牛肉個体番号、不適正表示相次ぐ 新開産業で今年6件目、前年の勧告数に並ぶ
牛肉の個体識別番号を巡る不適正表示が相次いでいる。農林水産省近畿農政局は15日、㈱新開産業(兵庫県神戸市、岡下鉄兵社長)が、特定牛肉に事実と異なる個体識別番号を表示したり、番号を表示せず販売したりしていたとして、牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法(牛トレーサビリティ法)に基づき表示の是正や原因究明、再発防止などを勧告した。
農水省が公表している指示・勧告の実績をウェルネスデイリーニュース編集部が確認したところ、牛トレーサビリティ法に基づく公表・勧告事案は、今回の新開産業で今年6件目となった。2025年に公表された事案も年間6件で、今年は9月15日時点ですでに前年と同数に達している。
誤った番号、存在しない番号、無表示
近畿農政局は今年1月21日~8月26日、新開産業に対して牛トレーサビリティ法に基づく立入検査などを実施した。
その結果、特定牛肉に事実と異なる個体識別番号を表示し、少なくとも2024年3月22日~10月28日に829.20kgを外食事業者などに販売していたことを確認した。
また、個体識別番号として存在しない番号を表示し、少なくとも23年10月11日~24年10月25日に87.60kgを外食事業者などに販売。個体識別番号を表示しないまま、少なくとも23年10月2日~24年10月29日に6,320.37kgを加工製造業者などに販売していた。
農水省は、これらの行為が牛トレーサビリティ法第15条第1項に違反すると認定した。
今年に入り6事案を公表
牛の個体識別番号を巡っては、今年に入って不適正表示に対する勧告が続いている。
1月23日には、北海道農政事務所が㈲石堂精肉店(札幌市)に勧告した。同店は個体識別番号を表示しないまま、少なくとも2020年5月~25年5月の約5年間にわたって特定牛肉を一般消費者に販売していた。
3月10日には、九州農政局が㈲水迫畜産(鹿児島県指宿市)に対し、食品表示法に基づく指示と牛トレーサビリティ法に基づく勧告を行った。同社は異なる個体識別番号を持つ複数の原料牛肉を使用しながら、1つの個体識別番号のみを表示していた。牛種や原産地についても事実と異なる表示が確認された。
同17日には、九州農政局が㈱エムズ(福岡市)に勧告。同社は個体識別番号を表示しない、または事実と異なる番号を表示し、少なくとも24年10月~25年10月に計5,191パックを一般消費者に販売していた。
7月14日には、北海道農政事務所が㈱ミート前田(札幌市)に勧告。事実と異なる個体識別番号を表示した特定牛肉1,455.69kgを外食事業者などに販売したほか、113.81kgを番号を表示せず外食事業者へ販売していた。札幌市も同日、牛肉の原産地を事実と異なる内容で表示したとして、食品表示法に基づき是正を指示している。
さらに9月8日には、東海農政局が㈱レスト関ヶ原(岐阜県関ケ原町)に勧告した。同社が経営する「鉄板ダイニング天満」で提供した「フィレステーキ鉄板焼」など3品について、主な材料となる特定牛肉の一部の個体識別番号を表示せず、少なくとも25年8月~26年4月に57.2kg、632人前を提供していた。
そして今回の新開産業で、今年の公表・勧告事案は6件となった。
前年も6件、繰り返される未表示・誤表示
農水省の公表実績によると、2025年にも、㈲ヒロムラ、㈱エーコープ京都中央、㈱牛寅食品、松井精肉店、㈱繁田総本店、㈲牛若の計6件について、牛トレーサビリティ法に基づく措置が公表されている。 公表事案は前年と同数に達し、個体識別番号の未表示や事実と異なる番号の表示が繰り返し確認されている。

※農林水産省および地方農政局の公表資料を基に編集部が作成。2026年は9月15日現在の状況。
事案の内容はそれぞれ異なるものの、25年の6事案では個体識別番号の未表示を含むものが4事案、事実と異なる番号の表示が2事案だった。26年も9月15日までの6事案のうち、未表示を含むものが4事案確認されている。
ウェルネスデイリーニュースでも、繁田総本店では外食事業者向けに1,150.67kgを個体識別番号を表示せず販売したほか、一般消費者向けに少なくとも114パックを番号なしで店頭に陳列していたことを報じている。エムズでは未表示と誤表示の双方が確認され、ミート前田でも同様に誤表示と未表示が確認された。
農水省は、不適正表示を確認した場合には行政措置を行い、公表することを基本としている。ただし、常習性がなく、過失による一時的なものであることが明らかで、改善方策を講じている場合には指導を行う。このため、公表された勧告件数が、そのまま牛トレーサビリティ法違反全体の件数を示すものではない。
新開産業にも管理体制の不備指摘
今回、農水省は新開産業に対し、現在保有する特定牛肉の個体識別番号を直ちに点検し、不適正な表示があれば是正した上で販売するよう勧告した。すでに不適正表示で販売した牛肉については、販売先にその事実と適正な個体識別番号を伝えるよう求めた。
不適正表示の主な原因については、正しい情報を提供する意識や牛トレーサビリティ制度に対する認識の欠如に加え、不適正表示を防止する管理体制や商品管理システムの不備が考えられると指摘。原因の究明・分析、責任の所在の明確化、管理体制・商品管理システムの整備、全役員・従業員への制度の啓発と遵守徹底を求めた。
同社は、講じた措置を報告書に取りまとめ、10月15日までに農林水産大臣へ提出しなければならない。
【田代 宏】

