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20年余の任意経て始まる義務 射程は食品衛生法上の「サプリメント」まで

 2024年、錠剤の機能性表示食品で発生した小林製薬「紅麹サプリ」健康被害問題。これを直接のきっかけに規制当局が導入した、錠剤・カプセル剤などの機能性表示食品と特定保健用食品に対するGMP遵守義務が2026年9月、完全施行される。それだけではない。その対象範囲は今後さらに広げられることになる。複数の死亡事例まで報告された健康被害が招いた規制強化によって、錠剤・カプセル剤等食品のGMP遵守は事業者の任意である時代が終わろうとしている。(この記事は『Wellness Monthly Report』2026年8月号からの転載です)

まずはサプリ形状の機能性表示食品

 GMPは、主に医薬品の品質を確保するための手段として用いられる。その遵守義務が日本で食品に適用されるのは、2018年の食品衛生法改正(20年施行)で制度化された指定成分等含有食品に続いて2例目だ。

 初の事例も今回も、GMP遵守義務化の契機は健康被害問題。共通した背景の下、「品質が確認されたものと同じ品質のものを継続して作る」ことを目指すGMPの適用範囲が錠剤、カプセル剤、粉末剤など、外観が医薬品と似通るサプリ形状の機能性表示食品と特定保健用食品に広げられることになった。

 サプリ形状の機能性表示食品のGMP遵守義務化が及ぼす影響は、指定成分等含有食品よりも明らかに大きい。制度施行前後から販売品目数が漸減していった指定成分等含有食品に対し、サプリ形状の機能性表示食品は数が増え続けているためだ。

 消費者庁が運用する機能性表示食品の届出情報検索データベースによると、「現在販売中」だけでも1,953品目(2026年8月1日時点)。現在未販売の品目を含めると、その数は届出全体の約6割を占める3,636品目(撤回除く)に跳ね上がる。清涼飲料水などを中心とする特定保健用食品とは異なり、機能性表示食品の主流はサプリ形状。既存の科学的根拠を収集・分析するシステマティックレビューで機能性を表示できるメリットもあり、増加は今後も続く見通しだ。

 他方で、それよりもさらに大きな影響を近い将来に受けるのは、機能性表示食品など保健機能食品ではない健康食品(その他のいわゆる健康食品)に分類されるサプリ形状である。それに対しても、GMP遵守を義務付けることが決まっているためだ。その販売品目数については公的な統計がないため不明だが、民間の市場調査会社の市場規模調査を踏まえれば、少なくともサプリ形状の機能性表示食品の「数倍」に上るとみられる。

 なぜ、その他のサプリ形状に対してまでGMPが義務付けられるのか。やはり契機は健康被害問題である。

 紅麹サプリ事案への対応に当たった関係閣僚会合の方針を受け、厚生労働省と消費者庁にそれぞれ置かれた審議会で、サプリメント規制の検討が行われた。その結果、法律上の定義がないサプリメントを規制するために、食品衛生法制上でその定義を新たに設け、それに合致する加工食品に対してGMP遵守を義務付けることを求める提言が26年7月末までに取りまとめられた。保健機能食品の一類型である栄養機能食品も相当数が現在販売されているとみられるが、定義に合致すればGMPが義務付けられることになる。

 要するに、法律上の定義のない「健康食品」の中に、法令で規定する「サプリメント」のカテゴリを新たに創出させ、それに対して横串を刺すようなかたちでGMP遵守を義務化する、ということだ。健康被害情報の報告も義務付ける。

 このことは、日本の健康食品のうちサプリ形状におけるGMP遵守が、これまでの事業者による自主的な取り組み(任意)から、法的拘束力をともなう「義務」へと全面的に移行することを意味する。そのことを理解するために、日本のサプリメントGMPの歴史を振り返る。

民間の自主努力が支えた20年

 日本のサプリ形状の健康食品におけるGMPの歴史は2005年に始まった。同年、厚生労働省が錠剤やカプセル剤などの健康食品を対象にした「GMP通知」(平成17年通知)を発出、同通知に基づくGMPの遵守を事業者に求めた。

