「義務」だからこそ立つ民間の役割 JHNFAとJIHFS、20年余の第三者認証を礎に(前編)
日本のサプリメントGMPは、国のGMP通知を皮切りに、民間主導で実装が進められてきた歴史がある。始まりは、2005年。その年、2つの民間機関が製造施設を対象にしたGMP第三者認証制度の運用をスタート。現在までに、両機関合わせて230超の施設がGMP施設として登録されている。20年余にわたり、普及に取り組んできた(公財)日本健康・栄養食品協会(JHNFA)と(一社)日本健康食品規格協会(JIHFS)は、サプリメントGMPが「任意」ではなく「義務」である時代にどう向き合うのか──。
【編集部より】本記事は、ウェルネスニュースグループが発行する会員限定専門誌『ウェルネスマンスリーレポート』2026年8月号(第98号、同月10日発刊)の特集「サプリGMP、『義務』の時代」内に掲載したものです。前後編の2回に分けて全文を公開します。本特集に掲載したほかの記事も全文公開しています。関連記事をご参照ください。

認定の基本は「3.11通知」に置く
2026年6月末時点で原材料も合わせて186の製造施設にGMP認定を行っているJHNFA。認定基準は、厚生労働省が2024年3月に発出し、現在は消費者庁が所管する通称「3.11通知」のGMPガイドライン(錠剤、カプセル剤等食品の製造管理及び品質管理(GMP)に関する指針)に基づき組み立てている。食品衛生法に紐づくガイドラインだ。
2026年9月1日に義務化が完全施行されるサプリ形状の機能性表示食品のGMPの基準は、食品表示法の関連法令である内閣府告示に規定されている。だが、JHNFAは引き続き、前述のGMPガイドラインに範を取った監査や認定を進める。その理由を、JHNFAでGMP認定などの第三者認証事業を担当する健康食品部の増山明弘部長が語る。
「製造現場を見ると、機能性表示食品ではない健康食品の製造が圧倒的に多いです。そのため、我々のGMP認定の基本は、3.11通知と、その項目解説、自己点検表、ならびに当協会のGMPガイドラインに置いておく必要があります。それに、もし機能性表示食品の告示だけを基準にしてしまうと、『当社は機能性表示を扱っていないから(GMPは)関係ない』と受け止める工場が出てきてしまうおそれもある。
告示と違い、通知に法的強制力はありません。しかし、3.11通知は、サプリメントに使用する原材料の安全性の確認から最終製品の製品設計、製造管理、品質管理までを適切に行うための規範です。そのため、我々も、JIHFSさんも、基本的に3.11通知に合わせた第三者認証を行っています」
実際、告示に規定されたサプリ形状の機能性表示食品のGMP基準は、3.11通知のGMPガイドラインをベースにして作られており、GMPの要求事項も重なる部分が多い。むしろ、GMPガイドラインは告示が要求していない事項も要求している。そのため、「3.11通知に適合していれば、告示上の要求にも大部分は対応できている」。増山氏はそのような見方を語る。
ただ、JHNFAのGMP認定を受けた施設の関係者からは、悩みの声も上がる。消費者庁のGMPチームからGMP実施状況の確認・助言を受けた際の指摘と、JHNFAの審査などで受けた指摘が必ずしも一致しない、と言われるのだという。
この理由について増山氏は「基本的な基準は共通していますが、実際の監査や確認では、担当者によって着眼点や指摘内容に差が出ることがあります。これは我々のGMP調査員同士でも起こり得ることで、部分的な指摘は一致しないことがある。一定のバラつきは、監査や査察にはよくあることで、よりレベルを上げるための助言です」と説明する。
また、告示で規定された原材料の受入れやサンプル保管に悩む声も多い。GMP認定を受けているのに、なぜそうなるのだろうか。増山氏はその理由をこう見る。
「我々のガイドラインでも、原材料を受け入れる際に何を確認すべきかを定めています。それを実施していなければ認定されません。ただ、『必ず実施しなければならない最低限の事項』と、『より高い水準を目指すために実施することが望ましい事項』を区別しています。最低限を満たしたうえで、次回の審査までに段階的に改善してほしいなど、継続的に指導していく考え方です。サンプルの保管についても同様です」
義務化後も残る「外部の目」の意義
