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消費者庁VS大幸薬品(4)
措置命令に新事実「クレベリン」訴訟

 大幸薬品㈱(大阪府吹田市、柴田高社長)の「クレベリンシリーズ」4商品に対する消費者庁の措置命令からやがて20日、いよいよ両社の対立が表面化した。取材によって、いくつかの新たな事実も浮かび上がってきた。

 これまでのプロセスを整理すると、消費者庁が大幸薬品への調査を開始したのが2021年4月のこと。ターゲットは同社のクレベリンシリーズ『クレベリン置き型』(60・150g)2品と『クレベリン スティック ペンタイプ』(携帯型)、『クレベリン スティック フックタイプ』(掛け型)、『クレベリン スプレー』(スプレー型)、『クレベリン ミニスプレー』(同)の全6商品。調査は10月まで行われ、同15日に消費者庁は同社に対して空間除菌効果を裏付ける根拠資料の提出を求めた。

 提出までの期間は15日間。大幸薬品は11月1日に根拠資料を提出したものの、同26日に消費者庁が景表法に基づく措置命令案を提示した。同社に弁明の機会を付与するというものである。同社は過去(14年)にも措置命令を受けている。12月10日、大幸薬品は消費者庁に弁明書を提出したものの、措置命令が下されることを察知し、14日に東京地方裁判所へ措置命令の差し止め訴訟を提起。同時に仮の差止の申し立てを行った。

 「措置命令が出るとクレベリンのブランドにも傷が付く、売上にも大きく影響するためなんとかして措置命令を阻止したいとの思いだった」(同社広報)という。

 東京地裁は翌22年1月12日、『クレベリン置き型』(60・150g)の2商品について、消費者庁に提出した試験結果などが二酸化塩素による除菌・ウイルス除去効果の裏付けとなる合理的根拠に当たるとして、措置命令の仮の差止の決定を下したが、他の4商品については大幸薬品の主張を斥けた。却下の理由は不明だが、大幸薬品は翌13日、東京高等裁判所に即時抗告を行った。同時に、消費者庁へ電話を入れ「措置命令を待ってもらうように連絡した」(同)と話している。
 しかし消費者庁は20日、大幸薬品の即時抗告を無視し、4商品に対して措置命令を下した。さらに同日、『クレベリン置き型』2商品について東京地裁が仮の差止を認容したことに対し、東京高裁に即時抗告を行っている。

 以上は、大幸薬品に対する取材で明らかになった事実である。消費者庁は「正当性を主張していく」として即時抗告の事実は認めたものの、訴訟の経緯については「調査にかかわること」としてコメントを拒んでいる。

 東京地裁の判断については「消費者庁VS大幸薬品(2)」で書いたが、今のところ表に出ていない部分として、消費者庁が「湿度30%未満の空間では二酸化塩素によるウイルスの除去効果は認められない」と主張していたことなどが明らかとなった。
 また、これまで消費者庁が空間除菌に対する措置命令で一定の基準として示してきた表示と科学的根拠の整合性、具体的には「空間に浮遊するウイルスを実生活空間で除去することは困難。実生活空間では現段階において、効果を評価する公的な方法も適切な方法もない」とする見解に対しても、地裁は一応の判断を示しているようだ。これら地裁の判断については次回紹介するとして、大幸薬品側は地裁が仮の差止を認容したにもかかわらず、消費者庁が他の4商品に対して措置命令を強行したことに対して「不本意」と、遺憾の意を示した。

 それもそのはず、同社としては、4商品に対する即時抗告を行ったものの措置命令によって差止の対象が表面化し、仮の差止自体が無意味と化してしまったわけである。東京高裁では地裁の判断を前提に、何らかの反論を試みようと思っていたようだが、争う機会を失ってしまった。同社は消費者庁の措置命令を「不本意」とし、「当社の即時抗告を無意味にしておきながら、消費者庁の方は即時抗告を使っているというところも、ちょっとどうなのかなと正直思う」と率直な気持ちを述べている。

 一方の消費者庁は措置命令を出したことに対し、「法律上、命令を行って差支えがあるということがなかった。消費者庁としては、案件を公表するということが消費者の商品選択について資すると考えたから措置命令を取った」と述べている。

(つづく)
【田代 宏】

(冒頭の写真:措置命令の対象となった商品)

関連記事:消費者庁VS大幸薬品(1)
      消費者庁VS大幸薬品(2)
      消費者庁VS大幸薬品(3)
      消費者庁VS大幸薬品(5)
      消費者庁VS大幸薬品(6)
      消費者庁、空間除菌商品に措置命令
YouTube動画:「クレベリン」シリーズの措置命令めぐり、消費者庁と大幸薬品が対立

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