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神代から令和まで健康食品のルーツを探る~歴史から見えてくる課題は何か?(24)

東京大学名誉教授。(公財)食の安全・安心財団理事長。唐木英明

<「ASCON」理事長は3代目消費者庁長官>
 筆者が機能性表示食品の外部評価組織を立ち上げるお手伝いをしたのが「(一社)消費者市民社会をつくる会(ASCON)」である。ASCONは2014年まで消費者庁長官を務め、機能性表示食品制度の立ち上げにかかわった阿南久氏が消費者庁退任後に立ち上げた組織である。
 そのASCONが15 年 7 月に機能性表示食品に関する会合を開催し、筆者も講演を行ったのだが、その折に阿南氏と外部評価組織の重要性を話し合った。その後、阿南氏の努力でASCONがそのような組織を立ち上げることになり、15年10月に「ASCON 科学者委員会」が設置された。ASCONのホームページに記載されているその目的は次のようなものである。

 「当会は、会員の協力を得て、経験豊かな科学者のみなさま方に呼びかけ『ASCON 科学者委員会』を設置することにいたしました。その目的は、届出受理された『機能性表示食品』について科学的な評価を行い、その結果を事業者に伝え、コミュニケーションを図るとともに、それらを適宜公表し、消費者に食品選択の一助にし、事業者にもさらなる努力の促進につなげていただくことです」

<科学的根拠の「強さ」を評価>
 同委員会委員長には、食品安全委員会委員長を務められた小泉直子先生、副委員長にはやはり食品安全委員会専門委員会で座長を務められた鈴木勝士先生にお願いし、筆者はアドバイザーとして必要な時にお手伝いをすることになった。
 委員会の最初の活動は、消費者庁ガイドラインを基準として、何をどのように評価するのかを決めることだった。評価の対象は安全性と機能性であり、評価資料は届出資料である。機能性評価の方法は、届け出た機能を裏付ける論文の質と内容から科学的根拠の強さを3段階で評価することにした。具体的には、科学的に正しい方法論を使ったランダム化比較対照試験で有効性が確認されているのか、そのような試験が複数ある場合には、その内容がどの程度一致するのかなどである。
 
<安全性評価は断念>
 第1回の評価結果は、届出番号A1からA80について16年5月に公表された。この段階では、科学者委員会がすべての届出資料を確認し、評価する作業を行ったのだが、その経験から、評価に必要な項目が確定したため、第2段階では、評価項目一覧表への記入を届け出企業自身に依頼し、第3段階では、記入した内容を委員会の判定基準に当てはめて自己評価する方式に進んだ。その目的は、届出資料の自己点検・自己評価が届け出企業の責務であることを自覚していただき、もし不備があれば自発的に修正していただくことである。また、安全性に関する評価は実施が困難なため取りやめた。

 非常に残念なことに、第2段階ではかなりの企業の協力を得られてのだが、第3段階になると参加企業の数が減ってしまったことである。消費者の信頼確保のためにも、ぜひ、自己点検・評価に熱心な企業になっていただきたいと願っている。

(つづく)

<プロフィール>
1964年東京大学農学部獣医学科卒。農学博士、獣医師。東京大学農学部助手、同助教授、テキサス大学ダラス医学研究所研究員などを経て東京大学農学部教授、東京大学アイソトープ総合センターセンター長などを歴任。2008〜11年日本学術会議副会長。11〜13年倉敷芸術科学大学学長。専門は薬理学、毒性学、食品安全、リスクコミュニケーション。

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