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機能性表示食品制度、どう変わる? 有識者検討会がスタート、来月末までに方向性を提示

 機能性表示食品制度の今後のあり方を議論する有識者による検討会が始まった。製品との関連が疑われる健康被害情報の収集と報告のあり方、錠剤やカプセル剤などサプリメント形状の加工食品の原材料を含めた製品設計や製造・品質管理(安全性確保)のあり方のほか、機能性関与成分のあり方などに論点が絞られていくことになりそうだ。19日の初会合はYouTube上でライブ配信され、約1,300人が視聴した。

過度な規制強化、規制ない「いわゆる健康食品」に流れる恐れ

 初会合では、構成員の1人、三浦公嗣・藤田医科大学特命教授が、規制を強め過ぎると、安全性などに関する科学的根拠情報を開示したり、健康被害情報を報告したりといった実質的な規制がない「いわゆる健康食品」に事業者が流れていく可能性があると指摘。結果的に、規制が掛からない本末転倒な状態に健康食品市場が陥ってことに懸念を示した。

 検討会は今後、消費者団体や健康食品業界などのヒアリングも行いながら議論を進め、制度の今後のあり方の「方向性」を5月末までに提示する。会合は全6回の予定。次回は24日に開き、ヒアリングを行う。

 小林製薬㈱(大阪市中央区)が販売していた機能性表示食品のサプリメントの摂取との因果関係が強く疑われる腎機能障害の健康被害が複数の消費者に生じたことを受け、政府は制度を所管する消費者庁に対して、制度の今後のあり方などを検討し、5月末までに取りまとめるよう指示した。これを受けて同庁は今月1日、庁内に検討プロジェクトチームを発足。プロジェクトチームによる検討を「さらに強化、加速させる」ため、別途、有識者検討会を立ち上げた。

 今後の会合もオンラインでライブ配信し、一般傍聴を可能とする。自見英子消費者・食品安全担当相は19日の会見で、「フルオープンにすることで透明性のある議論を期待している」とコメント。また、科学的根拠に基づく表示を事業者に促し、いわゆる健康食品にはない「届出」の仕組みを導入した機能性表示食品制度の意義を強調しつつ、「あらゆる立場から(機能性表示食品制度の現状に対する)意見を全部出してもらい、国民的な議論とともに、制度を信頼されるものにふたたびしていくことが大事だ」と述べた。

議論リードする合田構成員、問題の背景に「品質管理のあり方」

 法学者が座長を務め、医学や薬学などの有識者全9人で構成する「機能性表示食品を巡る検討会」の初会合は2時間に及んだ。

 前半は消費者庁が日本の健康食品に関わる制度の歴史、機能性表示食品を含む保健機能制度の概要などを約45分にわたり丁寧に解説した。後半は検討会の構成員らが今回の健康被害問題や機能性表示食品制度への意見を述べた。

 意見交換でイニシアチブを握ったのは、構成員の1人で、機能性表示食品の制度設計を議論する検討会の委員も務めていた合田幸弘・国立医薬品食品衛生研究所名誉所長(=下の写真)だった。合田構成員は、機能性表示食品は「生産者の性善説に基づき作られた食品」だと指摘。その上で、性善説から外れた生産者が作り、供給してしまった場合に「国民の安全をどう守っていくのか。今回の検討会で一定の方向性を決める必要がある」と述べた。

 合田構成員はまた、小林製薬の機能性表示食品に生じた今回の健康被害問題の背景には、大きく2つの問題があると指摘した。

 第1に、健康被害情報の行政への報告の遅れ。「インシデント」(健康被害)が発生した際の報告指針が届出ガイドラインに記載されていることが機能性表示食品制度の「一番良いことの1つ」だったものの、小林製薬は報告までに2カ月超を要した、と指摘。もっと早い段階で報告していれば、「その分、健康被害の拡大を防げたことが容易に予想できる」とし、健康被害情報の収集と報告のあり方を「十分議論する必要がある」と意見した。

 2つ目の問題点は、「モノの品質管理のあり方」。合田構成員は、品質管理の原則について、「第1に製品設計(の段階での品質管理)、第2にGMP(適正製造規範に基づく)生産工程管理による品質管理、第3に最終プロダクト(製品)の試験を行うことでの品質管理。この3つの品質管理が互いに相互作用を持ちながら、製品の安全性と有効性が常に保たれていることが基本」だとした上で、小林製薬の機能性表示食品に生じた今回の健康被害問題は、「その3つ全てが崩れてしまったことで起きた事故だと私は考えている」と述べた。

 また、今回問題となっている機能性表示食品に含まれる機能性関与成分が、「米紅麹ポリケチド」という「一般には分からない」名称で届け出されているものの、同成分の実体は、LDLコレステロールを低下させる医療医薬品として米国で承認されているロバスタチンと同一物質のモナコリンKであることを、製品設計の観点から問題視した。

 合田構成員は、「(自身が検討ワーキンググループ構成員を務めている)食薬区分では、処方箋医薬品(医療用医薬品)成分は基本的に『専ら医薬品』であって、食品に表示するかたちでは使えないことになっている」と指摘。それにも関わらず名称を変えて機能性表示食品に使用していたことが「(製品設計の点で)非常に大きな問題点だ」とした。

 ただ、現行の食薬区分リストを見ると、ロバスタチンはもとよりモナコリンKは、「専ら医薬」、「非医薬」のいずれにも収載されていない。紅麹そのものは「非医薬」。また、青魚に多く含まれることで知られるオメガ3脂肪酸のEPA(エイコサペタエン酸)など、たとえ医療用医薬品成分であったとしても、食品に配合できるとともに、表示も何ら規制されない成分が存在する。

品質管理めぐる議論、「サプリ形状に絞られていく」

 合田構成員は他にも、今回生じた健康被害の原因究明には時間を要すると見て、「少なくとも今回の検討会の間に(原因が究明されることは)難しい」とした。一方で、「(原材料に)不純物が入っていたことは(HPLC分析結果から)明らか。不純物が原因であろうということは言える」と述べた。

 また、今回の健康被害問題を受けて可視化されつつある機能性表示食品をめぐる課題は、「全ての食品に関わる」とする別の構成員の意見に対し、「今回の事故はサプリメント形状の食品で起きた」と指摘。その上で、「通常の食品であれば、消費者は品質の良し悪しを『舌』で感じ取ることができる。それを前提に食品衛生法は制定されている。しかしサプリメント形状の食品は、飲んだ瞬間に判断できない問題が明確になっている。この検討会の議論は最終的に、サプリメント形状に絞られていくと考えている」と述べ、今回生じた健康被害問題は、サプリメント形状を持つ食品固有の問題だと捉えていることを示唆した。

【石川 太郎】

(冒頭の画像:検討会構成員全9人の似顔絵)

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