サプリ定義の素案、思想と含意 【特集:サプリの定義】消費者庁食品衛生基準審査課長に聞く
2026年4月23日の食品衛生基準審議会新開発食品調査部会に示されたサプリメントの定義の素案。議論は紛糾しながらも部会委員は概ね了承した。案を作成したのは、同部会の事務局を務め、食品衛生基準行政を所掌する消費者庁の食品衛生基準審査課だ。世界的に後発となるサプリの法的な定義の検討にどう向き合っているのか。取りまとめに向けた検討途上の5月8日、同課の髙江慎一課長(=写真)が取材に応じた。
定義が必要になった理由
──そもそも、サプリの規制の在り方を検討するにあたってサプリの定義を決める必要があったのはなぜでしょうか。
髙江 サプリメントは保健機能食品以外の「その他のいわゆる健康食品」にも入り込んでいます。食品衛生法において、サプリメント全体の規制の在り方を検討するとなれば、そこをどうするのかという議論は当然出てきます。しかし今は定義がない。だからそこの検討は避けられない。必要に迫られて検討しているということですし、その時(サプリの法的な定義を定めなければならない時)が来たということです。
──サプリの前に、いわゆる健康食品の定義を決めて「いわゆる」を取ったほうがすっきりするのでは?
髙江 (紅麹関連製品への対応に関する)関係閣僚会合から求められたのは、サプリメントの規制の在り方に関する検討です。いわゆる健康食品の規制の在り方ではありません。
定義を決めるということは、言い方は悪いですが、漏れなく何かが付いてくるということです。そうです、事業者にとっては規制が付いてきます。一般に、定義を決めた上で「あなたは何も関係ありません」ということは法律上あり得ません。
いわゆる健康食品全般の定義が本当に必要なのかどうか。いまそれがない理由は、いわゆる健康食品の安全性確保はその他の食品と同様に(食品衛生法に基づき)数多く掛けられている義務や努力義務で事足りると考えられてきたからだと思います。(食品表示法等に基づき)機能性を表示するかどうかは事業者の任意です。しかし食品衛生法はそうではありません。義務をかけられ、それに違反すると、行政による何らかのアクションが付いてくる。そうした中で、今回はいわゆる健康食品全般ではなくサプリメントが取り上げられることになりました。ですからサプリメントの定義を検討しています。
──定義は誰のため、また、何のためでしょうか。
髙江 誰のためかと聞かれたら、みんな(国民)のためです。その上で、法律の趣旨を踏まえると、規制される側の事業者が明確に理解できる規定にしなければならないということも根本的にはある。何のためかについては、それはやはり規制のためということになります。先ほど申し上げたとおり、定義だけ決めて何もないということはありません。
──規制のためだけに定義を決めることには疑問の声もあります。サプリの社会的な意義など、大事な視点が抜け落ちていませんか。
髙江 部会では、そういったことも含めていろいろと議論がなされているという理解でいます。だからこそ、紛糾しているのです。
食の三次機能に着目
──4月23日の部会に示した定義案はどのように編み出しましたか。
髙江 その前の3月30日の部会に、事務局(食品衛生基準審査課)は本当にフラットに臨みました。委員の方々が考えていることをしっかり聞かせていただけたと思っています。その上で、サプリメントの定義は形状だけでなく多面的な要素から考えていく必要があるというご意見のすべてに応えるために、サプリメントの位置づけ、目的、形状、過剰摂取のリスク、風味の有無、機能性表示食品制度におけるサプリメント形状との整合など、非常にたくさんの要素を欧米の制度も横に見つつ検討し、事務局案として提出しました。
──案にはサプリの目的が盛り込まれています。4月23日の部会では、目的のうち、通常の食事による「生理機能の調節を補助する」の部分に異論が噴出しました。消費者に誤認される恐れがあると。一方で、事務局は、その部分は断固として外さないというふうな姿勢を見せました。なぜでしょうか。
髙江 サプリメントとは、通常の食事を補助するものであるという概念が非常に大事だと思っています。食事を代替するものではないし、間食でもない。その上で、それ(通常の食事による生理機能の補助)がサプリメントの本質だと思うからです。そこを外すとおかしなことになってしまいます。
この部分は、サプリメントを食品として整理することを踏まえ、食の三次機能(生体調節機能)を意識して取り入れました。事業者はそこに着目して商品開発を行っているはずですし、通常の食事による栄養摂取を補助すること(食の一次機能)だけが目的だとすると、ビタミンやミネラルなど栄養素を含むものだけが対象になり、範囲が狭まってしまう。
ただ、そういう(消費者に誤認されるなどといった)受け止めがあるということを我々としてもしっかり受け止め、取りまとめに向けて検討していく必要があると思っています。
──外されなくて良かったです。一方で、気になる点もあります。原材料(内容物)に関する規定の書きぶりが薄くありませんか?
