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新型コロナワクチン訴訟の行方は? 18日、第3回弁論準備手続き開催へ~明治製菓ファルマVS原口議員

 Meiji Seikaファルマ㈱(東京都中央区、永里敏秋社長)は、衆議院議員・原口一博氏のSNSや出版物における発言により名誉を毀損されたとして、2024年12月25日、東京地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提起した。請求額は1,000万円。今年3月3日に第1回口頭弁論が行われた後、4月25日、6月12日に弁論準備手続きが行われ、7月18日に3回目の同手続調書が交わされる。

 この裁判は、「政治的言論と表現の自由の限界を問う訴訟」、「SNS発信と名誉毀損の関係性をめぐる現代的課題」、「ワクチン行政に対する信頼と社会的責任をめぐる争い」の3点において注視に値する裁判だ。これまでの裁判の流れを振り返る。

 Meiji Seikaファルマ(原告)によれば、訴えられた原口議員(被告)は、自身のX(旧Twitter)やYouTube配信などを通じて、同社が開発・販売する新型コロナウイルス感染症向け次世代mRNAワクチン「レプリコンワクチン」に関し、著しく誤った情報を発信し、同製品および同社の社会的評価を著しく低下させたと主張している。

裁判の争点「SNSと書籍における発言の名誉毀損性」

 問題とされた発言は、昨年9月10日の緊急配信「村上康文先生Meiji Seikaファルマ&厚労省直談判緊急オンライン報告!」をはじめ、同年9月11日のXアカウントで公開した「宜保美紀先生ら 高知有志医師の会の方々とミーティングLive」と題する配信投稿など、複数の動画、ならびに青林堂から刊行された書籍『プランデミック戦争 作られたパンデミック』に掲載された内容などである。

 原告は、これらのワクチン開発に関する一連の言及が同社の社会的評価を著しく貶めた、また、不特定多数からの迷惑電話が殺到し対応に多大な人的・経済的コストを要した。さらに、製品売上の未達成などを生じたことから、損害額が合計61億2,832万円に上ったとして、1,000万円の賠償を請求している。

原口議員の反論「対象は原告に限らず、政治的言論である」

 原口議員側は、3月3日の答弁(擬制陳述)で、原告の主張に対して全面的に争う姿勢を示した。原口氏は、自身の発言の多くが原告製品に限定されたものではなく、mRNAワクチン全般やその承認制度に向けた一般的批判であり、名誉毀損には当たらないと反論している。

 また、「731部隊」や「人体実験」などの表現についても、海外における懸念を紹介したものであり、特定企業を指して行ったものではないと主張した。さらに、同社製品の売上未達成は「計画未達であり実際に売上が減少したわけではない」とし、迷惑電話に関する企業側の受け止め方にも「迷惑電話と受け止める姿勢」そのものに問題があると述べた。
 原口議員はこれらの表現行為は感染症対策やワクチン承認制度に対する国会議員としての政治的言論に該当し、憲法で最大限に保障される表現の自由の範囲内にあると主張。公正な論評の法理に基づき違法性が阻却されるべきであるとした。

双方が主張応酬、訴訟は弁論準備段階へ

 3月3日に行われた口頭弁論後の手続きは弁論準備に移行し、4月25日には第1回準備手続がウェブ会議形式で実施された。
 この場で原告は、名誉毀損行為ごとの証拠整理を進めるとともに、意見論評であっても不法行為が成立する旨の主張を行う意向を示した。一方、被告も準備書面を通じて、発言は政治的言論として保護されるべきであり、表現行為は特定企業に向けたものではないとの立場を改めて主張した。

公共性と公益目的、論評の域をめぐる法的争点

 原口氏は、問題となった一連の発言がすべて政治的言論に該当し、表現の自由として最大限保護されるべきであると主張。これらの発言は、新型コロナウイルスワクチンの開発・承認・接種政策に関する制度的問題点を指摘したに過ぎず、感染症対策や薬事行政といった公共の関心事項に対する意見表明であると釈明している。

