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「義務」だからこそ立つ民間の役割 JHNFAとJIHFS、20年余の第三者認証を礎に(後編)

 日本のサプリメントGMPは、国のGMP通知を皮切りに、民間主導で実装が進められてきた歴史がある。始まりは、2005年。その年、2つの民間機関が製造施設を対象にしたGMP第三者認証制度の運用をスタート。現在までに、両機関合わせて230超の施設がGMP施設として登録されている。20年余にわたり、普及に取り組んできた(公財)日本健康・栄養食品協会(JHNFA)と(一社)日本健康食品規格協会(JIHFS)は、サプリメントGMPが「任意」ではなく「義務」である時代にどう向き合うのか──。

【編集部より】本記事は、ウェルネスニュースグループが発行する会員限定専門誌『ウェルネスマンスリーレポート』2026年8月号(第98号、同月10日発刊)の特集「サプリGMP、『義務』の時代」内に掲載したものです。前後編に分けて全文を公開します。今回は後編で、前編はこちら。本特集に掲載したほかの記事も全文公開しています(一部、限定公開)。関連記事をご参照ください。

日本のサプリGMPは「決して甘くない」

 「日本のサプリメントGMPは、決して甘くありません」。2008年公表の「サプリメント法『私案』」を取りまとめたことで知られる故・大濱宏文氏とともに民間のサプリメントGMP第三者認証機関としてJIHFSを立ち上げ、現在、理事長を務める池田秀子氏はそう強調する。

 なぜ、甘くないのか。日本のサプリメントGMPは、3.11通知の前身である平成17年通知に明記されているように、「医薬品に導入されているGMPを参考にする」という基本的方針に基づいているからだと池田氏。その上でこう説明する。

 「例えば欧米のGMPは、食品GMPあるいはHACCPを基礎としています。しかし、(3.11通知の)GMPガイドラインはそうではありません。衛生管理はもとより、HACCPによるリスク管理の考え方に加え、製品の均質性・均一性の保証に重点を置いています。そのために、(医薬品GMPの基本要件である)『バリデーション』が明記され、その実施が要求されています。バリデーションは、GMPを支える科学的根拠となるものですが、欧米のサプリメントGMP規則を見ても、その要求項目はありません」

品質向上のために立ち上げた認証制度

 JIHFSは業界団体ではない。サプリメントなど健康食品の安全性や品質に特化した民間の第三者認証機関だ。健康食品およびその原材料の製造施設に対するGMP認証を開始したのは2005年。現在、健康食品と原材料を合わせて53工場を認証している(2026年7月1日時点)。

 また、国内で製造・販売される健康食品には海外で製造された原材料が多く使用されている実態を踏まえ、2015年には輸入原材料を対象とするGMP規範を作成。これに基づく「輸入原材料GMP(GMP-IM)認証」を2024年7月から進めており、現在、中国で製造される1品目(グルコサミン塩酸塩)を認証している。

 池田氏は、海外諸国のサプリメント関連制度に精通するとともに、サプリメントGMPのエキスパートだ。1998年から故・大濱氏とともに独自のGMP規範の検討に着手。当時、米国で検討が進められていたダイエタリーサプリメントのcGMP規則案や医薬品GMPなどを参考に、新たな規範づくりを進めた経緯がある。2人が当時所属していた外資系企業を中心とする健康食品業界団体が、規制緩和の活動と並行して、GMP第三者認証を手がける計画を立てていたからだ。

 規範は、平成17年通知が発出される2005年にはできていた。しかし、同団体は第三者認証の計画を撤回した。なぜか。当時、米FDAはダイエタリーサプリメントのcGMP最終規則の公布さえできていなかった(その後2007年公布、2010年完全施行)。米国がそうした状況である以上、日本でGMPが義務化されるようなことはない──同団体の当時トップはそう判断したと池田氏は振り返る。サプリメントの品質保証は喫緊の課題と考えていた2人は業界有志と共に「健康食品の品質向上のため」にJIHFSを立ち上げ、独自の規範と同通知に基づくGMP認証を開始した。

「後ろに引けない線」が引かれた

 日本のサプリメントGMPは甘くないと指摘する池田氏。その遵守が「任意」から「義務」に変わることをどう受け止めているのだろうか。次のように話す。

 「これまでは、我々が一歩引かざるを得ないというような場合もありました。改善まで一定の猶予を設けながら認証してきた部分はあります。

 しかし、義務化されたということは、これ以上は後ろに引いては絶対ならない線が、法的に引かれたということです。だから私たち自身も、その守るべき線を再確認し、そういう覚悟をもって前へ進めていく必要があります。

 医薬品を参考にしたGMPの義務化は、サプリメントの品質に光を当てる、本当に意義のあることだと思っています。GMPは、サプリメントを実体化させるための手段であり、GMP第三者認証機関は、そのシステムを客観的に保証するという、重い役割を担っているのです。

 消費者が手にするサプリメントは、外観だけでは中身や品質が分かりません。そのため、製品のラベルに書かれているとおりのことを、実際の製品に反映させる必要があります。それが実体化であり、そのためには、現在のところ、医薬品を参考にしたGMP以外の方法はありません。規格を満たした表示どおりの原材料が使われ、それが表示どおりに含まれるよう管理された工程で製造され、最終的にすべての製品があらかじめ定められた製品規格に適合していることを保証するのがサプリメントGMPです。

 それが義務化されます。その中で私たちは、3.11通知を基準にした我々独自のGMP規範に従いながら、第三者として認証を行っていくことになります。医薬品GMPには第三者認証制度はありません。それを考えると、私たち民間のサプリメントGMP認証機関の消費者や社会に対する責任は一層重くなる。そのように受け止めています」

GMPの役割、安全性と有効性の確保

 池田氏は、以前から、GMPとは科学的根拠に基づく安全性を確保するためだけのシステムではないと訴えている。安全性と同時に、科学的根拠に基づく有効性を確保する。その両方を支えるものこそが「品質」であり、それを確保するためのシステムがGMPだとする。だからこそ、今後食品衛生法上で規定される見通しの「サプリメント」の定義に注目する。

 「通常の食事による『生理機能の調節を補助する』という目的が組み込まれました。食の第三次機能です。私たちはここから目をそらしてはならない。有効性と安全性の確保という、品質が果たすべき本質的役割を反映した定義が示されたと思いますし、それを製品に反映させていくためにも、私たちはサプリメントGMPを前に進めていく必要があるのです」

◇

 20年余にわたり民間の立場でサプリメントGMP認証を進めてきたJHNFAとJIHFSの存在を、サプリメント全体に対してGMPを義務付けようとしている国は、どんなふうに捉えているのだろうか。食品の中に、新しく立ち上げる「サプリメント」という法的枠組みを消費者に普及啓発するとき、GMPの意義を説明していく必要もあるだろう。その時、民間の第三者認証機関の存在を国として公式に認め、その役割を伝えていくべきである。

(了)

【石川太郎】

【特集】「サプリGMP、『「義務』の時代」関連記事
①20年余の「任意」経て始まる「義務」 射程は食品衛生法上の「サプリメント」まで
②<インタビュー>サプリ機能性表示食品、GMP適用 義務は届出者、実務は製造者 消費者庁・保健表示室長「連携が不可欠」
③<業界団体の取り組み(前編)>行政が引いた線と現場の隙間を埋める 日健工とJAOHFA、それぞれの営みと役割
④<同上(後編)>
⑤<民間GMP認証機関の向き合い方(前編)>「義務」だからこそ立つ民間の役割 JHNFAとJIHFS、20年余の第三者認証を礎に

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