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どこへ消えた?『茶のしずく』CM 卓球選手・早田ひな起用の“逆境”篇

 今年の3月上旬から中旬にかけて、日本女子卓球界のエース・早田ひな選手をキャラクターに起用した『茶のしずく』石鹸のテレビCMが流されたのを知る人はどれくらいいるだろうか?
 
 右の二の腕で汗を拭う早田選手、打ち込まれた球を打ち返せずに空振りする同選手。
 「失敗してきた。でも立ち止まってはいけない」と言う本人の声の後、「私たち悠香は、お客様の喜びと幸せを追求し続けます」というナレーションが流れる。エンディングには、早田選手と『茶のしずく』石鹸の開発者らしき女性が肩を並べ、未来へ向かって歩んでゆく後ろ姿のシーンが映し出される。

 この時、「アノ時」を知る視聴者の脳裏には、過去に悠香が引き起こした“失敗”と、早田選手の口にする“失敗”がオーバーラップする。CMキャラを務める早田選手の出身は悠香と同じ福岡。なおさらである。

 SNS上でも、「え早田ひなのアリナミン製薬ゆうか?のCM流れた初めて見たわ」(ママ)、「早田ひなちゃんがCMしてる」(同)などの書き込みが見られた。

 旧『茶のしずく』石鹸の使用によって、小麦アレルギーなど多くの健康被害を招いた事件は、2010年前後から社会問題化。20年になってようやく全面和解が成立している。そして22年11月、製造・販売元である悠香ホールディングス㈱(福岡県大野城市、中山慶一郎社長)は、アリナミン製薬㈱(東京都千代田区、森澤篤社長)の子会社となった。

 当時を知る者には、「失敗してきた。でも立ち止まってはいけない」という早田選手の言葉が、同選手の苦難よりも、悠香が歩んできた贖罪の長い道のりを想像させてしまう。実のところSNS上には当初、今ではすでに削除されているものの「また失敗を繰り返すのか」などの手厳しい書き込みもあった。一部の視聴者にはこのCMが悠香の居直りに移ったのだろう。

 他方、感嘆の声も聞かれた。かつて90年代に自虐的な広告を掲載し、称賛を浴びたのがスウェーデンのボルボ社だった。折しも環境問題が社会に浸透し始めた時代。「私たちの製品は、公害と、騒音と、廃棄物を生み出しています」というキャッチの全面広告を日本経済新聞紙上で展開し、第1回日経環境広告賞を受賞した。過去の過ちと向き合うアリナミン製薬の態度に、「見上げたものだ」との拍手も起きた。

 ところが、このCMも4月に入ると全く観ることができなくなった。突然、消えたのである。
 実はちょうどその頃、小林製薬㈱(大阪府中央区)による「紅麹サプリ」の回収問題が持ち上がった。3月22日のことである。ほとんど時を同じくしてフェードアウトしたCMに対し、同じヘルスケア産業で活動するアリナミン製薬が「CMを自粛したのではないか」との憶測が流れた。「健康被害」という共通キーワードに、アリナミン製薬が過敏に反応したせいではないか、というのである。
 そこで編集部が同社に確認したところ、同社はそのような事実を完全否定。当初から「スケジュールに沿った放映だった」と回答した。早田選手との契約は今も継続しており、タイミングを見て、今後も放映する可能性があると話している。また、『茶のしずく』石鹸の売上も順調に推移していると付け加えた。

 実際のところ、真相がどうだったのかこのコメントだけでは判断のしようがないが、早田選手のパリ五輪での活躍には大いに期待したいものだ。なお、テレビからは消えたが、上記CMは今も悠香のホームページで視聴することができる。

【谷山 勝利】

(冒頭の画像:悠香ホームページより)

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