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インタビュー「表示を考える」(1)

 昨年12月から今年3月まで開催された「特定保健用食品制度(疾病リスク低減表示)に関する検討会」(疾病リスク低減表示トクホ検討会)で主要な役割を担った(公財)日本健康・栄養食品協会(日健栄協)は、機能性表示食品の広告表示についても審査会を設置し、業界の健全化に向けた取り組みを行っている。同協会の矢島鉄也理事長を訪ねた。

新ガイドラインで4社申請

――限られた期間での検討会ということもあり、議論は深まりませんでした。その後の取り組みについてお聞かせください。
矢島 検討会では、既許可トクホで、その保健用途が専門医学会がガイドラインで示している診断に用いるバイオマーカーに対応し、バイオマーカーと疾病リスクの関係が公知の事実となっている場合は、疾病リスク低減表示への一律移行を導入してはどうかなどの提案を行いました。議論が深まらなかった原因の1つは、具体的な疾病リスク低減表示トクホへの新たな申請がなかった点にあると反省しています。

――対策は?
矢島 私は、申請のためのガイドラインが必要だと考えています。検討会が終わった後、4月に説明会を開きました。そこで検討会の結果を会員の皆さんにご報告し、ご意見をお聴きしたところ、ガイドラインの作成にご賛同いただける企業がありました。今のままだと、企業も申請の段階で消費者庁と1対1でやっていて、何をどのように申請したらいいのか分からないというのですね。また、消費者庁の方も申請してもらわないと分からないとおっしゃる。

 検討会の途中辺りから、個別具体的なものがあったら話を聞かせていただきますみたいな話があったので、私たちは申請させていただきますということで、そのような流れが検討会から出てきた課題であり意見だったものですからそれに向けて今やってることですね。
そこで7月に新たなガイドラインで申請を希望する企業を募集したところ、4社の企業さんが「やってみようか」と手を上げてくれました。

機能性表示食品をトクホへ

――新しいガイドラインに基づき申請したのでしょうか?
矢島 はい。消費者庁に申請させていただきました。私たちの目的は、広く一般の人たち、一般の企業に示すことができるようなガイドラインに基づいて、分かりやすい制度を作り上げていくことです。それが健康食品全体のためになると考えています。

――挑戦的ですね。
矢島 昨年9月30日に日経SDGsフォーラム「トクホで考える健康新時代~トクホ公正競争規約がスタート~」(主催・日本経済新聞社、共催・消費者庁)が開催されました。その中で行われたシンポジウムで消費者庁の伊藤明子長官と同席させていただく機会がありましたが、伊藤長官は、エビデンスが蓄積したら機能性表示食品を特定保健用食品(トクホ)に発展させてはどうかというお話をされました。消費者に信頼される公正競争規約という文脈のなかでのお話だったと思いますが、おそらく、消費者庁はトクホに限定せず、SDGsを目標とするなかで持続可能な発展を目指して、健康食品はもちろん、食と健康を含めた大きな枠組のなかで物事を考えておられるのではないかと思っています。

制度発足から30年の節目

――なるほど。機能性表示食品のなかには、トクホですでに許可されている関与成分を機能性関与成分とした商品がたくさんあります。例えば「ゴマペプチド(LVYとして)」を機能性関与成分としたある商品の機能性表示は「本品にはゴマペプチド(LVYとして)が含まれます。ゴマペプチド(LVYとして)には高めの血圧の改善をサポートする機能があることが報告されています。血圧が高めの方に適しています」であるのに対し、トクホは「本品はゴマペプチドを含んでおり、血圧が高めの方に適した飲料です」です。これだと国の許可を受けたトクホである必要があるのかと疑問を抱かれます。いわゆる健康食品一般と、ある程度のエビデンスは持っている機能性表示食品、国の許可制度に基づくトクホについて、もう少し明確な棲み分けが必要ではないでしょうか。

矢島 必要なのはステップアップしていく仕組みですね。たぶん、そういう議論がこれから行われると思います。消費者庁もそういうことを踏まえた検討会を始めるのではないか。私どもとしてはそれに期待して、業界の方々も含めて今回、疾病リスク低減表示トクホに申請をさせていただくことにしました。この申請をきっかけに、何を解決したら出来上がっていくのかという議論を深めていきたいと思っています。

