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ミルク由来×睡眠の質 【機能性素材フロントライン】機能性表示の舞台に上がった「ラクティウム」を深掘り

 乳を飲んだ赤ちゃんが安らぐのはなぜか──そんな疑問をきっかけに海外で開発された機能性食品素材がある。酪農組合を母体とするフランスの乳由来素材メーカー、イングレディアが開発、製造する「ラクティウム」。

 乳たんぱく由来の機能性食品素材。「ミルクペプチド」と呼ぶこともできる。海外における主な用途は、ストレスをはじめ睡眠のケアを訴求(表示)するサプリメントの原材料。日本でも、海外と同様に10年以上前から利用されている。だが、海外のように機能性を消費者に直接伝えることができなかった。

 それが一転。機能性表示食品制度の土俵に乗ったことで、まずは睡眠の質の向上を求める消費者や生活者に直接リーチできる環境が整った。「ミルク由来×睡眠の質」。良いイメージ。

機能性関与成分「デカペプチド」の正体

 消費者庁が2026年6月9日に行った機能性表示食品の届出情報検索データベース更新。新たに情報公開された計15件の届出の中に「デカペプチド」という新規の機能性関与成分が含まれていた。機能性表示の内容はこうだ。

 「デカペプチドは、日常的な生活で一時的に睡眠時間が足りないと感じている方の睡眠の質(寝つきのよさ、眠りの深さ)の向上をサポートする機能があることが報告されています」

 デカペプチドとは何か。10個(デカ)のアミノ酸からなるペプチドを意味するこの機能性関与成分は、乳たんぱくの一種、カゼインの加水分解物に含まれているペプチドのことだ。

 具体的には、チロシン-ロイシン-グリシン-チロシン-ロイシン-グルタミン酸-グルタミン-ロイシン-ロイシン-アルギニンで構成されるペプチド。それを約2%含むカゼイン加水分解物が、本稿で取り上げるラクティウムである。

機能性表示で先行したお隣、韓国

 開発背景はこうだ。開発・製造元のイングレディアによると、乳を飲んだ乳児が消化過程を経て落ち着く様子に着目したのが原点。それから「長年の研究」を経て、乳児の消化メカニズムをヒントにした独自プロセスを開発、トリプシンという既知の消化酵素を用いてカゼインを加水分解し、生理活性ペプチド(デカペプチド)を含む乳たんぱく加水分解物を得ることに成功したという。

 では、どのような生理活性を持つのか。生体内に存在するGABA受容体のうち、GABAA受容体にあるベンゾジアゼピン結合部位に親和性を示すことが確認されている。それを介して神経の興奮を抑える方向に働くと考えられるという。

 こうした開発背景と生理活性を持つラクティウムの製造販売の開始は、2000年代前半だったとみられる。そして2010年までに、査読付き学術誌にその機能性を報告する臨床試験論文が少なくとも2報、発表されている。

 2007年には、ストレス関連症状を持つ女性63人を対象にした二重盲検クロスオーバー試験の結果が『ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション』に掲載された。そして同年、日本のお隣、韓国の健康機能食品制度下で、機能性表示(個別認定)が許可。表示が認められた機能性は、ストレスによる緊張の緩和である。

 韓国では、ラクティウムを配合した健康機能食品がわりとポピュラーであるようだ。前述の個別認定された機能性表示は現在までに告示型化されているという。

 また、2020年には、ストレスによる緊張緩和に続き、睡眠の質改善の機能性表示が許可された。その前年には、韓国人48人を対象にしたランダム化比較試験(RCT)の結果を伝える論文が『Nutrients』に掲載されている。睡眠日誌で総睡眠時間や睡眠効率の改善などを報告する内容だった。

 この論文に加え、後述する届出者が日本で実施したRCTに関する論文の計2報を採択したシステマティックレビュー(SR)を科学的根拠とするのが、ラクティウム由来デカペプチドを機能性関与成分とする機能性表示食品の届出である。睡眠の質を巡り、近年の韓国において機能性表示が許可されているという事実は、ラクティウムの安全性や機能性に関するエビデンスに対する信頼を裏付ける1つの根拠になるのではないか。

実はペットサプリ分野で高い需要

 ところで、このラクティウム由来デカペプチドには、別の呼び名もある。「α-カソゼピン」。

 『ジルケーン』という、犬・猫向けのサプリメントが国内外の動物病院等で販売されている。フランスを拠点とする動物用医薬品メーカー大手のベトキノールの製品だ。リラックスやストレス緩和の機能があるとされるペットサプリだが、これに配合されているのがα-カソゼピン。つまり、同成分を含むラクティウムである。

 「日本でもペット向けで伸びています。人だけでなく、犬や猫を対象にしたエビデンスをメーカー(イングレディア)がしっかり取っていることもあって、いまは6対4ぐらいの割合で人向けよりも(販売量が)多い状況でしょうか。これが7対3にならないよう、今後は機能性表示食品として人向けの販売を増やしていきます」

 イングレディアとの契約に基づき、ラクティウムの国内販売を独占的に手がける㈱サンブライト(東京都中央区)の担当者がそう話す。ラクティウムの睡眠の質改善機能を検証するRCTを国内で実施して2024年に論文発表しつつ、前出の機能性表示食品の届出を行ったのが同社。表示する機能性の科学的根拠として届け出たSRの主宰者でもある。

アプリケーション、サプリから飲料まで

 同社がラクティウムの取り扱いを始めたのは、2012年頃。「赤ちゃんが母親の母乳を飲むと安らぐのはなぜか、という分かりやすい開発ストーリーがあり、その上で乳由来であるというイメージの良さもあって、以前から関心を持たれていました」(同)と語る。

 また、「機能性表示を行えるようになることを待ってくれていたお客様もいます。時間はかかりましたが、(日本での本格的な普及は)これからです」とも。

 同社によると、海外ではラクティウムを配合した食品が多く存在する。その形状は、錠剤やカプセル剤などのサプリメント形状から、チョコレートなどの一般食品やドリンクまで幅広い。食品添加物の販売を基幹事業とするのが同社である。案外、一般加工食品の分野から採用が進んでいくのではないか。

【石川太郎】

シリーズ「機能性素材フロントライン」
【第1回】GLP-1&筋肉、韓国素材の新知見 DNF-10&CoreBlast5

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