消費者庁、景表法運用状況を公表 確約手続き拡大で処分は二極化へ
消費者庁はこのほど、令和7年度(令和7年4月1日~令和8年3月31日)における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組について取りまとめ、公表した。
同年度における国(消費者庁及び公正取引委員会地方事務所・支所等)による法的措置の執行状況をみると、措置命令の件数が前年度の26件から13件へと半減した。その一方で、令和6年10月の改正景品表示法施行により新設された「確約手続」に基づく確約計画の認定件数は、前年度の1件から8件へと増加。行政の運用が、迅速な是正を促す「確約」と、悪質な違反を厳格に処分する「措置命令」へと二極化している。
同年度に実施された措置命令13件の内訳は、優良誤認が3件、有利誤認が8件、原産国告示が2件。優良誤認では風呂用防カビ剤の効果に関する不当表示などが対象となり、有利誤認ではおせち料理の提供価格や英会話教室の入会金に関する二重価格表示などが厳しく追及された。一方、確約計画の認定件数8件の内訳は、優良誤認1件、有利誤認5件、ステルスマーケティング告示4件(関係法条が2以上にわたる事件があるため延べ数)となった。
課徴金納付命令については、10人の事業者に対して計10件行われ、総額3億3,940万円の納付を命じた。前年度の19億2,696万円からは減少したものの、依然として不当表示に対する金銭的ペナルティの執行が継続している。さらに、「指導」の件数は、前年度の339件から388件へと増加しており、水面下での監視・是正指導が活発化している。
このほか、インターネット上の広告における不当表示の増加に対応するため、令和5年度から開始した特化型の監視業務により、令和7年度は324件の改善指導を実施した。食品の虚偽・誇大広告を対象とした健康増進法に基づく指導も589件に上り、デジタル媒体の監視体制強化が継続している。
これを受け、堀井奈津子消費者庁長官は5月28日の定例記者会見で、令和7年度の運用について総括を行った。 堀井長官は、昨年度の行政処分の特徴として、冷凍宅配食、プロスポーツのファンクラブ、スマートフォンのコーティング剤など、これまで景品表示法で取り上げられたことがなかった新しい分野の事案や、有利誤認の事案が多くあったと分析。確約手続については、件数の増加とともに執行手法の1つとして定着してきたとの認識を示した。
また、効率的な法運用のため、インターネット監視や実態調査といった複数の手法を組み合わせている点も強調。特に、消費者からの情報提供を待たずに自ら問題を発見し、迅速な改善を促すインターネット監視は、デジタル取引におけるトラブルの未然防止に有効であるとしている。
「アメとムチ」による迅速な消費者の被害回復
確約手続の本格的な定着に伴い、事業者が行政処分を回避しつつ迅速に是正を図る動きが広がっている。編集部が以前、消費者庁表示対策課の岡田博己課長に取材した際、確約手続と措置命令の判断基準について、運用の柱となるのは「迅速な是正の必要性」と「事案に応じた適切な是正措置の可能性」の2点だと言明している。
岡田課長によると、過去に同様の違反を繰り返している「違反行為の反復性」がある場合や、表示の根拠がないことを認識しながら意図的に継続しているような「事案の悪質性・重大性」が認められる場合は確約手続には馴染まないとされ、違法性を認定する措置命令の対象となる。これらは機械的に判別されるものではなく、調査の過程における事業者とのコミュニケーションを通じ、企業の改善姿勢や問題行為が生じた組織的な背景を総合的に判断しているという。
当局の基本的なスタンスは、悪質性の低い事案や初犯については確約手続による迅速な是正を促し、悪質な事案には躊躇なく措置命令を下すという「アメとムチ」の使い分けにある。そして、、確約認定を受けるにあたり、多くの企業が提案に盛り込む有力な是正策の1つが「返金措置」。従来の措置命令に向けた調査期間が平均1年弱と長期化しやすいのに対し、確約手続は問題行為を早期に是正させ、消費者の被害を迅速に回復することを最大の目的としている。返金措置はガイドラインにおいて措置内容の十分性を満たす重要な事情として考慮されるが、岡田課長は「必ずしも返金のみが正解ではない」とも指摘しており、表示された有利な条件に契約内容を合わせることや、社内チェック体制の刷新による独自の再発防止策など、企業側の主体的な改善姿勢が評価の鍵を握るとしている。
関連資料:「令和7年度における景品表示法等の運用状況及び表示等の適正化への取組」の公表について(消費者庁ホームページへ)
(冒頭の写真:同社リリースより)

