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サンクト、「メーカー商社」の実像  アミノ酸、NMN、植物抽出物 広がる事業領域、今後OEMも

 主要事業はアミノ酸とレアメタル。医薬品の原薬や健康食品向けの植物抽出物も取り扱う。と同時にNMNの原料サプライヤーであり、研究用遺伝子の調達といったバイオサイエンス事業も手掛ける。そして年商は非公開だが、決して小さな額ではない。2003年、当時30歳に満たない2人の若者が起業して立ち上げた㈱サンクト(東京都江東区)の実像に迫る。

中国メーカーの日本総代理店 国内大手と対等に渡り合う

 サンクトを創業したのは宍戸哲夫氏と今川信雄氏の2人。中学時代の同級生だ。現在も宍戸・今川の共同代表体制で経営に当たる。アミノ酸とレアメタル。通常であれば結びつきそうにない2つの物質が主要事業として並び立つ理由がここにある。アミノ酸は主に宍戸代表が、レアメタルに関しては主に今川代表がそれぞれ事業を取り仕切る。

 各主要事業の売上高が年商に占める割合はおおよそ半分ずつだという。従ってアミノ酸事業でも決して小さくない数字を計上していることになる。認知度が高いとは言えない企業が、味の素や協和発酵バイオといった国内アミノ酸原料メーカー大手と渡り合えているのはなぜか。

 中国に「新生源(Shine Star)」という企業がある。「中国で最大規模」とも言われるアミノ酸メーカーだ。設立は1996年。医薬品GMPやISO9001などといった各種認証を取得した工場施設を湖北省に構え、医薬品から食品まで各種アミノ酸を製造、グローバルに供給している。

 2013年、サンクトは新生源から「日本総代理店」の権利許諾を正式に受け、同社製アミノ酸の国内販売を一手に手掛けるようになった。国内のみならず米国など海外輸出も手掛けている。

 サンクトのアミノ酸事業が拡大した背景には、新生源の日本総代理店の権利を得たことがある。前述のとおり、日本の販売代理店でありながら海外にも販売できるのは異例と言え、両社は厚い信頼関係で結ばれていることがうかがえる。

 ただ、新生源が採用しているアミノ酸の製法は、日本では一般にもよく知られる発酵法ではなく抽出法だ。羽毛や羊毛から得られるタンパク質を加水分解してアミノ酸を抽出する。また、いくらアミノ酸の世界的大手とはいえ中国製。日本の市場がそう簡単に受け入れてくれたとは思えない。どう乗り越えたのか。

背景にアミノ酸への〝愛〟 完備した品質保証部門 

 その理由を宍戸代表は、「愛ですよ。そもそも僕はアミノ酸を愛している」と本気で語る。この点については後述するが、社内に品質保証部門を完備したことが大きかった。

 博士号や薬剤師資格などを持つ専門人材のほか、中国人スタッフを配置した品質保証部が、調達から出荷までの全工程を管理。国内へ受け入れ後に第三者機関で品質評価を行える体制も整えた上で、国内在庫を豊富に抱えられるよう倉庫も整備した。さらに、日本市場が求める品質ニーズに適した製品を製造するよう、新生源への働きかけも積極的に行った。宍戸代表はこう話す。

 「中国と日本では文化の違いがある。純度や異物に対する感覚がちょっと異なる。しかし日本で売る以上、日本に受け入れてもらおうとする以上、日本が求める品質レベルまで引き上げないと。そこは我々の義務ですよ。僕は取引先も売り先(顧客)も全て友人だと思っている。異物が入ったものを友人に売れますか? だから品証(品質保証部門)を現場に送り込んで手取り足取り(指導した)。コロナ禍でリモートが中心になったけれど、今でもそれを続けているし、あちら(新生源)も自分事として受け入れてくれている。僕らの意見をしっかり取り入れてくれたり、投資して医薬品GMPへの対応を進めてくれたりもしました。そうした積み重ねがあって今がある」。

 この関係、通常の販売代理店とメーカーのそれを超えているだろう。実際、サンクトは単なるアミノ酸の商社ではない、アミノ酸のメーカー機能を備えた商社だ──宍戸代表はそう強調する。「分かりやすいから『総代理店』という言葉を使っていますが、僕に言わせると正しくは『アミノ酸の総合メーカー商社』。自ら工場に入って色々と取り組んでいるからです。僕らはメーカーと一体化しています」。
 
