サプリ機能性表示食品、GMP適用 義務は届出者、実務は製造者 消費者庁・保健表示室長「連携が不可欠」
2026年8月末、2年間の経過措置が終わり、翌9月1日から、天然抽出物等を原材料とする錠剤・カプセル剤等食品(サプリ形状)の機能性表示食品に対するGMP基準が適用される。昨年6月以降、その対象となる食品の製造・加工施設のGMP実施状況を確認してまわった消費者庁は今、何を思うのか。経過措置期間の終了まで残すところ約1カ月半の7月15日、同庁食品表示課保健表示室の今西保室長に聞いた。
【編集部より】本記事は、ウェルネスニュースグループが発行する会員限定専門誌『ウェルネスマンスリーレポート』2026年8月号(第98号)の特集「サプリGMP、『義務』の時代」内に掲載したものです。全文を公開します。
製造所の協力に感謝 届出者も実施状況確認を
──消費者庁のGMPチームがGMP実施状況を確認した製造所は全国234施設(2026年3月末時点)に上ります。
今西 製造所の皆様には、我々の確認に非常に協力していただきました。施設を見せていただき、記録を確認し、必要な点についてこちらから助言すると、誠意をもって対応していただいています。我々の取り組みにも理解をいただいていると感じます。その点は非常に感謝しています。9月以降も、製造所の皆様には適切な製造管理、品質管理を続けていただくことが大事です。
一方で、まだ準備が整っていない製造所もあります。9月1日から確実に対応できる状態をめざしていただきたいと思っています。
──3月末時点で234施設中74施設がGMP体制を構築中だったとのことです。9月1日に間に合うでしょうか。
今西 当該74施設の準備状況には様々な段階があり、各施設の状況に応じてGMPチームが個別にフォローアップしています。ですから、現時点での具体的な数字をお伝えすることは差し控えますが、3月末時点から数は減っていますし、我々としても、経過措置期間終了までにGMP体制構築中の製造所をゼロにすることをめざしています。
ただ、我々が直接支援できるものではありませんが、GMP体制に必要な人材をどうしても充てられないというケースもありそうで、(サプリ形状の機能性表示食品の)製造・加工を取り止める製造所も出てくると思います。このような課題もあります。

──制度上、GMP基準遵守の義務を負うのは届出者ですが、その多くが製造を外部委託しているため、実質的に義務の履行に当たるのは受託製造企業です。これは少し歪な構造だと思うのですが、「自分たちが義務を負っている」という認識が届出者に十分浸透しているでしょうか。
今西 2025年4月の制度改正で、年1回の自己点検等報告が届出者に義務付けられました。現時点で、GMP対象食品を届け出ている届出者の約8割から「GMP基準に準拠した施設で製造している」との報告を受けています。自らが義務を負っていると届出者は認識しているからこそ、そのような報告を受けているのだと思います。届出者は、今後も継続して製造施設のGMP実施状況を確認・報告していただくことが重要です。
──民間の健康食品GMP認証を取得している施設と、取得していない施設とでは、GMP実施状況に何らかの差がありましたか。
今西 製造者にとって、これまでGMPは(指定成分等含有食品を除いて)義務ではありませんでした。ですが、民間認証を取得している施設は、体制や記録など、GMP管理の土台が出来ています。各民間認証機関のガイドライン(認証基準)に沿った管理と運用が出来ていなければ、そもそも認証されないはずですから当然です。しかし、民間認証を取得していない施設では、その土台が十分ではない場合もあり、そこの温度差はあります。
一方でHACCPは義務です。ですからそれについては多くの施設が対応していますし、海外輸出などのためにFSSC22000やISO22000といった(食品安全マネジメントシステムに関する)民間認証を取得している施設も少なくありません。
ただ、GMPとHACCPは考え方が異なります。例えばHACCPにはGMPのように製造部門と品質部門を分けて管理するという考え方はありません。これまでHACCPの考え方のみで製造、加工してきた施設には、GMPの考え方を説明し、GMPをどう組み合わせていくかについて助言しています。
──行政として民間GMP認証の取得を推奨してはいかがでしょうか。
今西 機能性表示食品制度は、消費者の商品選択に資する情報を提供するための制度です。ですから、GMPに限らず、製造施設が民間認証を取得している場合、その旨を届出情報に記載できるようにしています。実際、認証取得の事実を積極的に記載する届出者もいますし、民間のGMP認証機関が運用している認証マークを容器・包装に任意で表示している届出者もいます。
