1. HOME
  2. 健康食品
  3. 旧統一教会問題、実態解明へ山動く 提言受け、予算委で首相が「法改正必要」

旧統一教会問題、実態解明へ山動く 提言受け、予算委で首相が「法改正必要」

 8月29日から10月13日まで、7回に及んだ有識者会議「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」(霊感商法等検討会)の審議について消費者庁は17日、報告書を取りまとめて公表した。報告書には法制度の見直しなど5項目にわたる提言が盛り込まれた。

消費者庁「報告書」で5つの提言

 提言として示されたのは、①解散命令請求も視野に入れ、宗教法人法に基づく報告徴収および質問の権限を行使する必要がある、②霊感商法等による消費者被害の救済の実効化を図るため、取消権の対象範囲を拡大し、その行使期間(原則1年)を延長するための法制上の措置を講ずる、 ③寄附に関する被害の救済を図るため、公益社団法人や公益財団法人の認定に関する法律の規定を参考に、寄附の要求に関する禁止規範とその効果を定めるための法制化を検討する、④相談対応に関して、より多くの関連分野の専門家と連携を図り、児童虐待からの保護や宗教2世に対する支援を行う、⑤周知啓発・消費者教育に関して消費者被害に関する情報を迅速に公表し、消費生活センターの存在の周知を強化、また、高校生を含めた消費者教育の過程で霊感商法などに関する情報を伝える――の5つ。

 その他、「献金に関する上限規制」、「財産保全・管理制度の創設」、「調査権・改善命令の創設」、「税優遇措置の剥奪のための法整備の検討」、「会社法の解散命令の運用強化」、「特定商取引法の執行の充実」、「目的を秘匿した勧誘に対する規制の新設」など、検討会の議論で積み上げられた指摘事項も報告した。
 報告書は「提言を踏まえた施策をスピード感を持って着実に実施すべき」、「現行法の改正、新法の制定による対応を早期に行うために、消費者庁の所掌事務の範囲を超える事項については、消費者庁はそれぞれの行政機関における実施を強く働きかけるべき」とした。

 霊感商法等検討会については発足当初、「霊感商法とはあくまで一般論」(消費者庁)とし、開運商法など幅ひろく捉えていくとされていたが、いざ検討会が立ち上がると、河野太郎内閣府特命担当大臣の強いリーダーシップの下、オウム真理教、安愚楽牧場、旧統一教会などの消費者被害と長年にわたり向き合ってきた紀藤正樹弁護士らを委員に迎え、旧統一教会がもたらした消費者被害に的を絞った審議が迅速に進められた。

「法改正必要、至急対応を詰めていく」(岸田首相)

 きのう17日に行われた第210回臨時国会・衆議院予算委員会では、立憲民主党の山井和則委員に旧統一教会による被害救済に対する決意のほどを問われた岸田文雄首相は、「政府が基本的に考えている方針と野党が考えている方針は、かなり重なる部分も多い。手法については政府として有識者会議の様々な意見を踏まえながら具体的に対応を考えていきたい」と述べた。さらに、臨時国会中に被害者救済のための法律を成立させてほしいと迫る山井委員に対し、今国会内という期限については明確な回答を避けつつも、「救済のポイントについては多くの重なる部分があると認識している。そのために法改正が必要だという認識、これも一致している」とし、その具体的な方法について「政府として至急対応を詰めていきたい。そのために作業を急がせ、できるだけ早く結果を出すべく努力をする」と法改正に前向きな姿勢を示した。
 また、同委員の提案による被害者との(短時間の)面談についても、「関係者の方々の思いを直接聞くことが重要だと思う。どなたの話をどういった形で聞かせていただくのか、改めて整理させていただきたい」と答えた。

「調査の途中でも解散命令請求へ」(永岡文科相)

 立憲民主党の大西健介委員は、「質問権を行使した結果、最終的に解散命令請求を行わないという可能性はあるか」と岸田首相に質問。首相に代わって、永岡桂子文部科学相がおおよそ次のように答えた。
 「文部科学省としてはまず、報告聴取・質問権の恣意的な行使が行われないよう、宗教法人審議会を構成する有識者による専門家会議を設置し、その意見も伺いながら報告聴取・質問権を行使する場合の基本的な考え方や基準を速やかに示すこととしている。その上で基準に照らして、旧統一教会に対して報告聴取・質問権を行使することや質問する事項等について、法に基づき宗教法人審議会の意見を聞くことが必要。このような法に定めるプロセスを適正に踏みつつ、最大限速やかに対応することが必要と考えている。政府としては年内のできる限り早いうちに権限が行使できるよう手続きを進める。そして、情報収集の結果として、あるいは情報、報告聴取・質問の手続きの途中であっても解散命令を請求するに足る事実関係を把握した場合には、速やかに裁判所に対して解散命令を請求することを検討していく」。