 また、国会議員としての「監視機能」の一環として、国の制度や行政のあり方に批判を加えることは民主主義の根幹を支える行為であり、たとえその批判が間接的に特定企業に波及したとしても、名誉毀損に当たるとすることには慎重であるべきとする。さらに、政治的言論には誇張や比喩といった修辞が含まれることが一般的であり、それ自体を理由に違法と判断すべきではないなどと述べている。

 加えて、「公正な論評の法理」の適用を主張している。すなわち、本件の表現行為はいずれも、公共の利害に関する事実を前提とし、公益目的の下になされた意見または論評であり、前提事実に真実性または真実と信じる相当の理由があり、かつ人身攻撃に及ぶなど論評の域を逸脱していない限り、違法性は阻却されるべきとしている。
 以上を踏まえ、原口氏は違法性阻却事由である「公正な論評の法理」の適用を求めた。この法理では、発言が①公共の利害に関する事実に係ること、②公益目的を有すること、③真実性または真実相当性があること、④論評の域を逸脱していないこと――という要件全てを満たしているとし、名誉毀損は成立しないとの見解を示している。

原告は批判の対象性と悪質性を強調

 これに対し、原告は6月12日の第2回弁論準備手続において、被告の発言が具体的に原告および原告製品を対象としており、「論評の域」を逸脱していると主張した。
 特に、「731部隊」との比較が原告の社会的評価に与える悪影響の重大性、および「利益相反」や「承認過程の不正」などの主張が原告の企業活動への直接的な中傷であることを強調した。また、厚労省の承認プロセスについても被告の批判に事実性がないと論じている。

 おおよその主張は以下のとおりである。
 「被告がSNS配信や書籍を通じて原告製品に関し虚偽の情報を発信し、原告の名誉を毀損したものである。被告の発言は、国会議員としての立場ゆえに信ぴょう性が高く受け止められ、特にSNS上では多くの国民に拡散され、原告の社会的評価を著しく低下させた。
 被告は、自身の発言が国会議員としての活動に基づくものであり、表現の自由によって広く保障されるべきであると主張しているが、憲法51条の免責特権は議会外での発言には適用されず、国民の権利を侵害する発言が免責されることはない。被告が国会議員という立場を利用し、特権的に批判を免れようとすることは許されない。

 また、被告の発言が公権力への批判であるとの主張も誤りであり、発言の対象はいずれも原告および原告製品である。これは一民間企業に対する執拗かつ悪質な中傷であり、政治的言論とは言えない。
加えて、被告の発言には「七三一部隊」への言及が含まれており、視聴者に極めて非人道的な人体実験を想起させ、原告の信頼を著しく損なうものである。また、「異常な事態」や「利益相反」といった表現も、原告製品の承認に不正があったかのように受け止められる構成となっており、安全性への疑念を助長している。
 しかし、薬事分科会の審議参加規程に基づき、寄付金等の受け取りがある委員は審議および議決に参加しておらず、原告製品の承認手続には中立性・公正性が確保されている。
 以上のとおり、被告の言論は私企業である原告の名誉を直接的に侵害するものであり、論評の域を逸脱している。被告の主張には理由がなく、名誉毀損が成立する」

第3回準備手続に向けた双方の対応

 次回第3回弁論準備手続の期日は、7月18日午前10時10分と指定された。
この日を前に裁判所は、原告Meiji Seikaファルマおよび原口議員に対し、それぞれ下記の手続準備を命じている。
 原告に対しては、6月23日までに以下の2点の提出が求められている。
 第1に、「主張対照表(請求原因)」のうち、「社会的評価の低下」欄で未記入となっている部分について、主張の要旨およびそれを裏付ける証拠を記載すること。
 第2に、同じ主張対照表に新たな記入欄を設け、当該表現が「意見論評」に該当する場合の主張の要旨を記載することである。

 一方、被告に対しては、7月14日までに主張対照表(請求原因)における各主張に対しての認否および反論の要旨、並びに裏付けとなる証拠を記入することが求められている。さらに、主張対照表(抗弁)の整理方法について、次回期日までに検討を進めることとされている。

【田代 宏】

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