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エビデンスを礎に肌悩みの根幹に挑む 【化粧品製造・開発最前線】キューサイが追求するウェルエイジング開発

 キューサイ㈱は、創業以来の「お客様の悩みに寄り添う」姿勢を軸に、コラーゲン研究の蓄積とエビデンスを生かした製品開発を進めてきた。効果実感と安全性、さらに使用感までを検証しながら、「ウェルエイジング」という価値をどう商品に落とし込むのか。商品企画開発部・ビューティーソリューション課・課長の植山和典氏(=写真)に話を聞いた。(聞き手・文:藤田勇一)

製品開発の原点は「お客様の悩みに寄り添う」

――まず、化粧品を開発するときに、最も大切にしていることは何でしょうか? その考え方は、これまでの会社の歴史の中で、どのように生まれてきたのでしょうか?
植山 当社は、1965年に菓子の製造販売会社として創業し、82年にケール青汁の製造販売を開始しました。創業者自身の健康に対する経験や、お客様の健康に対する真摯な思いが原点にあります。そこから青汁に続く主力商品として、2004年に初のコラーゲンヘルスケア商品『ヒアルロン酸コラーゲン』を発売しました。
 開発の背景には、社員のお母様が重いものを持つことや、お孫さんを抱っこすることに悩みを抱えていたという出来事がありました。そこで膝の曲げ伸ばしをスムーズにする可能性をコラーゲンに見出し、商品化しました。その後、大学との共同研究や学会発表、論文などを通じてコラーゲン研究を積み重ねています。
 09年には、研究の蓄積と「飲むだけでなく、お肌にも直接塗りたい」というお客様の声を背景に、スキンケアブランド「コラリッチ」が誕生しました。ブランドの土台にあるのは、青汁の時代から一貫した「お客様の悩みに寄り添う」という姿勢です。外部環境や価値観、ニーズが変化しても、お客様自身が自信を持って使い続けられる「効果実感」と「安心感」を届けることを大切にしています。効果実感、安全性、心地良さを検証しながら処方を組み立てることが、開発の根幹です。

――「本当に効果があるの?」「安心して使えるの?」という消費者の疑問に対して、研究の現場では、どのように安全性や効果を確かめているのでしょうか?
植山 機能性については、まず肌悩みの原因にアプローチするための作用機序に関するエビデンスを調査し、そこから美容成分を選定し、効果的に届ける処方設計を行います。単に年齢変化を抑え込むのではなく、日々の負担などによって生じる肌の滞りを取り除き、自ら調整する力、いわゆるホメオスタシスを自然に高められる状態へ導く「ウェルエイジング」の考え方を重視しています。 
 また、毎日安心して使い続けられることを第一に、機器評価による客観的な効果の裏付けと、官能評価による使い心地の良さの両立を目指します。化粧品では使用感、安全性、効果実感の3点が重要で、上市前には実際のお客様を対象としたホームユーステストを計3回実施します。最後の処方決定に関わる試験では4週間連用していただき、安全性、使用感、効果実感を検証します。
 試験は社内と社外の双方で行い、機器評価によって商品のポテンシャルや肌質の改善につながっているかを確認しています。

――「コラリッチ」の化粧品開発について、「ここはキューサイならでは」と言える技術やノウハウは、どんなところにありますか?
植山 強みは、長年蓄積してきたコラーゲン研究と、それを生かした独自のコラーゲン設計です。お客様が求める潤いとハリの効果実感を高めるため、単にコラーゲンを肌に与えるのではなく、肌の土台からコラーゲンを自ら構築していく「土台構築コラーゲンケア」を特徴としています。
 考え方としては、年齢とともに変化する肌コラーゲンの量と質に対応するため、①合成促進、②分解抑制、③再利用という循環を重視しています。量を増やす、質を守る、劣化したコラーゲンを新しいコラーゲンを作る材料として再利用する。この循環を回していくことが、私たちの強みだと考えています。


「効果」と「使用感」の壁、研究の軸は「ウェルエイジング」

――これまでの商品開発で、「これは難しかった」と感じた技術的な課題はありますか? それを、どう乗り越えたのでしょうか?
植山 化粧品だからこそ、毎回大きな壁になるのが「使用感と効果感の両立」です。コラリッチでは長年、「ベタつかないのに、もっちりとしたハリ感」という使用感を評価いただいております。一方、リニューアルのたびに、より高い潤いや効果が求められます。しかしコラーゲンは、配合量を増やすほどベタつきやすくなる成分の1つです。効果を高めようとすると使用感が損なわれる、この関係をどう解消するかが課題になります。
 そこで、機能性や分子量の異なるさまざまなコラーゲンについて、配合バランスや量を調整します。肌コラーゲンをリッチにするにはコラーゲン以外の成分も含めて最適解を探る必要があります。ホームユーステストを何度も繰り返し、効果と心地良さを両立できる処方へと磨き上げています。