 その過程で、いろいろな課題がまた見えてくると思います。
 トクホ制度がスタートしてから30年が経ちますし、機能性表示食品制度も7年目に入りました。行政官を長年務めてきた私の勘ですが、こういう節目節目の時に当たり、いろいろな声が出てくるなか、その声をしっかり受け止めてどういう方向にいったらいいか。少なくとも検討会が終わった時にはトクホ制度全般についての方向性を示すしかなかったのでしょう。あれはトクホ制度の検討会ですから。しかし、消費者庁は健康食品産業全体を発展させるための議論を望んでいるのではないかと思います。
 そういうことを踏まえた上で、どういうあり方がいいのかということを1つずつやっていくという流れが大事なんじゃないか。そうだとすれば、今のうちから準備する必要があるというので、こういう体系図を作らせていただきました(図参照)。上の方に向かって健康食品がステップアップしていくというイメージ図です。これに対して、何が課題なのか。何か問題があるのかどうか。企業に賛成していただけるのかどうか。皆さんの考えを教えて頂きたいと思っています。

機能性表示食品の広告審査

――機能性表示食品の広告審査をやっておられます。
矢島 2015年に機能性表示食品制度が始まってからすぐに、広告の研究会を始めました。トクホは元々やっていたものですから、そちらの自主基準、あるいは審査会を基に機能性表示食品の方も応用してやろうということで始めました。
 広告部が2017年にスタートし、審査会が2018年・19年・20年とすでに3回行われており、今年12月に4回目の審査を実施します。

――対象企業は会員ですか?
矢島 これまでは会員を対象としていましたが、今年は会員以外の企業からも募集しています。

――トクホの広告との違いはありますか。
矢島 トクホと違って錠剤やカプセル形状の商品が多いのと、ネット広告が圧倒的に多いのがトクホとの違いですね。

――審査基準は?
矢島 これもやはりトクホとは少し違っています。健康増進法等の関連法規や通知についてはトクホと同じですが、ほかに「『機能性表示食品』適正広告自主基準」あるいは「健康食品に関する気品表示法及び健康増進法上の留意事項」という消費者庁の冊子を指針としており、4回目からは「事後チェック指針」も加える予定です。

――判定基準は?
矢島 ABC判定で、指針それぞれに対してA「抵触するもの、もしくは抵触するおそれのあるもの」、B「抵触するもの」、C「抵触するおそれのあるもの」に分類します。A判定だとすぐにその企業にフィードバックし、1カ月以内に改善を求めます。Bについては6カ月以内の改善、Cは連絡するけれども対応は求めない、というかたちでやっています。

――改善したかどうか、追跡するのでしょうか。
矢島 はい。証拠として修正した広告を必ず送ってもらうことにしています。変更しないなら変更しない理由を付けてもらいます。ほとんど変更しますが。

――過去、どのような点が問題に?
矢島 「研究レビューであるのに製品自体に機能があるかのような表現」、「作用機序を製品の機能であるかのように表現」、「研究レビューによる届出で、グラフの選択理由を記載していない」、「個人の感想として、届出表示の機能性の範囲を超えた効果に言及」、「あたかも病者への効果も暗示」、「あたかも短期間で効果が得られるような記載」などです。

レビュー1報は「代表」か?

――研究レビュー1報による届出であるにもかかわらずグラフを使用するという問題は、健康食品産業協議会が「『機能性表示食品』適正広告自主基準」を発表した当初から問題になっていました。

矢島 自主基準にはグラフの選択理由を記すようになっています。例として「研究レビューの対象となった論文のうち、代表的な1報を事例として提示しています」などとありますが、そもそも1報しかない場合は、代表とは言えません。複数ある場合にはそれを代表する論文とは言えますが、それもちょっと、いいとこ取りになっていたらよろしくない。それをどうするか、今議論の対象となっています。少なくとも、選択理由を書かないと駄目だというふうになっています。
 また、レビューの場合はどこから持ってきてもいいのかという問題もあります。

――大体良いデータしか出しませんよね。
矢島 その場合、いいとこ取りしていないか。強調してるとか、そこら辺を書き方を制限して、できるだけきちんと事実に基づいた表現でないと通らないと思います。

野放しのWeb広告

――そこをチェックして指導されてるのですね。
矢島 そうです。あとは有識者の声とかですね。それが大きくなっていたり、そういうのが結構あります。

――体験談も厳しくなりました。最近処分された事業者の例を見ても、打消し表示は意味をなしません。
矢島 そうですね。結構厳しいです。特に新聞とかテレビは考査が厳しいのですが、問題はLP(ランディングページ)です。要するにWeb広告は、そこが割とまだチェックされてないという領域なので、そこは非常に課題がいっぱい出てきます。
野放しなのがLPというか、Web広告なので、そこをどういうふうにまとめていくか、これから大変だと思います。インターネット上からすぐに消えてなくなるものもあるので、それをどうやって捉えるかというのがすごく今課題になってます。

――ありがとうございました。

【聞き手・文:田代 宏】

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