 そうしたことを可能にした背景には、宍戸代表の出自もある。その出自が前述のアミノ酸に対する愛にもつながる。

 「父がアミノ酸、もっと言うとL-シスチン やL‐システインを仕事にしていた。だから僕は小さな頃からそれらに接していて、僕のすぐ隣にあって、薬にもなる万能な凄いものだと思いながら成長してきた。それがそのまま仕事になって、会社を立ち上げることにもなったのだけど、それはビジネスというよりも、アミノ酸が好きだから、愛しているからやっている。だからそれに異物が入っていたり品質が低かったりしたら絶対に許せないし、素晴らしいものなのだから世の中にもっと広げていきたい。生活の一部に溶け込んでいるビタミンのような存在にしたいと思っています」。

 その父親が新生源とサンクトの縁をつなぐことになる。

 「当時、父が務めていた会社が中国でシスチンなどを作ることになった。父は中国人(母は日本人)で言葉が分かるから現地に行って製法や技術などを指導した。そのようにして作られた工場が後に世界的にも大きなメーカーになった。そのオーナーが『お前は恩のある友人の息子だから』ということで、総販売代理店の権利を僕にくれた。まだまだ小規模だったうち(サンクト)が総販売代理店になれたのはそうした理由です」。

事業の〝分裂〟が広がり生む 今後、商品輸出サポートも

 新生源の日本総代理店になった後、サンクトはNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)、さらには植物抽出物の取扱いを始めることになる。

 いずれも中国のメーカーから調達するもので、アミノ酸と同様、「メーカー商社」のポジションで製造・品質管理に努めながら輸入販売を展開。「本格的な顧客開拓はこれからだが、まずはコモディティを広げていく。いずれは新規素材もやっていきたい」と宍戸代表が話す植物抽出物は、老舗の生薬・漢方原料会社「青云山薬業」および同社子会社「Herb Green Health Biotech」の日本総代理店のポジションで、高麗人参抽出物からイヌリンまで多品種を取り扱っている。

 一方、NMNについては、医薬品原料メーカー「誠信薬業」が酵母による発酵法で製造する規格値99.0%以上の高純度NMNを販売。アミノ酸ほどではないにせよ、これまでの販売数量は海外向けも含めると相当数に上る。

 これらの取扱いを始めた理由について宍戸代表は、「『友人』から相談と引き合いがあったから。それだけ」とするが、総販売代理店として日本での営業活動を任せられた背景には、新生源のアミノ酸を日本市場に広げた実績があるだろう。アミノ酸事業が核となり、NMN事業や植物抽出物事業に「分裂」していった格好だ。

 「植物抽出物(の仕事)が今後どのように分裂していくか楽しみ。アミノ酸がまさにそうで、例えば、シスチンがシステインになり、システインがカルボシステインになる。そのように分裂しながら、用途にしても食品から医薬品、さらには飼料や工業の分野まで分裂していく。だからアミノ酸は素晴らしい。アミノ酸を世の中に広げるために、そうした分裂を事業でもどんどん起こしていくことが僕の最終目標」。サンクトのアミノ酸事業の今後について宍戸代表はそう語る。

 同社では今後、アミノ酸の原料販売だけでなく最終製品OEM(受託製造)にまで事業領域を「分裂」させる。その対象は食品用途のアミノ酸だけでなく医薬品向けも同様だ。「これまでは中間体を中心に取り扱っていた。今後もっとレベルを高めて、医薬品メーカーに原料を直接販売できるようにしたい」(宍戸代表)。

 新たに始めるサプリメントなど最終製品OEM事業は、中国との太いパイプを生かし、越境ECを含めた最終商品輸出・販売サポートに分裂させていく考えだ。サンクトの事業領域は最終的にどこまで広がるのか。今後の動きから目が離せない。

【石川 太郎】

(冒頭の画像:サンクトが販売する各種アミノ酸を製造する「新生源」の工場)

<COMPANY INFORMATION>
所在地:東京都江東区新大橋3-5-1平野ビル2階
TEL:03-5624-1688
URL:https://www.sanct.co.jp/
事業内容:アミノ酸の輸出入および国内販売、レアメタルの輸出入など

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