――化粧品では次々と新しい成分が話題になります。そうした情報をどう集めて、「これは使おう」「これは見送ろう」と判断しているのでしょうか?
植山 私たちは、お客様が自覚している顕在的な悩みだけでなく、その原因となる「潜在的な悩み」に向き合うことを大切にしています。まだ本人が気付いていない悩みの根幹にアプローチするために、成分やコラーゲンの開発を行っています。 
 例えば主力商品に配合している独自開発成分「集中モイストコラーゲン」は、2つのコラーゲンを閉じ込めたカプセルです。塗布した際、乾燥している部分に集中的にアプローチするメカニズムを持たせています。乾燥部分が帯びる電位とカプセルの電位の違いを利用して、乾燥部分へ集中的に働きかけるという発想です。単なるトレンドの追随ではなく、肌悩みの根幹にどうアプローチできるかを重視しています。

――消費者の悩みが細かくなっていく中で、まだ本人も気付いていないようなニーズを、どう商品開発につなげているのでしょうか?
植山 潜在的な悩みやライフスタイルの多様化には、顧客層を細分化して対応することが重要だと考えています。既存のコラリッチは60代のお客様が中心ですが、50代の方々の価値観や、自覚しにくい肌変化にも応える展開を進めています。
 その1つが、2025年4月にローンチした姉妹ブランド「cola・rich soar(コラリッチ ソア)」です。肌悩みを感じやすい40~50代に向け、朝と夜で異なるニーズに着目しています。朝は紫外線などの外的刺激から自らの肌コラーゲンを「守る」ケア、夜は肌コラーゲンの産生を促し「回復に徹する」ケアです。年齢だけでなく、生活時間帯による肌環境の違いまで捉え、コラーゲンケアを分けることで、多様化するニーズに応えようとしています。

――これからの研究について伺います。今、研究現場で特に注目しているテーマや、力を入れている研究は何でしょうか?
植山 私たちは「ウェルエイジング」をミッションに掲げ、体と心を整える商品・サービスの展開を進めています。商品を通して届けたいのは、年齢とともに起こる心身の変化に寄り添いながら、「持続可能な身体基盤を整えること」です。
 単に不調に対応するのではなく、1人ひとりが「これをやりたい」と思った時に動ける状態を保ち、人生の選択肢を阻まないこと。その思想を実現する中核概念として、私たちは「巡り」を定義しています。自ら調整できるような、体に働きかけやすい状態へ導くことを意味しています。


――環境に配慮することも、今の化粧品開発では欠かせません。環境への負担を減らしながら、商品の効果や安全性を保つために、どのような工夫をしていますか?
植山 資材と成分の両面から取り組んでいます。資材面では、パッケージにFSC認証資材を採用しています。またBtoB輸送では品質を維持しながら無駄な緩衝材を削減しています。容器の軽量化はプラスチック使用量や二酸化炭素排出量の削減につながるため、詰め替え用パウチ商品の採用も積極的に進めています。
 成分面では、業界のトレンドでもあるアップサイクル原料を積極的に採用しています。本来廃棄されるはずだった不揃いの植物などを化粧品原料として生まれ変わらせる取り組みです。単に廃棄物を減らすだけではなく、ハリやコラーゲンへのアプローチなど新たな付加価値を与えながら、環境負荷低減と機能性の両立を目指しています。前提として、エビデンスがしっかりしていることや、メカニズムへのアプローチを重視しています。

――良い商品を継続して生み出すために、研究チームではどんな体制を整えていますか? また、若手の研究者を育てる上で、大切にしていることはありますか?
植山 今年の4月から会社全体の方針として、マーケティングプロセスに独自AIシステム「KAKUHEN(カクヘン)」を導入しています。これは、当社と外部の協力会社が一緒につくり上げた自社独自のシステムで、顧客の声やSNS情報など膨大なデータをインプットし、マーケティングのプロセスに組み込んでいます。目的の1つとして、商品企画のスピードを高め、ヒット商品の改善につなげることが挙げられます。個人の経験や属人性に頼るのではなく、再現性のある成長を実現する仕組みとして活用を始めています。データを積み重ねることで開発精度も高めています。研究員は10人ほどの組織ですが、ベテランでも若手でも、再現性のある高品質な製品作りができる体制を整えています。
海外勢も含め競争の激しい業界です。生き残りをかけ、適正に研究を行い、確かなエビデンスを持つメーカーであり続けたいと思います。

――ありがとうございました。

プロフィール
植山 和典(うえやまかずのり)
化粧品OEM・メーカーでの処方開発職を経て、2019年にキューサイ入社。商品企画開発部にて化粧品の商品開発に従事し、主にコラリッチブランドのオールインワンジェルを担当。「使うたびに肌が喜ぶ」商品の開発を目指し、使用感・効果感の両立を追求している。

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