化粧品開発の最前線と未来 【化粧品製造・開発最前線】エビデンスが切り拓く新時代
急速な変化を見せる化粧品業界において、製造・開発の最前線では今、何が起きているのか。市場データからアカデミアや企業の研究者によるリアルな声、サプライチェーンを支える主要各社の動向を網羅し、次世代のヒット商品を生み出すためのヒントを探る。サステナビリティへの対応や消費者のニーズが多様化する中、科学的根拠を軸にしたものづくりの変革が迫られている。
厳格化する発注、処方は高度化
㈱矢野経済研究所による国内化粧品受託製造市場の調査では、2025年度の市場規模(事業者売上高ベース)が前年度比103.6%となる3,675億円を記録した。期初はクライアントからの新規・リニューアル案件に向けた見込み発注によって活況を呈したものの、物価高騰が消費マインドに影響し、店頭での実売は想定を下回る厳しい局面が続いている。さらに、通信販売やEC市場の台頭、勢力を拡大する海外コスメの流入が追い打ちをかけ、販売チャネルと製品群の分散化に拍車がかかっている。こうした不透明な市況下で、メーカーや小売各社は過剰在庫の抱え込みを徹底的に回避するため、より厳格で慎重な発注コントロールへと舵を切った。その結果、まとまった大口発注ではなく、中小ロットを多頻度で発注する傾向が強まり、製造現場における数量ベースの稼働は総じて弱含みで推移。他方で、原料費や物流コスト、人件費の高騰という複合的なプレッシャーに対し、価格転嫁による自助努力も進められた結果、売上高ベースでの市場規模全体としてはかろうじて前年度を上回る着地となった。
㈱富士経済、コンシューマービジネス事業部、主任の鶴見静香氏は、近年はPDRN(ポリデオキシリボヌクレオチド)などの配合成分を前面に打ち出した商品が増加しており、差別化を図るため「いかに浸透するか」「どう肌の中で作用するか」といったことを訴求する動きが活発化しており、処方技術の訴求が活発化していると指摘する。例えばリポソーム技術は、スキンケアに加えてヘアケアなどにも広がりを見せている。また、ベースメイクでは粉体を保湿成分でコーティングする技術や、温度・湿度などの外的環境に応答するポリマー技術の搭載が進んでいる。さらに、AIを活用した処方開発や香りの構築も導入され始めており、開発のスピードと精度に大きな変革をもたらしている。AIを駆使した処方例の提示や感性の領域へのアプローチは、今後のヒット商品を生み出すための必須のプロセスになりつつある。これら最先端の技術は、製品の差別化だけでなく、消費者に確かな納得感を与える重要なファクトとしての役割を担っている。
(残り約3,500文字。全文の閲覧は「会員ページ」の「月刊誌閲覧」内『Wellness Monthly Report』2026年9月号(第99号))
【藤田勇一】

