紅麹問題巡り薫製倶楽部、訴訟5件 国・大阪市・小林製薬を相手に提訴、10月に期日集中
小林製薬㈱(大阪市中央区、豊田賀一社長)の紅麹関連製品による健康被害問題を巡り、食品用紅麹を使用してきた㈱薫製倶楽部(岡山県早島町、森雅昭社長)が、国、大阪市、小林製薬などを相手に計5件の訴訟を提起していることが分かった。
国家賠償請求3件、行政文書の不開示処分取消訴訟1件、民間企業に対する損害賠償請求1件で、10月には4件で期日が予定されている。
編集部はこのほど、森社長に長時間にわたり取材するとともに、同社から係属中の訴訟一覧、訴状、行政文書などの提供を受けた。YouTube動画「あの時、何が起きていたのか」では、10月6日に実施した取材模様を紹介している。
大阪市には1円の国賠
直近では9月14日、薫製倶楽部が大阪市を被告として岡山地方裁判所に国家賠償請求訴訟を提起した。請求額は1円である。
訴状では、2024年3月27日に大阪市が小林製薬の「紅麹コレステヘルプ」など3品目に対して行った回収命令と、その後のPA(プベルル酸)や青カビを巡る公表について、国家賠償法上の違法性があると主張している。
大阪市は2024年3月27日、食品衛生法6条2号に該当するとして3品目の回収を命じた。訴状では、その判断根拠や、その後の原因究明に関する行政文書の有無などを争点としている。
また森氏側は、同年5月29日の大阪市食中毒対策本部会議資料と、25年3月に厚生労働省へ提出された大阪市食中毒詳報との記載の整合性についても問題を提起している。大阪市は26年9月9日の回答で、5月29日の資料について「プベルル酸を確定的に同定した旨を公表したものではない」と説明している。ところが、食中毒詳報には青カビについて「その産生物からプベルル酸が検出された」と記載している(同詳報「2 本市が実施した取組の結果(2)大安研における微生物検査及び理化学検査」)。森氏は両者は両立しないと主張している。
厚労省、消費者庁も対象
薫製倶楽部がまとめた係属訴訟一覧によると、最も早く提起したのは厚生労働省の対応を巡る国家賠償請求訴訟で、岡山地裁の令和8年(ワ)第448号として係属している。請求額は5,000万円で、同社は損害の一部請求としている。
同社は、厚労省が2024年3月28日に紅麹原料の販売先などとして企業名を公表したことや、その後の対応によって損害を受けたとして争っている。森氏は、自社が使用していた食品用紅麹原料「5P-D」では、小林製薬の分析で「成分X」が37ロットすべてから検出されなかった点などについて指摘している。
6月29日には、厚労省が開示した「BK1、BK2及びPA:ラットを用いた7日間反復経口投与毒性試験 最終報告書」のうち、試験施設や試験受託者名などを不開示とした処分の取消しを求めて、国を相手に岡山地裁へ提訴した。
事件番号は令和8年(行ウ)第16号。第1回口頭弁論は10月6日に予定されている。同訴訟についてはすでに、「紅麹サプリ事件、種と株に新論点 5P-Dは成分X不検出、森氏が原因究明に疑義」としてウェルネスデイリーニュースで報じている。
さらに9月4日には、消費者庁の対応を巡って国を相手に、1円の国家賠償請求訴訟を岡山地裁に提起した。事件番号は令和8年(ワ)第849号。
森氏は、消費者庁がPAという用語を使用した情報発信について厚労省資料の配布・引用と説明する一方、厚労省が「PAを原因物質として位置付け、公表した事実はない」と回答している点などを問題としている。訴状では、こうした点を指摘した後も消費者庁が説明や訂正を行わなかったことが国家賠償法上違法だと主張している。
小林製薬にも損害賠償請求
このほか、薫製倶楽部は小林製薬㈱と小林製薬バリューサポート㈱を相手に損害賠償請求訴訟を提起している。当初は岡山地裁に提訴したが、その後大阪地裁に移送され、令和8年(ワ)第9047号として係属している。
薫製倶楽部側は、小林製薬からの自主回収要請によって自社製品の回収を余儀なくされ、取引停止などの損害を受けたと主張。主位的請求として3,690万円、予備的に1億円を請求している。大阪地方裁判所は編集部の取材に対し、第1回口頭弁論期日を第三者に公開することはできないとし話しているが、原告側からの情報によれば、10月22日午後1時30分に1回目の公判が開かれるという。
10月に4件の期日
森氏から提供された一覧によると、10月には不開示処分取消訴訟を皮切りに、厚労省関係の国家賠償請求訴訟、消費者庁関係の国家賠償請求訴訟、小林製薬に対する損害賠償請求訴訟の期日が相次いで予定されている。
各訴訟については、いずれも薫製倶楽部側の主張に対する被告側の反論や司法判断が今後示されることになる。
森氏へのインタビューと、一連の訴訟の背景となった行政文書や原因究明を巡る論点については、『Wellness Monthly Report』100号(10月10日刊)の特集「紅麹サプリ事件とは何だったのか」でも詳しく報告する。

【田代 宏】