 対象食品は、「天然からの抽出物であって分画、精製、化学的反応等により本来天然に存在するものと成分割合が異なっているもの又は化学的合成品を原材料とする錠剤、カプセル剤、粉末剤、液剤等の形状の食品若しくは原材料」。医薬品的な錠剤やカプセル剤などの形状は、もともと食品への使用が認められていなかったが、2001年、医薬品規制の見直しによって使用できるようになっていた。

 GMP通知発出の背景には、中国製ダイエット用食品による大規模な健康被害などを受けて厚生労働省が立ち上げた、「『健康食品』に係る制度のあり方に関する検討会」(2003年~2004年)が取りまとめた提言がある。

 2004年6月に公表された提言では、「錠剤、カプセル状等の濃縮された形状の食品」について、「そのものの均質化を図り信頼性を高めるため、『適正製造規範(GMP)ガイドライン』を作成し、事業者の自主的な取組みにより、品質の確保(製造工程管理による安全性及び有効性の確保)を図るべきである。あわせて、監視指導も適切に行うべきである」とされた。これを踏まえて同省は、翌05年、食品衛生法に紐付けるかたちでGMPの基本骨格を示したGMP通知を発出。義務ではなく、事業者の自主努力によるGMP遵守を求めた。

 これを受け、民間が立ち上がる。GMP通知発出と同時に、民間主導で健康食品GMPの第三者認証制度をスタートさせた。

 2005年、業界団体の(公財)日本健康・栄養食品協会と、健康食品GMP認証を行うために設立された(一社)日本健康食品規格協会が第三者認証をそれぞれ開始。GMP通知を基準にした規範(ガイドライン)をそれぞれ用意し、健康食品の最終製品と原材料の製造施設に対するGMPの審査、監査、認証・認定を進めた。現在、両機関を合わせたGMP認証・認定取得施設は230余に上る。

 GMP通知は、約19年間にわたり運用され、2024年3月に廃止された。役割を終えたからではない。2020年に制度が施行された指定成分等含有食品のGMP基準を踏まえ、GMPの要求事項をより精緻化、あるいは詳細化した内容に生まれ変わり、あらためて事業者に提示された。この新たな通知は、「3.11通知」と呼ばれる。小林製薬の紅麹サプリ事案が明るみに出る直前の同年3月11日に発出されたためだ。 

 3.11通知は、「錠剤、カプセル剤等食品の原材料の安全性に関する自主点検及び製品設計に関する指針(ガイドライン)」と「錠剤、カプセル剤等食品の製造管理及び品質管理(GMP)に関する指針(ガイドライン)」の2つの指針から成る。このうち後者が、サプリ形状食品における現行のGMPガイドラインだ。

 GMPガイドラインは、発出直後に生じた紅麹サプリ事案における製造・品質管理上の要因を踏まえ、同年12月にさっそく一部改正され、「微生物等関連原材料を用いる錠剤、カプセル剤等食品の製品標準書の作成に関する指針」が追加された。また、自主的なGMP遵守の実効性を確保するため、ガイドラインが求めるGMPの「項目解説」と「自己点検表」が事務連絡として別途用意されている。

 現在、これに基づく自主的なGMP遵守が事業者には求められている。また、民間のGMP第三者認証機関も、GMPガイドラインを基準にした認証・認定を進めている。

義務を負う者、実務を担う者

 このように日本のサプリメントGMPは、行政が食品衛生法制上で定めたガイドラインに基づき、民間の自主努力による社会実装が20年余にわたって進められてきた。だが、後述するように、それが業界全体に浸透したわけではなかった。GMP遵守は、あくまでも事業者の「任意」であったからだ。

 そのフェーズが2026年から大きく変わる……続きをお読みいただけるのはWNG会員のみです。残り約4,660文字。全文の閲覧は「会員ページ」の「月刊誌閲覧」内『Wellness Monthly Report』2026年8月号(第98号)から。

【石川太郎】

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