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HACCPを正しく理解しよう!(前)

北海道大学名誉教授 ㈲ミクロバイオテック 代表 浅野行蔵 氏

厚労省「HACCP制度化を提唱」
日本の食品産業も世界の潮流に従って、製造される全ての食品の安全性を向上させる管理方法としてCODEXの提唱するHACCPの手法によって行うことが、2018年の食品衛生法の一部改正によって決められ、2021年6月より施行となった。これによって日本の全ての食品事業者が、HACCPの考え方で安全な食品を製造して、流通させ、販売している、と世界に表明することが可能になった。厚労省は「HACCPの制度化」と呼び、これこそ国際標準化の流れの1つであることを表明するのが大きな目的の1つだった。

当初は、義務化という用語も使われていたが、義務なら何が義務で、何が義務違反かと、法律として明確な表現で境界線となるような指定が必要になる。だが食品の種類は多様で、類似する食品でも製造方法はさらに多様。それらの安全性を保った製造方法やデリバリーなどが多種多様となっている。違反を摘出するような方向での法律的な線引きにはなじまないし、HACCPの考え方にもなじまない。そこで厚労省は「HACCPの制度化」と呼び、日本の食品は世界標準の方法で安全性を担保していると表明。国際的なハーモナイゼーションのステップの1つと位置付けた。

誤解を招く「衛生管理」
「HACCPに沿った衛生管理」とあるのだが、この言い回しは、厚労省が使用しているもので、これを素直に受け取ると理解が進まない上、誤解を招くという困った言い回しなのだ。CODEXの方針に誤解が生じない表現としては、『HACCPを使った食品の安全のための管理』と表現すべきである。

HACCPに関しては、厚労省の言葉使いは不思議である。「衛生管理」という言葉を随所で使い回し、スーパーワードとして使用している。そのため、種々の誤解が発生して、HACCPの正しい理解と普及が阻まれていると筆者は見ている。
「衛生管理」という言葉のイメージは、食品業界においてはサニテーションのイメージが強く、SSOP(衛生標準作業手順)やPRP(一般的衛生管理)と結びつく。ところが,厚労省では「衛生管理」という用語を複数の異なった意味で使用している。例を挙げると「衛生管理者」という厚労省管轄の国家資格がある。50 人以上の職場では「衛生管理者」を置くことを義務付けており,その業務は「労働安全衛生法で定められた、労働者の健康障害や労働災害の防止、作業環境の管理、労働者の健康管理、労働衛生教育の実施、健康保持増進措置など」とされている。食品業界の方々がイメージする「衛生管理」は、サニテーション、加工場の清潔、作業者の清潔などだが、厚労省では大きく離れた意味も含めて「衛生管理」という用語を使用していることが分かる。

厚労省の発表する文章には「衛生管理」の言葉が頻繁に出てくる。ここでクイズを出すことにしよう。次の①~⑭の「衛生管理」それぞれの意味について説明せよ。
① HACCPに基づく衛生管理
② HACCPの考え方を取り入れた衛生管理
③ 衛生管理計画を作成し
④ 一般的な衛生管理に関する基準
⑤ HACCPに沿った衛生管理に関する基準
⑥ 衛生管理計画の様式
⑦ 一般衛生管理の基準
⑧ HACCPに沿った衛生管理の基準
⑨ 衛生管理計画と(必要に応じて)手順書
⑩ 衛生管理の実施状況を記録
⑪ 豆腐製造における衛生管理計画の例
⑫ 一般衛生管理のポイント
⑬ 一般衛生管理の実施記録
⑭ 食品衛生管理者の資格

このように、試験問題として課題が成立する。あるいは、どの番号が同じ意味で使われているか線で結べ、という問題の形式も簡易版であり得る。

(つづく)

関連記事:HACCPを正しく理解しよう!(後)

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