でつなげて考えたいと思っています。私たちの組織では、他団体・事業者とも連携しながら、リーダーシップをとっていきたいと思っています。特に消費者庁や厚労省など行政に対しては、法律についてなどさまざまな働きかけを行いたいと思います。健康食品全体を底上げする活動を行っていきます。

池田 GMPを17年間やってきましたが、ここまでが第1ステップで、これからが第2ステップだと思っています。食品としてどのような品質管理、どのようなGMPであるべきかということを常に考えながらやってきました。そこに機能性表示食品制度など新しいものが加わり、錠剤・カプセル状等の食品を対象にしたGMPはもう1つステップアップしなればならないと思っています。そのためには、エネルギーと覚悟が必要です。業界全体の合意がなければ踏み込めません。ここを目指そう、このレベルのGMPまでもって行こう、世界に打って出ようという覚悟・視点を共通認識として持たなければ、進んでいくことはできないと思います。

――ありがとうございました。

(了)

(文・構成:藤田勇一)

関連記事:食品基準行政の消費者庁移管、業界への影響は?(前) 「健康食品の法制度化に向かうと良い」

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JIHFS池田氏

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