消費者契約法、取りまとめ大筋了承 解約料規定は見直し見送り、継続検討求める声多数
消費者庁は9日、第9回「現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会」(座長:山本隆司東京大学大学院法学政治学研究科教授)を開催した。第8回の議論を受けて修正した中間取りまとめ案について協議した。
消費者の多様な脆弱性に対応する配慮規定の法的効果や、継続的契約の変更時の通知、解約料などを巡り意見を交わした結果、消費者契約法9条1項1号の見直しは今回は行わないとする方向が維持されたが、複数の委員が今後も検討を続けるよう求めた。検討会は中間取りまとめ案の大きな方向性を了承し、最終的な修文を山本座長に一任した。
配慮規定、法的効果巡り議論
中間取りまとめ案では、消費者が安心・安全に取引できる環境の実現に向け、多様な「消費者の脆弱性」に着目した配慮規定をプリンシプル(行動規範・行動原則)として消費者契約法に設ける方向を打ち出した。行政が指針を策定し、その策定・改定について協議する官民協議会を組織する考えだ。
第9回では、配慮規定について「法的効果をもって直接的に強制することには馴染まない」とした案の記述が議論となった。
カライスコス・アントニオス委員(龍谷大学法学部教授)は、障害者差別解消法や不当寄付勧誘防止法などでは抽象的な規範と法的効果を結び付けた例があるとして、「馴染まない」と一般化して記載することで、将来の制度設計の可能性を狭める恐れがあるとの考えを示した。
これに対し山本座長は、今回の配慮規定は指針や官民協議会、消費者側の意見、事業者の自主的な取り組みを含む全体の仕組みの中で機能させるものだと説明。現段階で記述を変更することには慎重な考えを示した。
中間取りまとめ案の脚注には、配慮規定や指針に著しく反する行為を反復・継続し、重大な消費者被害を生じさせている場合、消費者庁と所管行政庁が連携し、所管法令に基づく調査や指導・勧告・公表、業法上の処分につなげる仕組みを検討すべきとの意見も盛り込まれている。
契約変更、個別通知を義務化へ
継続的な契約については、消費者が契約から離脱する機会を確保するための規律を整備する。
契約の重要事項を変更する場合について、中間取りまとめ案では、事業者が消費者に「個別に通知しなければならない」とする方向を明記した。
坪田郁子委員(全国消費生活相談員協会)は、継続的な契約では消費者、事業者双方の状況が変化するため、適時・適切な通知や連絡がトラブル回避につながると指摘。契約変更時の個別通知を義務とする方向に賛成した。
解約妨害については、解約の申し入れを拒絶したり、不当に遅延させたりする行為などを禁止する方向を維持した。ただ、第8回案にあった解約妨害に対する効果についての一部記述は削除された。
二之宮義人委員(弁護士)がその理由を事務局に求めたところ、消費者庁は一部の類型では想定した規律が成り立たない場合があることが検討の中で分かったためと説明。「脚注31」において指摘があったことを追記したとした。
今回の修正について、加毛明委員(東京大学大学院法学政治学研究科教授)が見解を述べた。
第8回に示された案には「書き方に問題がある」との認識を示し、十分な説明ができない部分を削除し、脚注を追加した修正を「望ましい」と評価した。
その上で、事業者が消費者から解約の意思表示を受け取らないなど、解約を困難にする仕組みを設けていた場合について言及。消費者契約法に明文の規定がなく、意思表示が到達していないため解約権が行使されていないと評価される場合でも、事業者が「解約権の行使がなかった」と主張することが、信義則などによって否定される可能性があるとの考えを示した。
第8回の中間取りまとめ案については、こうした民事訴訟による解決まで封じるように読める余地があったと指摘。今回の修正によって、消費者契約法の規定とは別に、既存の民事法上の解釈による解決の可能性が残されていることが明確になったとの認識を示した。
前回指摘した条件成就を妨害した場合の規律に加え、解約を妨害した事業者に対し、「解約権の行使がなかった」との主張を認めないという民事法上の考え方も確認しておく必要があると述べた。
解約料規定、今回は見直し見送り
大きな論点となったのが、消費者契約法9条1項1号の解約料規定である。
第8回では、現行規定の「平均的な損害」を巡る立証の難しさに対応するため、事業者側に立証責任を負わせるA案や、消費者と事業者に立証責任を分配するB案、両案を踏まえた折衷案などを巡って議論した。
今回の中間取りまとめ案は、これらの案を検討経過として残しながらも、「今回は同法第9条第1項第1号の見直しは行わず」、まず事業者による解約料の説明に関する制度を拡充する方向とした。
これに対し二之宮委員は、第8回では9条1項1号について引き続き検討すべきとの意見が複数出ていた。にもかかわらず、今回の修正案では「今回は見直しは行わず」と改められたものの、今後の検討について触れられていないと問題提起した。
特商法の検討会でも中間取りまとめが行われ、消費者契約法についても法改正のスケジュールを考えれば、現時点で中間取りまとめを行う必要性は理解できる。また、解約料の問題だけを取り上げて検討会で議論を継続することが適切ではない点にも理解を示しつつ、解約料を巡る課題は多いものの、「諦めてもよい問題ではない」と指摘。官民協議会で得られる知見を踏まえて新たな案を検討できる可能性もあるとして、第9条第1項第1号の見直しについて「今後も検討が必要」と中間取りまとめに明記するよう求めた。
具体的には、委員間で共通認識が形成されていないとの記述に「さらに検討するべきという意見もあった」と加えることを提案。さらに、「9条1項1号の見直しは今後も検討が必要であるが、検討課題が多岐にわたるため、本検討会では9条1項1号は見直しの対象とせず」と修正するよう求めた。
平井俊圭委員(全国社会福祉協議会)も、A案、B案、折衷案が中間取りまとめに残されたことを評価しながら、消費者側の立証困難という長年の問題は解決していないとして、検討をここで終わらせないよう求めた。
坪田委員も、配慮規定と同様に官民協議会等で検討し、今後も継続して考えていくことに期待するとの考えを示した。
佐藤沙織委員(味の素)ら事業者側からは、立証責任の転換による説明コストや事務負担、価格転嫁を通じた消費者への影響などを踏まえ、新たな規律の導入には慎重な検討が必要との意見が出た。
山本座長は、消費者契約法9条1項1号がこれまで果たしてきた役割について、解約料の実態に即して検討・分析することが有益との趣旨を、最高裁判決を記載した「脚注44」に追記する方向を示した。
官民協議会で市場改革へ
検討会では、中間取りまとめが目指す消費者法制度の「パラダイムシフト」についても意見を交わした。
二之宮委員は、今回の検討について、従来の直接的な民事効果を中心とした仕組みとは異なり、関係主体の共創・協働を通じて健全な市場を形成する新たなアプローチだと評価。官民協議会について、自主規制に取り組む事業者とそうでない事業者の違いが市場で評価される仕組みとして機能することに期待を示した。
今後、事務局は議論を踏まえて文言を整理し、近日中に中間取りまとめの公表へ向けて手続きを進める。
【田代 宏】
配布資料はこちら(消費者庁HPより)

