紅麹サプリ事件、種と株に新論点 5P-Dは成分X不検出、森氏が原因究明に疑義
小林製薬㈱の『紅麹コレステヘルプ』による健康被害問題を巡り、食品用紅麹を使用してきた㈱薫製倶楽部(岡山県早島町、森雅昭社長)が、原因究明の過程で微生物の「種」と「株」がどこまで区別されていたのかという問題を提起している。 ウェルネスデイリーニュース編集部は6日、森社長を訪ねて話を聞いた。
森氏が原因究明を巡る論点として特に重視しているのが、小林製薬が紅麹原料の製造に使用していたとする特定の菌株「BP-412株」である。同氏は、同じ種に分類される微生物でも株によって性質や代謝産物が異なる可能性があるとして、Monascus pilosus(M. pilosus)という「種」だけでなく、実際に製造に使用されたBP-412株そのものを検証する必要があったと主張する。

※BP-412株に関する特許公報。請求項3にはM. pilosus NBRC4520への紫外線照射、スクリーニングによる菌株取得方法が記載されている
食品用5P-D、37ロットで成分Xゼロ
森氏がこうした問題を追及する出発点にあるのが、自社が使用していた食品用紅麹原料「5P-D」を巡る経緯である。
小林製薬は2024年3月25日付の「紅麹関連製品の使用中止のお願いと自主回収のお知らせ(第2報)」で、企業向けに販売した紅麹原料のうち、「紅麹コレステヘルプ」等に使用したものとは異なる紅麹原料について、「当社の想定していない成分は含まれていないことを確認済み」としていた。ただし、「5P-D」などの対象品番は3月29日の更新で追記されている。
さらに、小林製薬が3月28日に厚生労働省の調査会へ提出した資料「【厚生労働省 調査会】弊社紅麹関連製品 自主回収に伴う状況報告書」では、企業向けに販売していた紅麹原料を品番ごとに分析。このうち5P-Dについては、保存期間3年以内の原料37ロットすべてを分析し、「成分X」の検出は0だった。

※小林製薬の2024年3月28日提出資料。5P-Dは37ロットすべてを分析し、成分Xの検出は0(森氏提供)
同じ資料で小林製薬は、健康被害が報告された製品H306に使用した紅麹原料から分取した「ピークX」について、NMRや質量分析などを行い、Puberulic acid(プベルル酸、PA)と同定したと報告している。

※小林製薬は、H306に使用した紅麹原料からピークXを分取しPAと同定したと報告(森氏提供)
森氏は、食品用紅麹と健康被害が生じた製品に使用された紅麹原料を一括して捉えるのではなく、それぞれの菌株や原料、製造工程を区別して検証する必要があると訴える。
「種」だけでなく「株」も
森氏によると、小林製薬が使用していたのはM. pilosusという種一般ではなく、BP-412と呼ばれる特定株だった。同氏は、問題が生じたのであれば、実際に使用された株の性質を調べるべきだったとする。
また、原因究明の過程で確認された青カビについても、「種」の同定と個々の「株」の性質は区別する必要があると指摘している。紅麹菌側ではM. pilosusとBP-412株、青カビ側では原因究明の過程でPA産生との関係が示されたPenicillium adametzioidesと個々の株を分けて検証すべきだったというのが森氏の主張である。
青カビでは株・系統を調査
「種」と「株」を巡っては、その後、行政・研究側でも「株」や「系統」に着目した調査が進められている。
2025年9月の食品衛生基準審議会の部会では、Penicillium属428株についてPA産生性を調べ、産生が確認されたのは5株、1.2%だったことが報告された。食品関連メーカー由来のPA産生3株については、小林製薬由来とは異なる系統で、3株は遺伝的に2系統に分かれたという。研究者からは、系統によってPA産生量に差がある可能性にも言及があった。
つまり、少なくともその後の調査では、Penicillium属を一括りにせず、株や系統の違いも調査対象としていたことになる。
ただ森氏は、小林製薬の製造に使用されたとするBP-412株について、原因究明の過程でその特性をどこまで直接検証したのかを問題視している。
PAについても、3月28日に小林製薬がPAと同定したピークXと、その後の動物試験でPAとして使用された試料がどのようにつながっているのかなど、なお検証すべき点が残されていると主張している。編集部も、森氏の見解と行政文書などから確認できる事実を区別しながら検証を続けている。
森氏はこれまで、約200件に及ぶ行政文書の開示請求を行った上、厚生労働省に対して不開示決定の取り消しを求める訴訟を提起している。訴訟で取消しを求めているのは、「BK1、BK2及びPA:ラットを用いた7日間反復経口投与毒性試験 最終報告書」のうち、試験施設や試験受託者の名称などを不開示とした部分。同報告書では試験委託者を小林製薬としている。厚労省は、試験施設や法人名について、公にすることで法人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとして不開示とした。

※黒塗り部分が不開示該当箇所
森氏へのインタビュー内容については、『Wellness Monthly Report』100号(10月10日刊)の特集「紅麹サプリ事件とは何だったのか」でも報告する予定。
【田代 宏】

