食品表示、どこまでデジタル化 小面積の省略規定、海外との違いも論点に
消費者庁は2日、第2回令和8年度食品表示懇談会を開催し、食品表示へのデジタルツールの活用と、諸外国との表示制度の整合性について議論した。
現行の食品表示制度を整理した上で、容器包装の表示をデジタルで代替する際の省略規定の取り扱いや事業者負担、日本と諸外国で異なる原材料・添加物などの表示ルールが今後の検討課題として浮上した。
今年度の懇談会では、「食品表示へのデジタルツールの活用」と「諸外国との表示制度の整合性」を主要テーマとして検討している。今回の会合では、消費者庁が加工食品、生鮮食品、添加物の現行表示ルールと、日本、コーデックス、EU、米国、中国の加工食品の義務表示事項の違いを説明した。
現行の食品表示基準では、食品を加工食品、生鮮食品、添加物の3つに区分し、それぞれについて表示ルールを定めている。一般用加工食品では名称、原材料名、添加物、内容量、期限表示、保存方法、栄養成分、アレルゲンなどを表示する。
小面積食品の省略規定が論点に
デジタル化を巡る議論では、容器包装の表示可能面積がおおむね30平方センチメートル以下の食品に認められている省略規定が焦点の1つとなった。現行制度では一定の条件の下、原材料名や添加物、栄養成分、原料原産地名などについて表示を省略できる。
森田満樹委員(Food Communication Compass)は、小面積の容器包装にQRコードなどを付けてデジタル表示を行う場合、容器包装では省略できる情報をデジタル上でも省略できるのかを問題提起した。
消費者庁は、デジタルツールの活用は事業者による選択制を基本としていると説明。その上で、デジタル表示を選択した場合に小面積食品の省略規定をどのように取り扱うかについては、今後議論する考えを示した。
デジタルツール分科会の座長を務めた加藤孝治委員(日本大学大学院)は、現行制度で一部の表示事項を省略できる規定について、その導入経緯を質問。デジタル化によって消費者の権利と事業者側の負担のバランスを大きく変えないことが重要との考えを示した。
消費者庁は、複合原材料の表示や小面積食品などの省略規定は制度導入時から設けられていると説明。小面積食品は物理的な表示スペースが理由となっているが、その他の規定については表示すること自体の困難さなども考慮されており、必ずしも物理的な制約だけを理由としていないとした。省略規定を設けた経緯については、次回以降、デジタル表示との関係が分かる資料を示す考えを明らかにした。
森田委員はさらに、計量法や健康増進法、公正競争規約など、食品表示基準以外の法令・ルールが関係する表示をデジタル化する場合の整理について質問した。
消費者庁は、他法令が関係する表示について、現時点でデジタルへの代替が難しいとしているわけではないと説明。食品表示基準での整理を土台としながら、他法令との関係を考慮する必要があるとした。将来的な他法令の見直しを見越して食品表示基準を先行して整備するか、他法令との整合を踏まえて規定を残すかについても、今後検討する考えを示した。
安全情報「見つけやすく」
消費者側からは、デジタル化を単なる容器包装上の表示削減に終わらせず、必要な情報を消費者が取得しやすくする仕組みとするよう求める意見が相次いだ。
廣田浩子委員(全国消費者団体連絡会)は、若い世代が商品を購入する際、商品名や写真、宣伝文句などを見る半面、義務表示を十分に確認していない実態を紹介。デジタル化によって安全性に関する重要な情報を消費者が見つけやすくすることの重要性を指摘した。
中村伸一郎委員(オール日本スーパーマーケット協会)は、保健機能食品について表示すべき情報量が多いことを踏まえ、デジタルを活用して情報を補完することが有効との考えを示した。機能性表示食品を巡る健康被害問題にも触れ、消費者の誤認を防ぐ観点から、ピクトグラムなどを活用することも検討すべきとした。
