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変わる勢力図、次のリーダーは?(後) 【九州のヘルスケア産業】新たな100億円企業、生まれる余地まだ

目を見張る急成長企業も 30億円から120億円へ 

 一方、当時と比べて伸長しているのが、ヒアルロン酸を主要成分として配合した『皇潤』シリーズを代表商材とする当時5位(約130億円)のエバーライフ。22年12月期の売上高はグループ全体で約180億円となり、前期比プラス。増収は7期連続で、昨年に新発売した『高麗人参100』シリーズをはじめ、機能性表示食品『アイノウ』の好調な売れ行きが増収に寄与した。

 同社は一時、260億円超の売上を計上していた。再成長の階段を堅実に上っている途上、という印象を受ける。

 他方で、新たに100億円企業の一員に加わったのが、美容健康茶『モリモリスリム』を基幹商材としつつ、『シボヘール』をはじめとする機能性表示食品の多く手がける通販企業、㈱ハーブ健康本舗(福岡市中央区)。民間調査会社の調べでは、21年10月期に売上高100億円を初めて突破し約120億円を記録。翌22年は減収に転じものの、100億円台を堅持している。15年当時の売上高は約30億円とされており、10年未満で3倍以上の成長を果たした格好だ。

 また、今のところ100億円に届いていないが、健康ドリンク『豊潤サジー』(沙棘)を主力商材とする通販企業、㈱フィネス(福岡市博多区)の成長も著しい。同社のホームページによると18年の売上高は18億。それが3年後の21年には50億円まで拡大した。前年20年の22.9億円から実に200%以上の急成長を見せている。

 さらに、化粧品を主力にする新日本製薬㈱(福岡市中央区)が今後、健康食品の売上高を大きく伸ばす可能性がある。九州の通販産業界で唯一の上場企業。25年を最終年度とする中期経営計画「VISION2025」の中で、現在38億円(23年9月期計画)にとどまる健康食品などヘルスケア事業売上高を100億円規模にまで引き上げる目標を掲げた。連結売上高380億円(同)の9割を占める化粧品に次ぐ柱に育てていく方針だ。健康食品通販における新たな100億円プレイヤーが福岡から生まれるかが注目される。

したたかな「いぶし銀」、今後向かう先は「西」か 

 以上、15年から現在までの、九州の通販健康食品産業の変化の一部を駆け足で見てきたが、当時と変わらないこともある。それは、顧客獲得競争の激化や市場の成熟。また、九州の健康食品通販産業の勢力図を目まぐるしく変える一因になってきた広告表示規制もそうだろう。むしろ、それらはさらに深まったといえる。

 15年4月に施行された機能性表示食品制度は、大手メーカー系企業のさらなる市場参入を呼び込んだ。今や、医療用医薬品メーカーまでもがサプリメントのインターネット販売を手がけるようになっている。一方で、国内健康食品市場のパイはほとんど増えていない。その上で人口減少の煽りも受けることになる。競争のさらなる激化は必至だ。

 広告表示規制も強まりこそすれ弱まることはない。直罰規定の導入をはじめとする規制強化策を盛り込んだ改正景品表示法の施行を来年に控える。また、SNSを活用したデジタルマーケティングに秀でるといわれる通販企業、さくらフォレスト㈱(福岡市中央区)が消費者庁から景品表示法に基づく措置命令を受けてもいる(6月30日)。民間調査会社の調べによると、同社は23年3月期に売上高を70億円台に回復。前期比で10億円近くの増収を果たしていた。

 認定された不当表示の対象商品は、機能性表示食品のサプリメント。あろうことか、届出表示(ヘルスクレーム)の科学的根拠が不十分と判断されての優良誤認の認定である。なにも九州の企業に限らないが、いわゆる健康食品の広告表示をめぐり、同業他社が行政処分、あるいは行政指導を受ける中、一般消費者に有効性を正面から訴求できる機能性表示食品に活路に見いだしてきた企業が多いだけに、影響はひとしおだろう。

 だが、そういった中でも、したたかな「いぶし銀」が多いと言われる九州の通販企業は上手く立ち回ってゆくに違いない。きっと、西にもっと目を向けていくことになるのだろう。九州はアジアの玄関口。そこに拠点を置く強みを生かそうとする企業が今後さらに増えていく。

(了)

【石川太郎】

『ウェルネスマンスリーレポート』2023年7月10日号(第61号)より転載

〇【特集】九州のヘルスケア産業
開発から販路支援までオール九州で(前) 九州地域バイオクラスターの取り組み1
開発から販路支援までオール九州で(後) 九州地域バイオクラスターの取り組み2
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