1. HOME
  2. 特集
  3. 行政が引いた線と現場の隙間を埋める 日健工とJAOHFA、それぞれの営みと役割(後編)

行政が引いた線と現場の隙間を埋める 日健工とJAOHFA、それぞれの営みと役割(後編)

 錠剤やカプセル剤など、サプリ形状の機能性表示食品のGMP遵守義務化の完全施行(2026年9月1日)に向けた業界団体の取り組みはどうか。GMPの要求事項は法令の内閣府告示で規定。また、それを踏まえた「自己点検表」を消費者庁が用意している。ただ、どこまで実施すれば適合していると判断できるのかという具体的な目安や、詳細な解釈までは示されていない。そのため行政が引いた線と、製造をはじめとする現場の実務の間には、どうしても隙間が生じる。その隙間を埋めようとする2つの業界団体に取材した。

【編集部より】本記事は、ウェルネスニュースグループが発行する会員限定専門誌『ウェルネスマンスリーレポート』2026年8月号(第98号、同月10日発刊)の特集「サプリGMP、『義務』の時代」内に掲載したものです。前後編の2回に分けて全文を公開します。今回は後編。前編はこちら。

GMP巡る解説・事例集 JAOHFAが示した解

 「GMP要件化等に関する製品製造と原材料に関する用語の解説・事例集 第1版」──こんな題名の資料が先ごろ限定的に公表された(追記:その後9月28日に一般公開。同月30日付既報)。

 まとめたのは、健康食品業界5団体のほか関連事業者らで構成される業界団体の(一社)健康食品産業協議会(JAOHFA)。6つの分科会のうち、健康食品原材料・製品の製造・品質分科会に置かれた「GMPチーム」の成果物。前述(前編)の日健工(日本健康食品工業会)の取り組みとは異なる方向性で取りまとめられたものだ。

 「すみ分けはできていると思います。日健工では製造現場の担当者が『明日から何をするか』まで分かるように、具体的な手順を示したSOP(Standard Operating Procedure=標準作業手順書)に近い資料の作成を進めています。それに対してこちらは、サプリ形状の機能性表示食品のGMP要件等に関する文字どおりの『用語の解説・事例集』です。これまでに行政が公表した複数のGMP関連資料中の用語を解説しつつ、特に分かりにくい項目に対する考え方を示しながら、具体的な事例にまで踏み込んだ解説を行っています。日健工は、こちらとの整合性も確認しつつ作業を進めています」

 こう話すのは、前掲(前編)の河野氏(アピ㈱取締役R&D本部長)。同氏は、日健工のワーキングチームのリーダーを務めつつ、JAOHFA製造・品質分科会副分科会長の立場で「解説・事例集」の作成に携わった(前編参照)。いわばGMP義務化を巡る両団体の取り組みをつなぐ調整役だ。

原材料から届出者まで射程の広い59ページ

 どんな内容になっているのだろうか。「用語の解説・事例集」の公開範囲はJAOHFAの正会員企業に限定されているため、多くの業界関係者にとって未知の資料だ(追記:前述のとおり現在は正会員以外にも公開)。JAOHFA製造・品質分科会GMPチームリーダーを務める藤澤賢司氏=一丸ファルコス㈱開発部フードテクノロジー課チーフに尋ねた。

 まず、ページ数は全59頁。「サプリ形状の機能性表示食品のGMP義務化は告示や自己点検表だけでは完結せず、届出に関する告示や手引きのほか、『3.11通知』の本体や関連事務連絡など、複数の資料にまたがっています。そこで、それらを総合的に読み解く構成としました」(藤澤氏)。

 全8章で構成。第1章の「はじめに」から第8章の「関連法規のまとめ先及びリンク先」までをつなぐのは、「用語の解説」(第3章)、「錠剤、カプセル剤等食品の製造管理及び品質管理(GMP)自己点検表 【機能性表示食品用】に関する解説」(第5章)、「原料受入れの考え方について(原料受入れフローチャート)」(第6章)、「サプリメント形状の機能性表示食品における機能性原材料で適合が望ましい要件に関する手引きver.1.0」(第7章)──など。OEM/ODMメーカーなど最終製品の製造・加工事業者に限らず、原材料事業者から届出者(最終製品販売会社)まで幅広い利用を想定して作成されたことが分かる。

 およそ2年間をかけてまとめた。作成体制は、GMPチームを「OEM班」「原料班」「統合班」の3つに分け、OEM班は、製造現場が自己点検表を使う際に特に迷いやすい項目を抽出して考え方や具体例を整理した。