小川美香子委員(東京海洋大学)は、食品表示は消費者の「知る権利」を担保するものとの認識を示し、若年層への食品表示に関する啓発の重要性を指摘した。
瀬川恵寛委員(日本加工食品卸協会)は、アレルギーに限らず、特定の成分に反応する少数の消費者も必要な情報を得られるよう、デジタルツールを活用すべきと指摘。点字を取り入れた食品の事例を挙げ、ルールを整備するだけでなく、事業者の工夫と消費者の潜在的なニーズを結び付ける仕組みとしてデジタルを活用することに期待を示した。
大角亨委員(食品産業センター)からは、デジタル化しても、情報の整理や商品との紐付けなど事業者側に新たな管理負担が生じるとして、制度設計では事業者負担への配慮を求める意見が出た。
諸外国との表示制度を比較
諸外国との制度整合性について、消費者庁は日本とコーデックス、EU、米国、中国の加工食品の表示制度を比較した。今後の主な論点として、「原材料と添加物の区分表示」、「水の表示」、「原材料の順不同表示」、「添加物の一括名表示」、「添加物の用途名表示」、「食物アレルギー表示」、「原材料の量的表示」、「栄養成分の量及び熱量の表示」の8項目を挙げた。
原材料表示では、日本が原材料と添加物を区分して重量順に表示し、水については商習慣上、表示を省略しているのに対し、諸外国では原材料と添加物を区分せず、水を含めて重量順に表示するなどの違いがあるとした。
添加物についても、日本やコーデックス、米国では物質名を表示するのに対し、EUでは物質名またはE番号、中国では物質名または国際番号で表示するなどの違いがある。日本では香料や乳化剤など14種類について一括名による表示を認めているほか、用途名を併記する添加物の範囲についても違いがあると説明した。
栄養成分表示では、日本は熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量を表示するのに対し、諸外国ではこれらに加えて飽和脂肪酸などを表示する制度もあるとした。
消費者庁は、今後、原材料と添加物の区分表示、水の表示、原材料の順不同表示など8項目について、諸外国との整合性を具体的に検討する方針を示した。
これに対し瀬川委員は、国によってアレルギー表示の対象が異なることに言及。食品表示法そのものの変更を求めるものではないとした上で、訪日外国人への情報提供も念頭に、グローバルな視点からデジタルツールの活用を検討してはどうかと提案した。
8項目を順次検討へ
今後は、消費者庁が示した8項目について、それぞれ過去の検討経緯や現状を整理した上で議論を進める。
森田委員は、EUや米国、中国で一定割合以下の原材料などについて重量順によらない表示を認めていることを踏まえ、日本でも「順不同表示」を検討課題に加えるよう提案した。消費者庁は、順不同表示も8項目に含まれているとして、今後議論する考えを示した。
添加物やアレルギー表示など、別の検討会などで既に検討されている項目については、これまでの検討経緯や現在の状況を懇談会に報告した上で、取り扱いを検討する。消費者庁は、8項目以外についても委員から提案があれば資料を作成し、検討する考えを示した。
また、国際整合性については、まず容器包装上の表示について諸外国との違いを整理し、合わせるべきかどうかを検討する。デジタル表示についてはこれと分け、デジタルだからこそ可能となる情報提供などを検討する。湯川座長は、両者は相互に関連する議題になるとの認識を示した。
デジタルツールの活用については、2026年度中に技術マニュアル案を作成し、事業者への実態・意向調査や消費者を対象としたデジタル表示の見やすさなどの実証調査を進める。その後、懇談会でデジタルによる表示代替について議論し、方向性が固まり次第、必要に応じて消費者や事業者へのヒアリングを実施する。27年度中には取りまとめ案のパブリックコメントなどを行うスケジュールが想定されている。
次回の食品表示懇談会は12月4日に開催する予定。
【田代 宏】
配布資料はこちら(消費者庁のHPより)