髙江 そこは「当該食品に含まれる成分の一部又は全部が製造工程において濃縮されたもの」として規定しました。その上で形状については「錠剤、カプセル剤、液剤、粉末剤等の摂取の容易な形状であるもの」とある。最後に「その他の過剰摂取のおそれのあるもの」を盛り込みましたが、これは包括的な規定ですから、「過剰摂取のおそれがあるもの」とは基本的に最初の2つ(濃縮されたもの、摂取の容易な形状であるもの)で説明できると考えています。
最終的な幅としては、「3.11通知」の(対象食品である)「天然からの抽出物であって分画、精製、化学的反応等により本来天然に存在するものと成分割合が異なっているもの又は化学的合成品を原材料とする錠剤、カプセル剤、粉末剤、液剤等の形状の食品」とあまり変わらないと思っています。全部盛り込むと定義が長くなり過ぎてしまいますから。
最終的には「総合的な判断」
──この定義をもって、これはサプリである、これはサプリではないと明確に線引きすることは可能でしょうか。どこかモヤモヤしていて、境界線上の加工食品が多く出てくる気がします。
髙江 それはどの定義でもあることだと思います。定義だけで外縁がピタッと決まるわけではない。モヤモヤしているところはQ&Aで明確化していきます。それがないと混乱が生じてしまう。その上で、当該食品がサプリメントかどうかの最終的な判断は、「総合的な判断」になると思っています。
──総合的な判断というと?
髙江 我々(食品衛生基準審査課)の所掌ではありませんが、表示も含めた判断が必要になるということです。サプリメントに関する消費者のための表示と、監視指導のための表示の折り合いをどう付けていくのかという大きな議論が今後行われる必要があるのだろうなと、個人的には思っています。そういうことを考えていくためにも、まずは定義を決める必要があります。
──欧米のサプリの定義と比較して遜色のない定義だと思いますか。
髙江 遜色があると思っているのであれば(表に)出しませんし、出せません。
ただ、これに決まったわけではありません。こちら(新開発食品調査部会)で取りまとめたものを厚生労働省(の厚生科学審議会食品衛生監視部会)に報告して揉んでもらう手続きが残っています。また、実際に(定義やGMP義務化を)動かしていくためには食品衛生基準審議会への諮問・答申も必要です。そのため、4月23日の部会資料(資料1:サプリメントの規制のあり方)には、「厚生科学審議会等の議論を踏まえて今後変更があり得る」と書き込んであります。
──最終的に決まった定義を法令にどう落とし込みますか。
髙江 定義とGMPだけを取り上げれば、食品衛生法の第13条に基づく規格基準です。法技術的には、法改正せずともできる。しかし、厚生労働省の部会で今後取りまとめる(健康被害情報の報告、営業の許可・届出も含めたサプリメント規制の)パッケージ全体の法的な建て付けをどうするのかについては、最終的には厚生労働省の審議会でないと決められません。こちら(消費者庁)の審議会は、政策全般について諮問・答申できる審議会ではないからです。今回の検討が厚生労働省でキックオフ(2025年10月23日)されたのはそのためです。
──法令上の名称はどうなるのでしょうか。今のまま「サプリメント」となりますか?
髙江 まだ分かりません。今はサプリメントという用語を使っていますが、法令上、そう決まったわけではありません。今後の検討となります。
【聞き手・文:石川太郎】
【プロフィール】髙江慎一(たかえ・しんいち):1994年厚生省入省。2015年医薬品医療機器総合機構(PMDA)医療機器審査第一部長、2020年大臣官房厚生科学課研究企画官、2024年厚生労働省医薬局医療機器審査管理課長を経て、2025年7月から現職。
※『Wellness Weekly Report』96号(2026年6月号)より転載
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