「最高裁の判例を踏まえて考える」(岸田首相)

 解散命令権を行使しない場合があるのかどうか、大西委員がなおも岸田首相に詰め寄ったところ、岸田首相は「報告聴取・質問権の行使の結果をしっかり把握した上で判断すべきこと。今の段階でそれを判断することは難しい」と答えた上で、「殺人罪が問われたオウム真理教で7カ月と長期間かかっている。今回、民事で組織的な不法行為、これが2件確認をされているが、こうした状況の中でより事実の積み重ねを確認することは必要だと認識している」とオウム真理教の事件に比べても相応の時間がかかるだろうとの認識を示した。
 また、同様の質問に対し、「個別具体的な案件について予断を持って答えることは控える。事実が確認されたら次の手続きに入る」とし、1996年(平成8年)に最高裁で決定した解散命令における考え方について言及。「違法性と組織性、この2つがしっかりと確認されることが重要であるという考え方が明らかにされている」と述べ、最高裁の考え方を念頭に置きつつ対応を考えるとも述べた。

「宗教法人格解散の要件満たす」(公開申入書)

 岸田首相が回答した上記2点と関連する問題点については、全国霊感商法対策弁護士連絡会が文部科学大臣・法務大臣・検事総長宛てに11日に提出した公開申入書に言及されている。
 この中で、文化庁宗務課が一貫して「解散請求が難しい」とする理由の1つとして、オウム事件の高裁決定(1995年)が関係していると指摘している。決定では、「刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反」することについて、「禁止規範又は命令規範」に民法が含まれるのかどうかが判然しないとして、解散請求に対して及び腰になっているというのである。しかし同申入書では、京都大学の故潮見佳男教授の見解などを傍引し、「旧統一教会の伝道活動や献金勧誘行為が違法であるとされた多くの民事判例の判示は、いずれもこれらの行為が『社会的相当性を逸脱』したものであることを理由として民法上の不法行為に該当する」とし、「民法上の不法行為責任及び使用者責任が認められている旧統一教会については、オウム高裁決定の『刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反』したという宗教法人格解散の要件を満たす」と断じている。そして、「社会的不当性逸脱」を理由とする不法行為が社会に対して繰り返されている場合には「反社会的行動」に該当するものとして法令に違反したものと判断すべきと説明している。

 同文書ではさらに、高裁決定は判例として確立していないと追記。「オウム事件の解散請求に対してはオウムからの特別抗告により最高裁の判断が下されているが、そこでの判断は、解散命令が内部信者の信教の自由を侵害することになるかに関するものに限られており、高裁決定による宗教法人法第81条1項(解散命令)の解釈に関する判断ではない」と説いている。

「政府の判断は今も変わらない」(岸田首相)

 解散命令請求の可否についてはきょう18日の衆議院予算委員会で、共産党の宮本徹委員が岸田文雄首相に対して鋭く切り込んでいる。 

 民事裁判における統一教会の責任を認めた判決を踏まえ、岸田首相が質問権の行使を(文部科学省)に指示した件を取り上げ、「解散命令請求についても、民事裁判の不法行為責任は使用者責任を認めた判決を根拠に行える運用に変えるべきではないか」と質問。 質問に対して岸田首相は、1996年(平成8年)の「最高裁の判決を通じて明らか」とし、「その判断は政府としても踏襲しているし、政府としての対応は変わっていない」と答えている。   「(判決の中で)刑法等の実定法規という部分があるが、これは必ずしもこの刑法典のみを指すわけではないものの、典型的にはこの罰則により担保されている刑法等の実定法規の定めるその基本の内容があらかじめ具体的かつ明確に定まっているものであると考えている。この定義に当てはめるならば、民法はこれには該当しないと思っている。例えば、特定商取引法、調査権法とか、外為法、こうした法律がこうした法規に該当するものであると認識している。いずれにせよ政府の判断は変わっていない」。

 矛盾について質問を重ねる同委員に対しても、「先ほど来説明しているように、政府として法の解釈運用これは全く変わっていない。平成8年の最高裁の判決に示されたこの解散命令に至るまでの要件。これは解釈は変わっていないということ。この違法性と、そして組織性、これをしっかり兼ね備えたものでなければならない。こうした判断を踏襲しているところである。こうした法令に基づいて今回の案件についてもしっかりと判断をすること、これがその判断の正当性を裏付ける上でも重要であると考えている」と繰り返している。

【田代 宏】

霊感商法等検討会「報告書」

(冒頭の写真:予算委員会で質問に答える岸田首相)

関連記事:旧統一教会問題、実態解明へ山動く 提言受け、予算委で首相が「法改正必要」

TOPに戻る

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

INFORMATION

お知らせ