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CBD製品中THC残留濃度値を規定へ 大麻規制検討小委員会、法改正の方向性まとめる

大麻めぐる制度、大幅に見直しへ

 厚生労働省「大麻規制検討小委員会」は29日に第4回会合を開き、大麻取締法のほか、麻薬及び向精神薬取締法の改正に向けた基本的な方向性を取りまとめ、5月から続けてきた議論を終えた。合田幸広・国立医薬品食品衛生研究所長が委員長を務めた。

 方向性には、大麻由来医薬品の輸入・製造・施用を可能とすること、大麻の使用禁止(使用罪)を法律上明確にすること、大麻規制の基本的な体系を従来の部位規制から成分規制に改めること、CBD製品など大麻由来製品に含まれるTHCの残留濃度値を法令において設定し明確にすること、大麻の栽培について、CBD製品向け原材料の生産など、新たな産業利用を念頭に置いた栽培目的を追加すること──などが盛り込まれた。

 取りまとめを受け、厚労省は大麻取締法などの改正法案を策定し、来年の通常国会への提出を目指す。技術的な規則や要件など法制度の細部に関する議論は今後となる。細部は、改正法案の成立後、省令や告示などで示される見通し。法改正の方向性には、食品衛生、農林水産、教育など、薬物関連法規以外の枠組みで検討が必要な項目が多く含まれており、調整に時間を要する可能性もありそうだ。

小委員会は、21年6月に報告書を取りまとめた厚労省「大麻等の薬物対策のあり方検討会」の後を受けるかたちで今年5月に議論を開始。事務局の厚労省監視指導・麻薬対策課は、初回会合でさっそく論点を提示していた。論点は、「医療ニーズへの対応」、「薬物乱用への対応」の他、前の「あり方検討会」では議論の俎上に載っていなかった「大麻の適切な利用の推進」、「適切な栽培および管理の徹底」を含めた4つ。論点に沿って議論が進められ、都合3回の会合で取りまとめに至った。4つの論点のうち特に活発な議論があったのは「薬物乱用への対応」で、強く反対する声も上がっていた大麻「使用罪」の導入に時間が割かれた。

 論点のうち「大麻の適切な利用の推進」では、神事を始めとする伝統的な利用方法以外に、サプリメント・健康食品などとしてすでに流通が進んでいるCBDオイルなど大麻由来製品についても、「新たな産業利用を進め、健全な市場形成を図っていく基盤を構築していく必要があるのではないか」とする前向きな論点を示し、そのための方策として、「THC含有量に係わる濃度基準の設定を検討していく必要がある」とされた。

 また、栽培者が全国で27人まで激減している大麻の栽培や管理に関する論点では、「低THC含有量の品種と高THC含有量の品種に関する規制が同一となっている点を見直す必要があるのではないか」とし、大麻栽培に関する規制を緩和する方向性が提示されていた。

「あり方検討会」の報告書が取りまとめられた後、産業用大麻やCBD製品を巡り政治の動きが活発化していた。CBD製品の健全な市場流通を目指す超党派議連が立ち上げられたり、伝統文化における産業用大麻の振興に向けた勉強会を自民党の有志議員が発足したりした。そして政府が今年6月閣議決定した「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針)には、「大麻に関する制度を見直し、大麻由来医薬品の利用等に向けた必要な環境整備を進める」とする方針が盛り込まれ、産業利用の推進を念頭に置いた大麻制度の見直しは政治案件になっていた。

CBD製品の品質担保、事業者責任を原則に

 今回、小委員会が取りまとめた方向性は、サプリメント・健康食品などとして流通されるCBD製品の今後のあり方にも大きな影響を及ぼすことになる。論点の1つとなった「大麻の適切な利用の推進」の枠組みにおいて、「見直しの考え方・方向性」として、「大麻に係る部位規制から成分規制へと原則を変更することに伴い、法令上、大麻由来製品に含まれるTHCの残留限度値を設定、明確化していくべき」だとされ、THCが一定量残留することを容認する方向性が示されたためだ。

 その上で、サプリメントなどのCBD製品は「医薬品とは異なる」ことを踏まえ、THC残留限度値を超えていないかどうかの担保は「製造販売等を行う事業者の責任の下」で行うことを基本とする方向性も示された。事業者自らで製品品質を担保するために「必要な試験方法も統一的に示すべき」だともされた。

 と同時に、「監視強化」も求められた。「残留する成分の特性上、『野放し』となることがないよう、買い上げ調査等を含め、行政による監視指導を行うべきである」とした上で、「THC残留限度値を超える製品は『麻薬』」に当たるとし、限度値を逸脱した製品は麻薬及び向精神薬取締法で規制していく方向性が示された。さらに、CBDは単純な加工で一部がTHCに変換するとの知見を踏まえ、そうした加工行為を無免許で行うことは「麻薬製造罪」に該当するとしつつ、「その取締りを徹底するなどの必要な対応を検討していくべき」とされている。

 また、大麻由来製品に含まれるTHCの残留限度値の設定については、「栽培する大麻草に係るTHC含有量とは位置付けが異なることに留意」した上で、「欧州における規制を参考」にする方向性が示された。厚労省監視指導・麻薬対策課が作成した資料によると、例えばドイツでは、産業用大麻(ヘンプ)の栽培で許容されるTHC濃度を「0.2%」と法的に規定している一方で、最終製品中に許容されるTHC濃度については飲料の場合でキログラム当たり「0.005mg」と、栽培と比べてかなり低い残留限度値を設定している。取りまとめでは、大麻取締法の改正で大麻「使用罪」が導入される見通しであることを踏まえ、「尿検査による大麻使用の立証に混乱を生じさせないことを勘案し、適切に設定すべき」だと指摘。日本は欧州以上に厳格な残留濃度値が設けられる可能性もありそうだ。

 こうした技術的な規定や要件など制度の細部に関する議論は、今後に持ち越された。CBD事業者らにとっては、残留濃度値をはじめ製品中THCの統一的な試験方法のあり方、食薬区分上でのCBDの取り扱い、製品表示ルールなどといった細部こそが焦点となる。

CBD製品世界市場、「今後10年で7~8兆円との観測も」

 取りまとめでは、CBD製品の現状について、海外ですでに承認されている医療用医薬品からサプリメントなどまで「世界的には今後10年で7~8兆円の市場規模にまで成長するとの経済的な観測もある」などと将来性を紹介し、日本においても「新たな市場」としてCBD製品の健全な普及を進める意義を示した。

【石川 太郎】

(冒頭の画像:大麻規制検討小委員会第4回会合の冒頭。会合の最後、合田委員長はこれまでの議論をふり返り、昭和23年(1948年)に制定された大麻取締法の大改正を目指し、大麻を巡る世界的な環境の変化に合わせた多岐にわたる議論が行われた、とコメントした)

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