 「製造事業者だけでは対応できず、原材料事業者や届出者などから情報提供を受ける必要のある事項も記載しました。原材料の来歴や安全性に関する情報が製造側へ十分に伝わらなければ、適切な受入れや製造管理は難しい。サプライチェーン上の協力を求める内容となっています」(同)。

 また、原料班は、原材料供給の立場から、原材料の同等性・均一性をどう考え、どのような情報を提供すべきかを整理。

 「原材料は今回のGMP義務化の直接の対象ではありません。ただ、製造事業者が原材料を適切に受け入れるためには、原材料供給側からの情報が必要不可欠です。原材料のメーカーや商社に対して、どのような情報提供が期待されるかを示しました」(同)。

 そして統合班は、OEM側と原材料側をつなぐ、原材料受入れフローチャートを作成した。これは、原材料が工場に入荷した際、適用範囲や必要な情報を順に確認しながら、受け入れ可能か、追加確認が必要かを判断できるようにしたものだ。

 「例えばパターン分析に若干の差が生じた場合、差があるというだけで機械的に返品するのではなく、その差が何を意味するのかを検討する必要があります。(告示上)義務ではない確認事項もあるため、すべてを一律に決めることはできませんが、一定の判断の道筋を示しました」(同)。

目先の義務化を超えて持続可能な制度のため

 このように中身が濃そうな成果物の公表範囲を、なぜJAOHFA正会員だけにとどめているのか。JAOHFAの各分科会は、これまでに機能性表示食品制度への事業者対応などを巡る複数の成果物を取りまとめ、正会員に限らず健康食品業界に広く公表し、活用を促してきた。それにもかかわらず、なぜ、これに関しては公開範囲を制限しているのだろうか。

 製造・品質分科会長の大曲泰史氏=ユニキス㈱品質・技術開発部長(常務取締役執行役員)によると、公表範囲がJAOHFA正会員に限られている背景には、単なる会員サービスではない事情がある。

 もともと広く業界に活用してもらうことを想定して作成していたが、公開範囲を制限すべき事情が生じた。事情とは、目の前に迫るサプリ形状の機能性表示食品のGMP義務化の完全施行に対応するだけでなく、業界全体のGMP管理水準の向上に関わるものだった。というのも、食品衛生法に紐づけられている「3.11通知」のGMP指針と、サプリ形状の機能性表示食品に関するGMP基準(告示)との間には、要求事項に差があるからだ。「時間をかけてでもレベルアップしていく必要がある」。その考えは、大曲氏としても理解できるものであったという。同氏はこう話す。

 「我々としても、目の前の義務化対応だけで業界のGMP水準が完成するとは考えてはいません。業界全体として改善すべき課題は多く、時間をかけてレベルアップしていく必要がある。ただ、目の前の義務化に対応するために、現場が迷わないようにする資料は必要ですから、その役割を果たしたいと思っています」

 その上で、原材料をはじめ、グミやチョコなど菓子形状のサプリメントにもGMPを義務付けるべきだとする声が業界内外から上がっていることについて、同氏は取材にこう語った。

 「我々の今後の活動では、まず、意識改革が必要だと考えています。『GMPはできない』とする意見がある一方で、なぜできないのか、何が障壁なのかについて、業界内で十分な議論が行われているとは言い難いと思います。

 だからといって、義務が課されていない分野に対し、上から一方的にGMPの実施を迫るようなことがあってはならない。そうではなく、まずは関係事業者が課題を共有し、できるところから進める必要がある。原料メーカーであれば、いきなり製造事業者と同じGMPを求めるのではなく、同等性や均一性の確認や必要な情報の提供など、実行可能な対応から始めることが考えられると思います。

 現在は、受託製造事業者ばかりが(規制の)矢面に立っています。しかし、制度を持続可能なものにするためには、原材料のメーカーや商社から販売事業者までを含むサプライチェーン全体で役割を分担しなければなりません。自らがサプライチェーンの一員であり、GMP対応を支える立場にあるという意識を持つことが大事だと思います。そうしたことを現場担当者だけでなく、経営層が理解すれば、GMP対応は業界全体で大きく進む可能性があります」

(了)

【石川太郎】

【特集】サプリGMP、「義務」の時代
関連記事:①20年余の「任意」経て始まる「義務」 射程は食品衛生法上の「サプリメント」まで
    :②<インタビュー>サプリ機能性表示食品、GMP適用 義務は届出者、実務は製造者 消費者庁・保健表示室長「連携が不可欠」
    :③<業界団体の取り組み>行政が引いた線と現場の隙間を埋める 日健工とJAOHFA、それぞれの営みと役割(前編)

TOPに戻る

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

INFORMATION

お知らせ