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九大「紅麹」論文、原因特定を否定 今坂氏「成分差異解析が目的」

 九州大学の今坂智子講師らによる紅麹サプリ分析論文について、ウェルネスデイリーニュース編集部の質問に対し、今坂氏本人が書面で回答した。回答では、同論文の主目的は「原因物質の特定」ではなく、「汚染サンプルと非汚染サンプルの成分差異の解析」にあると説明。
 さらに、毒性や健康被害との直接的な因果関係については「評価することはできない」とし、プベルル酸そのものも「今回の研究対象とはなっていない」と明記した。

論文巡り分かれていた受け止め

 同論文を巡っては、これまで「単一原因説への再考を迫る研究」と受け止める見方がある一方で、「プベルル酸原因説を実証した研究ではないか」とする議論も一部で生じていた。
 これに対し、今坂氏は今回の回答で、論文の位置付けを極めて限定的に整理した格好だ。

 編集部は4月以降、同論文について継続的に検証記事を配信してきた。論文中では、健康被害が報告されたサンプルにおいて複数ピーク(a〜e)の増加が確認されていた一方、それらの物質特定には至っておらず、「異常な成分の存在」を示した段階にとどまる点を指摘してきた。
 また、厚生労働省および国立医薬品食品衛生研究所(NIHS)が実施した動物試験では、製剤そのものに相当するBK2の毒性が、プベルル酸単体より強く現れていたことから、単一物質のみでは説明し切れない可能性についても報じてきた。

原因特定ではなく差異解析

 こうした中、編集部は今坂氏に対し、「今回の論文は、『プベルル酸が原因物質であること』を実証することを目的とした研究でしょうか。それとも、原因候補を含む成分差異の解析という位置付けでしょうか」と質問。これに対し今坂氏は、「後者の『原因候補を含む成分差異の解析』」であると回答した。
 
 一方で、「単一原因説を否定する研究」との見方については、「当該論文は2つの試料に含まれる物質の差異を調べたものですが、これらの物質が原因物質であるか否かを明らかにするには至っていません」と回答した。
 つまり、論文は「プベルル酸が原因であること」を実証したものでも、「プベルル酸以外が原因であること」を証明したものでもなく、あくまで「汚染サンプルと非汚染サンプルの差異解析」という中間段階の研究として位置付けられることになる。
 特に注目されるのは、プベルル酸に対する整理だ。

プベルル酸は「研究対象外」

 編集部の質問に対し、今坂氏は「ロバスタチンやプベルル酸は、今回の研究対象とはなっておりません」と回答。
 この点を巡っては、一部で「プベルル酸が原因物質であることを前提とした研究ではないか」との見方も出ていた。しかし、今回の回答で今坂氏は、プベルル酸自体は「今回の研究対象とはなっていない」と明示しており、論文の位置付けについても、「原因候補を含む成分差異の解析」と説明している。少なくとも著者自身は、本研究を「プベルル酸原因説」を実証する研究として位置付けていないことになる。これは、同論文が「プベルル酸検証研究」として実施されたものではなく、網羅的な成分比較解析として行われたことを意味する。
 
 また、毒性との関係についても、「毒性や健康被害との直接的な因果関係を評価することはできないと思う」と述べている。
 さらに、今回検出された複数ピーク( a 〜 e )については、「論文に記載されていることが全て」であり、「化学構造や候補物質の特定に関するデータは手元にない」と説明。追加研究についても「現在のところ予定はない」としている。

 また、サンプルの出所についても質問した。
 編集部は、「汚染サンプル」が、実際に健康被害事例と関連するとされた製品由来のものなのか、あるいは汚染ロットとして整理された未開封製品などを用いたものなのかについて確認を求めた。
 これに対し今坂氏は、論文中の“Contaminated and noncontaminated samples of the supplement were supplied from people involved in this incident”との記載を引用した上で、「これが開示できる全てでございます」と回答した。
 すなわち、試料は「本件関係者から提供されたサプリメント」としている一方、それ以上の具体的な試料属性については、新たな説明は行われなかった。

残る論点「単一物質で説明困難」

 今回の回答から浮かび上がるのは、九州大学論文の射程が、従来一部で受け止められていたよりも限定的であるという点だ。

 同論文は、健康被害サンプルに複数の成分差異が存在する可能性を示した一方で、それらが実際に毒性原因であるかについては踏み込んでいない。また、プベルル酸自体の検証を目的とした研究でもない。しかし、「単一物質だけでは説明し切れない可能性」を示唆する分析結果そのものが否定されたわけでもない。

 毒性学の専門家である鈴木勝士・日本獣医生命科学大学名誉教授は、編集部動画インタビューの中で、「毒性の存在」と「原因物質の同定」は本来区別されるべき問題であると指摘している。今回の今坂氏の回答は、まさにその線引きを改めて明確にしたものと言えそうだ。

【田代 宏】

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