──民間のGMP認証を取得している施設で製造されるサプリ形状の機能性表示食品は、その要件となるGMP基準を満たしていると言えるでしょうか。
今西 民間認証とGMP基準は対象がそれぞれ異なるため一概に言うことはできません。ただ、基本的な考え方として、GMP基準は、食品衛生基準審査課が発出している、いわゆる3.11通知の「錠剤、カプセル剤等食品の製造管理及び品質管理(GMP)に関する指針(ガイドライン)」に基づいています。民間の方々の認証基準も当該指針を参考にしており、大きな「ずれ」が生じるようなことはないはずですし、基本的には、GMP基準を満たしていると考えられます。
しかし、民間認証を取得している、していないに関わらず、情報共有に課題があります。届出者と製造所が十分に連携できていない。製造所の中には、「届出者と一度も話したことがない」というケースがありました。中間業者の存在などもあり、直接の意思の疎通が出来ない場合もあるのでしょうが、信頼性を確保するために見直された今の機能性表示食品制度は、届出者と製造所と(機能性関与成分を含む)原材料を供給する事業者などが連携して初めて成り立つ制度になっています。すべての関係者が十分に連携し、GMP基準の遵守などにしっかり取り組むこと、そして届出者は、自己点検等報告を通じて自分たちの取り組みをしっかり消費者に説明していくことが大事です。
自己点検等報告を確認 「助言」で関与続ける
──GMP基準が適用される9月1日以降、監視・指導はどうしていくのでしょうか。
今西 基本的には年に1回の自己点検等報告を確認していくことになります。ただ、今後新たにGMP対象食品を製造する施設が出てくる可能性もあります。GMPチームがGMP実施状況を確認していない製造施設が新たに確認対象となった場合の対応は、それを監視・指導の観点から行うのかどうかも含め、今後の検討となります。
──GMPには監査がつきものだと思うのですが。
今西 制度上、監査するのだとすれば、その対象は届出者となります。GMP基準の遵守は届出者の責務だからです。ですから、GMP基準を遵守しているかどうかは、原則として届出者自ら確認し、その結果を我々に報告していただく。そして我々は、その結果を公表する。そういう仕組みになります。
食品衛生法上の営業許可業種では、許可更新などのタイミングで行政が定期的に施設に入って確認します。営業届出で済む業種についても、各自治体の監視指導計画に基づき、必要な頻度で確認されます。食品表示法にも立入検査の規定はあります。ただ、それは食品表示の適正化を目的に行われるものです。ですから、表示規制の枠組みで製造施設を監視することには、制度上の難しさがあります。
だからといって、行政が関与しないというわけではありません。すでに我々は関与しています。GMPチームが各施設のGMP実施状況を確認したり、フォローアップしたりしながら、経過措置期間のうちに体制を整えてもらうよう、監視・指導ではなく助言という観点から関与していますし、我々の助言によって、より良いGMP体制を構築していただく取り組みは今後も続くと思っています。それは結果として、GMP基準を遵守しなければならない届出者に対する関与にもつながります。
──食品衛生法上で「サプリメント」を定義し、それに対してGMPの遵守を義務付ける方向性が定められました。
今西 食品衛生法は、すべての食品を対象とする法律です。今後法令で定められる「サプリメント」の定義に該当する食品は、基本的にGMP基準を遵守した製造管理、品質管理が食品衛生法に基づき求められることになると理解しています。
一方、機能性表示食品は、機能性を表示する食品を対象とし、「天然抽出物等を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品」という区分を定め、その区分の届出要件としてGMP基準が規定されています。
食品衛生法上の範囲には、機能性表示食品以外の保健機能食品やその他のいわゆる健康食品も含まれており、食品表示を所管する我々としては、食品衛生法上の「サプリメント」に関する規定に合わせ、事業者と消費者の双方に混乱が生じないよう検討を進めていく必要があると考えています。
──ありがとうございました。
【聞き手・構成:石川太郎】
【プロフィール】今西保(いまにし たもつ):消費者庁食品表示課保健表示室長。2004年厚生労働省入省。基準審査課で農薬等のポジティブリストなどを担当。監視安全課乳肉安全係を経て、内閣府食品安全委員会事務局評価第2課を担当。24年4月、消費者庁食品衛生基準審査課課長補佐に着任。25年4月から現職。
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