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新・需要の創出に向けて(後) 【コラーゲン特集】消費者が求めているのは美容だけ? 

安定した需要は魅力 そこからどう伸ばす?

 新型コロナの影響で落ち込んだ販売量が復調したコラーゲンペプチド。しかし考えたいのは、そこからさらに需要を引き上げることが可能かどうかだ。復調したとはいえ、「コロナ以前の水準にはまだ戻っていない」。そう指摘する原材料事業者も存在する。

 Ⅱ型コラーゲンは、普及啓発を通じた消費認知の向上によって一層の広がりが見込める。コラーゲンペプチドのように、ヘルスベネフィット(機能性)を含めた認知が消費者に浸透しているとは今のところ言えないためだ。

 他方、コラーゲンペプチドは、日本は世界で最も早く美容食品としての普及が進んだこともあり、すでに成熟市場。今後、美容サプリメントや美容ドリンクの市場が成長途上にあると言われるASEAN(東南アジア諸国連合)などに向けた最終製品輸出がさらに増えていくのだとしても、国内市場の広がりはあまり期待できない。

 一方、ここにきて立ち上がってきたタンパク補給は、これまでになかった新たな需要。今後、人口に膾炙していくことが期待されるが、これまでに確かめられてきたコラーゲンペプチドのヘルスベネフィットを消費者に提供するのに適した用途と言えるかどうか。適すのだとしても、タンパク補給のメリットと同時に機能性を伝えていく必要があるのではないか。

 健康食品の機能性を消費者に伝える手段としては、機能性表示食品として消費者庁に届け出ることがある。2015年の制度施行以来、機能性を表示できない一般健康食品から機能性表示食品へのシフトが加速度的に進んでいる。コラーゲンでも届出は進んでいて、Ⅱ型コラーゲンに関しては、コラーゲンの構造を維持する「非変性」も含めて約80件がこれまでに届け出されている(23年4月4日時点)。ほとんど全てがひざ関節に対する働きを消費者に伝えるものだ。

 その一方でコラーゲンペプチドは、40件余りにとどまる。訴求しようとする機能性は「肌の健康維持」に限らないものの、肌に対する働きを訴求する植物由来セラミド(グルコシルセラミド)の届出が170件を超えていることを考えると、いかにも少ない。ヒアルロン酸にしても80件を超えている。市場規模はコラーゲンペプチドの方が圧倒的に大きいにもかかわらず届出件数が少ないのはなぜだろうか。

消費者認知度高いと 機能性表示は不要?

 その理由としてはまず、消費者がコラーゲンに対して抱くイメージに則した機能性を表示しようとする届出を長らく行えなかったことが挙げられる。イメージとは、「肌がプルプル」。つまり肌の「弾力」に及ぼす働きを訴求する機能性表示食品の届出を事業者が行おうとしても、消費者庁が受け付けようとしなかった。肌の弾力向上が健康の維持・増進にどうかかわるのか、疑問符を付けられたためだ。肌の保湿(うるおいの維持)に関しては届出を受け付けていたにもかかわらず。

 そのように整合性の取れない状況が解消されたのは、今から約3年前の20年初頭。制度施行から約5年が経過していた。

 初の届出実績を作った成分はコラーゲンペプチド。以来、もともと届け出されていた保湿と組み合わせるかたちで、「肌の弾力を維持し、肌の健康に役立つ」旨を表示するコラーゲンペプチドを配合した機能性表示食品の届出が増えていった。とはいえ、その増え方は、かなりスローである。

 というのも、消費者庁がようやく肌の弾力に言及する届出を受け付けるようになった一方で、今度は業界から疑問符が付いた。肌に対するヘルスベネフィットが消費者に知れわたっているコラーゲンペプチドに「機能性表示は果たして必要だろうか」という疑問。とりわけ「肌」に関しては、「コラーゲン」と表示するだけで事足りるのではないか──届出が大きく伸びない背景には、そのように考える事業者が少なくないことがある。

研究成果を生かし切れていない現状

 コラーゲンペプチド=美容(肌の健康維持)。今後もそうしたシングル機能を消費者に提案し続けるのであれば現状に不足はない。

 ただ、経口摂取したコラーゲンペプチドが機能性を及ぼす先は、肌にとどまらないことが科学的に検証されている。例えば、ひざ関節。機能性表示食品としても届け出されており、肌の健康維持とひざ関節ケアのダブルヘルスクレームを行うものも見られる。

 また、骨や筋肉を維持する働きを持つことも示唆されている。さらに、爪や毛髪にも機能を及ぼすことが報告されていて、米国では、肌・爪・毛髪を一括りにするかたちでコラーゲンペプチドの美容機能を捉え、訴求されていると言われる。加えて、ヒト対象研究が待たれるが、メンタルの改善や認知機能の維持に働く可能性も報告されている。

 経口摂取したコラーゲンペプチドがさまざまな身体部位に機能する理由に関する研究も進んでいて、生理活性を持つ低分子ペプチドが特定されている。それを通常よりも高含有させたコラーゲンペプチドが製品化されてもいる。

 そういった消費者にあまり知られていないコラーゲンペプチドの機能性や成分などについてエビデンスをさらに積み上げ、機能性表示食品を始めとする保健機能食品を開発し、表示を通じてヘルスベネフィットを消費者へ伝えていく。そうすることで新たな需要を創出していけるのではないか。

【石川太郎】

(了)

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