その上で、増山氏は、現在までに方向性が固められた、今後食品衛生法上で定義される「サプリメント」に対するGMP遵守の義務化を踏まえても、「工場は3.11通知を基本として運用しておくべきです」と考える。だからこそ、3.11通知のGMPガイドラインを規範とするGMP認定を取得しておく必要があると訴える。
ただ、GMP遵守が任意であればまだしも、サプリ形状の機能性表示食品に関しては法的拘束力を持つ義務とされ、その範囲がさらに広がりそうな今、民間のGMP認証を取得する意義とは何だろうか。告示に適合した適切な製造・品質管理を自社で行っているのだからそれで良い、という考え方もあるのではないか──増山氏の考えはこうだ。
「重要なのは、制度上の形式や認定ではなく、製造管理や品質管理の中身です。民間認証を取得していれば、外部の調査員が工場に入り、実施状況を確認します。確認結果は審査会でも検討され、専門家によって必要な指摘が行われます。おっしゃるとおり、第三者認証を取得しなくても、自社だけで十分な管理ができる企業はあります。ただ、第三者認証を取得していれば、工場の環境、設備、運用に対して外部の目が入り、適切な管理が行われているかどうかを第三者が確認することになる。そこに(民間GMP認証の)意義があります。
GMPの目的は、通知や告示に示された文言を形式的に満たすことではありません。実際に適切な製造管理・品質管理を行い、正しい品質の製品を消費者に届けることで、品質に問題のある製品の流通を防止し、そして健康被害を防ぐことです。現時点では、その基準となる規範を示しているのは3.11通知です」
増山氏はそのように強調しつつ、「原材料GMPの必要性も訴え続けていきたい」とも語る。そしてこう続ける。
「すべての原材料に対して一律にGMPを求めるのは現実的ではありません。しかし、それを理由に何もしなくてもよいということにはなりません。2024年に起きた健康被害問題(小林製薬の紅麹サプリ事案)の本質を考えれば、原材料GMPは制度上の一律義務化は難しいのだとしても、3.11通知の活用を通じた自主的なGMP管理を何らかのかたちで行政が積極的に推進することを期待しています。3.11通知には原材料のGMP管理の考え方も示されています。旧通知(3.11通知の前身、平成17年通知)の時代からそうでした。その実効性を担保するための受け皿として、私たちGMP第三者認証機関は以前から原材料GMP認定を行い、運用し続けているのです」
行政と民間、現実的な役割分担が必要
日本のサプリメントGMPを巡っては、旧通知の時代から、実効性を確保するために民間の第三者認証を活用するという考え方が示されていた。増山氏は言う。
「GMPが義務になっても、行政と民間認証機関が適切に役割分担する形が現実的だと思います。我々とJIHFSさんは約20年にわたりGMP認証を行ってきました。今後、監視・指導にあたる行政のことを考えても、それが現実的なのではないでしょうか」
その上で、JHNFA独自の今後の展望についてこう語る。
「私たちには業界団体全体としての役割があります。健康食品業界は、研究開発、製品開発を行い、GMPに基づく適切な製造・品質管理を実施している企業が多くあります。その目的は、消費者が健康に生活するために科学を活用し、消費者に役立つ製品を届けることです。現在の健康食品に関する各種制度はそれぞれ個別に議論されていて、担当行政や法制度も分かれています。そのため全体像が見えにくく、事業者としても何をどこまでやればよいのかが分かりにくくなっています。
健康食品に関する制度が事業者の努力や製品の価値を消費者に正しく伝えられるよう、また同時に安全性と信頼性を担保できるよう、健康食品の制度全体を見渡した提言を行うことが我々の役割だと考えています。会員の声を聴きながら、です。すぐに実現するとは思っていません。長期的に取り組むべき課題です」
(後編につづく)
【石川太郎】
【特集】「サプリGMP、『「義務』の時代」関連記事
①20年余の「任意」経て始まる「義務」 射程は食品衛生法上の「サプリメント」まで
②<インタビュー>サプリ機能性表示食品、GMP適用 義務は届出者、実務は製造者 消費者庁・保健表示室長「連携が不可欠」
③<業界団体の取り組み(前編)>行政が引いた線と現場の隙間を埋める 日健工とJAOHFA、それぞれの営みと役割
④<同上(後編)>

